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城ケ崎と森とアガ李

「私も“臆者”になりたい! その覚悟があります! 今は圧倒的に強いけれど……いつか、ボンさんのようなとんでもない弱さを身に着けたい!」

 ボンは、

「あのうククレアさん、そこまで強いのなら、その方がいいんじゃないですか?」

と言うが、

「ボンさん、慰めはよしてください! 私はあまりの天才的な強さで、いつもこういう目に遭ってきました。王宮の侍女ですら、時折私を馬鹿にするのでいたたまれなくなり、地下王宮を飛び出して、地上六十階のビルへ。けれど、そこでも私は人を助けまくり、たまに冒険者からの助っ人の依頼を受けて魔獣を倒しまくり、貯金が一億円もあるんですよ?」

「はあ……」

 

凄く立派なことだ。

「そんな自分を変えて、弱くなるためにここに来たんです。慰めはよしてください」

「何故、そんな変な志を……?」

「?ボンさんこそ、いつもおかしな事を言いますね。弱さを極めたボンさんにとっては、私のような強者の気持ちなど分からないでしょう……!」

「弱さを極めた……?」

 チャイコフは見かねて、

「さあさあ、みんな喧嘩はよして! さあ、二人は座りなさい」


 ククレアは、

「すいません、先生。取り乱しました」

と言い、城ケ崎の席の前に座った。

「ふうん、国王の娘の上に、最弱のボン君とも仲良しなのね? 王族って羨ましいわ」

 城ケ崎はとことんまでこの性格のようだ。

「いい加減にしなさい、城ケ崎さん! 折角の転入生なのよ?」

 チャイコフも少し怒っているようだ。


 しかし、城ケ崎も負けじと、

「先生、私も村の期待を一身に背負って“億者”となるためにこの学園に来たんです。私の村は、私を学園に入れるため貯金を500万円も背負ってしまった……さらに、成績が悪く見えるために、日焼けサロンで毎日こんがり焼き続けてきたのよ!? そこに、ただのコネだけのククレアさんが来られてもねえ。そのボン君のような、見るからにドジで弱くてだらしなさそうな人となら一緒にやっていけそうですケド」

 ボンは、

「酷い言われようだね。けれど、僕はどれだけ駄目でも、もっともっと頑張るからね」

と決意を口にした。

「僕は確かに駄目人間さ……借金は一千万円、しかも四十肩で腕も上がらないんだ」

「な、なんですって!? その若さで借金が一千万円で四十肩に?」

城ケ崎は驚愕している。

「木の剣も持ち上げれないよ」

城ケ崎は、鋭い眼を光らせ、肩をふるふると震わせている。

「あ、あり得ないわ! 四十肩で借金一千万円!? 面白い…! 噂でも『最弱で“臆者”に一番近い』と聞かされていただけはあるわ!」


「は……?」

 城ケ崎は颯爽と立ち上がり、ビシリと指を突きつけてきた。

「しかも、自分のことを『駄目人間で借金だらけ』とそこまで言うほどのダメ自信……! 流石に超小物は器が違うわね! ボンくん、あなたこそ私のライバルよ…! そのチンケなプライドをいずれ叩き壊してから、治してあげるわ!」


 周りの生徒も、

「スゲエ、あの転入生、『脆弱女王』とまで言われた城ケ崎からいきなりのライバル指名か!」

「城ケ崎に睨まれたら、逆にやる気が出てソイツは割と人生が前向きになるってことで有名なんだぜ? 別名『逆張りの優しさ』とまで言われる女……!」

「臆者を守る、“虚弱七柱候補”の一人と言われる城ケ崎が、すでにボンを認めている…?」

 生徒たちも、城ケ崎のことを認めているようだ。

「おい、スゲーなボン!」

 と髪を逆立てた少年から声をかけられる。

「俺は森」

と森は言い、その隣の眼鏡の少年は

「俺はアガ李」と名乗った。

 さっきから、ことあるごとにワイワイと騒いで盛り上げ役をやってくれてる子たちだ。

「うん、僕は平凡人…ボンと呼んでくれ。君たちの名前は?」

と問いかけたが、


「え? だから森とアガ李だって」

「苗字でしょ? 名前は?」

と聞くが、二人は「なんのことやら」と言った風体だ。

 この逆世界には苗字と名前が無いケースもあるのか。

「ボンよう、俺たちが盛り上がりまくるから、お前は“臆者”を狙ってくれよ」

と森。

「そうそう、実は俺らはそこそこ強くてさ。到底“臆者”になんて、なれそうもねえ。情けない話、俺は以前…三秒でナカナカを倒しちまって、後でエライ目にあったんだ……」

とアガ李。

「勝てたんならいいことじゃんか」


「おいおい、慰めはよせよ。あのナカナカに秒殺KOを食らうお前こそが“臆者”だ……けれど、城ケ崎には注意した方がいいぜ。あれもかなりの弱者、脆弱スキルも持ってるぜ」

 城ケ崎は小麦肌の美少女だが、眼光鋭くボンを射抜いている。

 チャイコフが、

「さあみんな! とはいえ、これからみんなは世界を滅ぼして叩き壊す、“臆者”になるんです! 風で木が揺れるだけでおびえて逃げ出し、全てを投げ出してしまう臆病者の弱者! そのための、実習にこれから“おとなりさんの山”まで向かいましょう!

そこには、実地訓練のための教官、キャワーさんという方が来てくれているそうです! みんなの力で、着ぐるみ魔王軍に負けましょう!」


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