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伏魔団地  作者: 真暗森
【第2号棟  亡骸纏う墓穴の風琴】

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99/101

第099号室 Milky☆Wave ≡♬≡モアトリッパーズ≡♬≡



 燃え盛る団地の小路に亀裂が走り、焼け落ちたマンションが倒壊して亀裂を広げる。枝分かれて亀裂が伸びて、底を見通せないほどの渓谷を団地に刻み、建物と瓦礫を呑み込むと、連なる電柱と繋がる電線を啜り上げていく。


 ナパーム弾で焼き尽くされたダゴンの灰を被り、昏倒していたビシュケの身体が九十九尾(つづらお)を丸めて小さくなりはじめ、密度を上げて硬くなり、ブリリアントカットの殺生石に変わると、アスファルトを割いて走って来た亀裂に呑まれ落ちていった。


『……今の屈折率的にダイヤモンド?』

『ええ……100万㌔カラットはあったわね………』


 パーツを全て開いて排熱するディーゼとキュリーは、時価一兆円の金剛殺生石になったビシュケを、ビルの上からばら撒かれた万札を拾う人間のような面持ちで追いかけると、亀裂の底が全く見渡せないことに気づいた。


『地下が空洞になってたのね』

『なるほど、なかなか酸欠にならないと思ったら、地面の隙間から空気が上がってきてたのか』


 焼け落ちる団地に合わせてアスファルトの渓谷も幅を広げていく。


『ダゴンは残らず灰になっちゃったわね』

『しょうがない……まだちっさいのが一本残ってるから、そっちを狙おうか』


『オッケー、ディーゼル。目的地までのルートを検索して?』

『\ポン/目的地マデノ、ルートを、検索、シマス』


⦅⦅笑www⦆⦆


『……何言わせるんだテメェ……!?』


 ノリツッコミするディーゼを無視して、キュリーは単眼のコックピットハッチを跳ねて開き、頭を下げてディーゼを乗せると空へ飛び立った。



ーーー



 焼けて松の木の皮のように焦げて固まった関節を、バリバリと鳴らしてガラシャが息を吹き返す。


 蒸し焼きで貼り付いた頭巾を引き剥がし、焼き目は無くとも真っ赤に爛れた顔で苦悶に喘ぐ。


『まだ、まだ、まだこれからでしょう???』


 煙を上げて焼きついた瓦礫に腰から下を潰された亡姫(プリン)が、懐剣(かいけん)を自らの腹に突き立て一文字に切り裂き下半身を別つ。


『まだ、まだ、まだゆっくりしていきなさいな!!!』


 炭化した皮膚を鎧のように纏い、節々から覗く肉から黄褐色の体液を滴らせガラシャが、腹から背まで掻っ捌き、脊椎もいで瓦礫に埋もれた半身捨て去り亡姫(プリン)が二人揃って ☆限界突破☆


 真っ黒に炭化し硬質化した表皮をきらめかせ、燻る木櫂(オール)で空を指して構えると、炭化した皮膚と肉の間から滲みだした体液が蒸発して圧を高めて逃げ場を求め、関節から噴き出しS・L(エスエル)Body(バディ)のソヒガラシヤが飛翔する。


『この身体!飛ぶゾッッッ!!!』

『……?………いや、ただのすごいジャンプじゃろ』


 身内の全く知らない能力に亡姫(プリン)も驚く。


『感有り、後方下、飛翔物体、何かしらディーゼ?』

『あ〜……ゾンビが空飛んでやがる』


 先の戦闘で余力を失っていたキュリーの主翼へ飛び着いたガラシャが木櫂(オール)を叩きつけて破壊する。


『三途の川は、飛んで渡れるほど狭くないのです!!』

『いった〜〜い!』


『邪魔すんなよな!?』


 錐揉み打って落ちるキュリーのコックピットから、ディーゼがガラシャに飛びかかり追撃を防ぐも、キュリーの姿勢制御が戻ることはなく、三体まとめて傾いたマンションに突っ込み瓦礫を撒き散らしながら団地の渓谷深くへ消えていった。


『『『きゃあああああぁぁぁ………!!!』』』


『ははっ、ガラシャも落ちおった!やっぱりただのジャンプじゃないか?』


 降り積もる灰を被り真っ黒に煤けた黒無垢の婚礼衣装を翻し、Harakiri(ハラキリ)Body(バディ)飛鼠逆ノ亡姫(プリンセスソヒィ)は、残った上半身だけでテケテケ這いずり、崩れ落ちる団地とアスファルトを伝って奈落に降っていく。


『はははっ……みんな揃って共倒れ。まあ、それでも死体は十分集まったわ……』

 

 滝を落とす水道管をくぐり、垂直に垂れる電話線を伝い、ねじれて曲がる地下鉄のレールを滑り下りる。


水底団地(ルルイエ)の崩壊、ダムの決壊、ダゴンの壊滅、三途の川の鉄砲水は地獄の蓋を流すに丁度よかったわ』


 水底団地(ルルイエ)のダムが流れた時、溢れ出した大量の水は地上から見えないところで、嵐の夜のように轟々と流れて下水道を削り、広大な地下空間を造り出していた。


『豪奢な墓石の石垣、艶めく白骨の白壁、見目麗しく並ぶ瓦は頭蓋骨(しゃれこうべ)


 薄皮一枚アスファルトを隔てた団地の地下に広がる空間からは、下水に洗われ甦った集合墓地から無数の人骨が溢れかえす。


『皮を鞣して御旗を掲げ、髪を織り成し反物(たん)を飾り、臼歯を磨いて玉砂利と庭に敷き詰める……』


 崩れ落ちる団地に反比例して暗闇の奥底から、頭蓋骨を積み上げたピラミッドが、肋骨を結えた巨大古墳が、大腿骨を束ねたの十字架が、脊椎を重ねた大聖堂が立ち上がる。


『それ、城が()()ぞ!』


 積み重なり押し固められた死肉は竜の姿を形取り、絡み合った髪と衣服が鱗を靡かせる。


 空洞化した骨の内部を風が通り抜け、パイプオルガンにも似た荘厳な音色が響き、死者住まう墓穴団地(カタコンベ)に亡骸纏う墓穴の風琴グレイヴバッグドラゴンが黄泉孵った。


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