第098号室 Tidal Wave =♡=リザレクションズ=♡=
団地の至る所から火の手が上がっている。ソヒィ達に襲撃されたマンションが燃え上がる。ホーリエの飛ばした送電塔が放電を続けて辺りを焦がす。ビシュケが手品で出したフェニックスが団地の空から火の粉を振り撒く。
そして今、もっとも熱く燃えているのが火事の最前線であり、戦いの最前線でもあった。
『絡まってる内に殺せーーーっ!!』『バラムツ陣形』
片腕を無くしたディーゼの指示で、キュリーが焼夷弾と化した生体ミサイルを縺れ合う触手と管狐の塊に撃ち込み両者の窒息を狙う。
『このタコめ、蘇ったのなら話は別じゃ!地獄巡り、ほら!一丁目!!焼炙の焔は骨の髄まで染みるだろうてぇえ!!……あ、骨なかったか?アッ!キャッキャッキャッキャッ(笑)!!!』
焼夷弾をモノともしないビシュケが狐特有の声の高い下卑た笑い声を上げ、管狐を束ねて一つの巨大な頭として頬を膨らませると細く炎を吹き出し、光線と化したプラズマがダゴンの触手を焼き飛ばした。
仮死状態から復活を果たすも既に瀕死状態で燃え盛るダゴンは、烏鳶でビシュケの肩口を圧し切り、ぐらついた首を触手で捻り上げて空を飛ぶキュリーの主翼を焦がす。
『きゃ!危なかった……!腐っても大地主……ほんとに腐ってるけど、最後まで油断ならないわね!?』
急旋回でマンション裏に回り込みビシュケの背後をとって生体ミサイルを放つ直前、マンションの陰から現れた餓者髑髏に両手で叩き落とされ、ミサイルがあらぬ方向に飛び去って行った。
『痛った~~い!何すんのよーー!』
『別にぃ?貰えるものは、貰える内に、貰っておこうと言っていたじゃないか?殺せそうだから、殺せるうちに、殺してしまおうというだけよ?』
答えたガラシャが木製のオールで戦闘機と竜を混ぜたようなキュリーの吸気口を削り、飛行能力を削いで食人鬼を喰い付かせる。
『鬱陶しい!鉄のサメ肌にゾンビの歯が通ると思っているのかしら?』
キュリーの言う通り食人鬼の力では纏わりついて飛ばせないようにするのがせいぜいであったが、ガラシャはそれ以上仕掛けようとせずにアスファルトやマンションの外壁を剥がしては、死体を掘り起こし食人鬼の召喚に努めた。
亡姫とガラシャの生み出す亡者の群れは見る間に溢れて落ち火に触れて燃え上がり、火の手と共に団地中へ広がっていく。
押し迫る亡姫と骸骨を腕一本で殴り倒しつつディーゼが状況を図る。
⦅吸血鬼共め!初めから相打ちを狙っていたな?手出ししないとか言っときながら普通に仕掛けて来た。バチバチに読めてはいたけど、やっぱムカつくな!⦆
⦅ダゴンは触手をほぼ焼かれて失い、残っているのは烏鳶を支える少しの肉だけ。生体素材としての価値はもうない⦆
⦅ビシュケも随分縮んだがも~~う手がつけられん、キュリーが先に仕掛けたからな、ダゴンを殺した後は私たちが狙われてもおかしくない⦆
⦅大体、こいつら火を耐えたとしても、キュリーのナパームで窒息しないのはなぜだ?生物である以上、必殺の理だろう??⦆
『何を考えておる?何を迷っておるのじゃ??からくり人形もやはり命は惜しいのかえ!』
亡姫の煤けていく白無垢の綿帽子に隠れた目元の下から、勝利を確信してやまない耳まで裂ける破顔の微笑みを見て、ディーゼは早期の決着を選択した。
『キュリー!今度は全力だ!!出し惜しみするな!!もう一度ナパームを撃てぇえええ!!!』
獣のような雄叫びを上げて間髪入れずキュリーがナパーム弾頭の生体ミサイルを乱射する。
弾頭が突き刺さりビシュケが動きを止める。ミサイルに穿たれダゴンの烏鳶が砕ける。撃ち込まれたマンションが爆発し瓦礫が降り注ぐ。
瞬時に気化した燃料が引火し空気を焦がして炎さえ焼き、一瞬で全域の酸素を消費すると、亡者たちは消し炭となり、亡姫が溶解した瓦礫の下に埋もれ、ガラシャは燃焼を伴わない灼熱波に全身の肉が焼けて張り裂ける。強烈な熱と乾燥でダゴンは干からびて、酸素を失いビシュケさえ昏倒する。
マグマのように溶けた団地の中で赤熱した機体から陽炎を揺らめかし、身を起こしたディーゼが素直な観測を行った。
『やったか??』
ーーー
直観ほど正しいものはない。何であれ、うまくいっていないと思う時ほど、考え通りになっていないと思う時ほど、希望的観測を口にするものである……
「「「「『やったか」」」」』
……なんて口走ってしまう時は大抵、やっていない、と思っている時である。
ーーー
燃え上がる公園の公衆便所では青白い蛍光灯の下、鏡の前でシンソヒアが自身の頭に釘を打っていた。
小夜達にマンションの屋上から流され、落下の衝撃で破裂した頭蓋骨をパズルのように組み合わせ釘で固定していく。
曲がった指に針金を巻き、折れた腕には掌から肘にかけて刀を突き通し、外れた肩へ鎖を貫通させて吊り上げる。肋骨の代りに形が似てるからとククリナイフや鎌を刺し、こぼれた内臓を有刺鉄線で縛り付け、砕けた脛を補強するレイピアの切っ先が踵からピンヒールの如く覗く。
刃物を身に纏い、身に重ね、身を貫いて ☆限界突破☆ 全身煌めく武器人間、KnivesBodyのシンソヒアは、ナイフを両手に鏡の前で笑顔を作ると、アイドルは愛嬌と口角をニッコリ切り上げた。
ーーー
燃え上がるマンションの一室、熱気に渦巻く炎が集まり、プラズムソヒィの影を形取っていく。
ロウソクの炎が消え入る寸前に最も強く輝くように、耐えがたい飢餓に霊体の身すら灼き焦がし、打ち震えて復讐に全てを捧げる最も醜き姿こそ、幽霊が最も美しく凶悪な時の姿である。
憔悴、憤怒燃えて渇き喘ぎ、飢えに苛まれ怨みに怨嗟積もらせて ☆限界突破☆ Paranormal Bodyのプラズムソヒィは、アイドルは愛嬌と絹を裂くよりも鋭くシャウトした。
ーーー
黒煙けぶるトレーニングルームでは、ベンチプレスに横たわったフランソヒィンが緊急手術を自らに施していた。
狂気を孕んだ団地最先端の死療医術が辺りの死体をドナーとし、身体の損傷個所を挿げ替えて骨を繋ぎ、筋肉を培養、皮膚を被せて縫い合わせ、血の一滴、細胞一片余すことなく取り込むと、元の身体とは似ても似つかぬ歪で醜く恵まれた肉体を造り上げる。
メリハリの無い寸胴の胴体、大きな枕のように短く太い腕、股下もあるかどうかの丸太状の足、そして胴体と代わらないほどに巨大な頭部となって ☆限界突破☆ ゆるキャラも肉体を持ったならクマさえ殺す生物になるであろう。二頭身のDynamiteBodyフランソヒィンは、アイドルは愛嬌と数百と並ぶ臼歯を見せて笑顔をつくった。
ーーー
夕日と火事に燃え上がる団地の路地の上、群れをなして集まったコウモリが、渦をなして人の形を形取りソヒィーリヤが舞い戻る。
肉体の欠損部分を補い少女体型になって熱気に浮かぶ。夜の帳をその身に浴びて自身が闇の血族であると、闇の魔力の使い手であると、闇に死せるヴァンパイアの始祖であると思い出す。
自信に満ち溢れた生意気な瞳、パックリと開いた背中からコウモリの羽を広げ、矢尻状の尻尾を伸ばして ☆限界突破☆ DemonBodyのソヒィーリヤは、アイドルは愛嬌と団地の地平線に沈む夕日に高貴な高笑いを投げた。
ーーー
『『『『まだまだ、夜はこれからでしょ??そ~~~~~れ!寝かさないわよ!!!!』』』』
団地のアイドルは永久に不滅である。いつだって、どこだって、なんどだってー♡ーRe:surrectionー♡ーモアトリッパーズのクール担当、ソヒィちゃんたちは燃え盛る団地の炎を反撃の狼煙と上げた。




