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努力が報われなくても意味はあると思いたい



「あ、」




「よ、よう」



 1人で王都を散策している途中で客があまり入っていない落ち着いた雰囲気のカフェを見つけた。



 そのまま店に入ると、先日モンスターに襲われていた冒険者の男性と目があった。



 僕もつい声を出してしまったから、向こうも気まずそうに返事をしてくれた。



「偶然ですね」



 彼はテーブル席に座っていたので、どうせなら彼とお話しをしてみたいと思った僕は向かいの席に座る。



「ご一緒してもいいですか?」



「あぁ、この前は助けてくれてありがとう。俺の名前はゼナルって言うんだ」



「いえ、僕は何もしてないので」



 謙遜とかじゃ無くて本当に何もしてない。ただ車の中からイデアルの活躍を見ていただけだ。



「ここのカフェにはよく来るんですか?」



「考え事をしたい時に来るんだ」



「確かに考え事をするのにピッタリなカフェですよね」



 僕は学生時代によく人の少ない14時ぐらいの時間帯にサイゼリアやプラ寿司なんかを食べに行っていた。

 大きい駅じゃ無かったり、駅から離れている場所は人が本当に少なくて僕しか客が居ない時もあった。



 そういう人が少ない場所は落ち着くことが出来て、考え事をするのにもうってつけだ。

 まぁ、僕のいきつけだったサイゼリアは大学を卒業して1年ぐらいで無くなったけど。



「あぁ、いいカフェだ。君は何でここに来たんだ」



「たまたま良さげな雰囲気のカフェを見つけたんで入ったんです」



 本当に彼と会ったのは偶然だ。



「そうか」



「冒険者ってどんな仕事なんですか?」



 ふと気になって聞いてみた。

 冒険者と言えばファンタジー小説の定番だし。




「どんなって、魔物を狩って日銭を稼ぐ仕事だよ」



 そのままのイメージだ。



「好きな時間に働けて、何にも縛られない自由な職業ってイメージもあるんですけど、実際はどうなんですか?」



「そんな見方をしてるのか。それは有名で実力のあるソロ冒険者だけじゃないかな」



「そうなんですね」



「実際に俺はパーティーのリーダーからターゲットにされて嫌がらせみたいな事をされていたし、仕事に行く時間帯もリーダーが決めていたから自由は無かった」



 それを聞くと想像以上に自由が無いな。



「だから毎日のように今日こそ辞めようと思っていた。とはいえ、ソロだと倒せる敵の難易度は下がるし危険も増えるから収入が落ちる。ましてや、冒険者なんていつ廃業になるか分からないから若いうちに稼ぎたいしな」



 でも、彼も言っていた通り強ければだいぶ自由に活動出来そうだな。



「だからパーティーに残っていたのもあるが、俺以外は全員死んだからな」



 そんなこと言われても気まずくてどう返事すればいいのか分からない。



「ま、ぶっちゃけ1人を除いて皆んな死ねと思ってたからいいんだ」



「ははは……」



 だから反応に困るから!



「とはいえ、ソロでやるのも楽ではいいとは思うけどリスクが高いからな」



「低ランクの魔物ってやっぱり稼げないんですか」



 弱い魔物を狩るだけで生活出来るなら危険度は下がる気もするけど。



「あぁ、たいした収入にはならないな。それに王都は物価が高いし」



 王都って物価が高かったんだ。世知辛い話しだな。



「ただ、田舎よりも王都の方が色々と便利なんだ」



「そうなんですか?」



「あぁ、俺は田舎の出身だから分かるんだ。働ける場所も王都の方が多いし、売ってる商品の数も違う。何より騎士団もいるし城壁もあるから田舎で暮らすよりも安全だ」



 確かに田舎の集落の方が守りが薄そうなイメージはある。

 その点、王都の中に居れば魔物にも襲われないし安心だろう。



 王都に住めば安全に暮らせるって発想は無かったけど、良く考えればそうだよね。



「確かに王都の方が住みやすそうですね」



「まぁ、田舎には田舎の良さもあるんだけどな。一度でも王都に慣れちまうと戻る気にはならないんだ」



 僕も大学の友達で故郷に帰らず東京でずっと暮らしている人がいる。

 そいつも東京の方が仕事があるって言っていたのを思い出した。



「そうなんですね。じゃあ、新しいパーティーを探すんですか?」



「考え中だ。パーティーって言っても簡単に見つかるもんじゃ無いし、冒険者に未練があるわけでも無いから転職してもいいし」



 パーティーを今から新しく作ると言っても難しいよね、誰でもいいわけではないし。



「未練は無いんですか?」



「あぁ、昔は冒険者の英雄譚に憧れていたけど身の程を知ったからな。魔法学校で遊ぶ事もせずに勉強をして、俺は他の奴らが遊んでる間に努力して成り上がるとか思ってたわ」



「もっと遊べば良かったって後悔してますか?」



「いや、してない」



 考える間も無く彼が即答をしてくれて良かったと思う。

 自分が努力した事を後悔してるなんて後味が悪いし。



「ちゃんと努力したと思っているからこそ割り切れる部分もあったから。まぁ、彼女が欲しかったとかは思うけどね」



「彼女ですか?」



「君ほどの美人じゃ無くてもいいから、いい加減に恋人が欲しい」



「もしかして口説いてます? ごめんなさい、これでも一応人妻なんでその気持ちには答えられないです」



「口説いてないわ! おい、そんな怖い事を言うなよ!」



 なんか想像以上にガチトーンで突っ込まれた。



「冗談ですよ」



「冗談でも止めろよ。あの男に聞かれたら怖いわ」



 あぁ、イデアルに聞かれたらと思う確かに怖いだろうな。

 彼はイデアルの強さを目の前で見てるから。

 


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