やっぱりカブトムシはカッコいい
「し、死にたくねぇ!!」
俺の目の前でパーティーのリーダーだった男が魔物に体を真っ二つにされて死んだ。
死んだ人間にこんな事を言うのは不謹慎かも知れないが……
ザマァみろバカ!!
死ね! 死ね!
クソ野郎の惨めな泣き顔と死に様は俺の心を少しだけ晴らす。
俺をターゲットにして罵詈雑言を飛ばしてきたり、仕事だけじゃなくプライベートでも雑用や面倒な役割をやらせてきた男。
何で俺がお前のマネージャーみたいな事をしなくちゃいけないんだよ!
しかも、人に予定があるから起こせとか言うくせに起きないし。
起こそうとすると寝起きが悪いからキレるし、起こさなくてもキレる。
マジで死ねバカ!
いや、さっき死んだわ。
あれだけ俺にクズとか給料泥棒だなんだ言ってきた男。
心の中でいつか殺したやると思っていた男が死んでスッキリしたが、このままだと俺もあの魔物に殺されるだろう。
よりにもよって何でこんなところにS Sランクの魔物がいるんだよ!
あのクソ野郎だってBランクの冒険者で腕っ節はそこそこあるはずなのに手も足も出ずに殺された。
奴は俺を次のターゲットに決めたのか、こちらに向かってくる。
几帳面な槍使いリックもお調子者の斥候リカルドも魔物に殺された。
そして、ついに俺の番が来たわけだ。
「はぁ、俺の人生何だったんだろう」
魔法学校に通って真剣に授業を受けて、そこそこの成績で卒業する事が出来た。
卒業後に良さげなパーティーを見つけたと思って入ったのが今のパーティーだ。
結果はクズなリーダーが俺様してるクソみたいなパーティだった。
リックは自分に被害がこなければ何でもいいというタイプでリカルドはクソ野郎に便乗して俺をバカにする長いものに巻かれるタイプだ。
だからプライベートでの付き合いはほとんど無いし、死んだからと言ってどうでもいい。
いや、リカルドは死んでざまぁって感じだけど。
「どうせなら最後にラーメン食いたかったな、あと餃子とチャーハンも」
もう抵抗する気力も起きない。
武器を下ろした俺は無抵抗だ。
「て、そんなわけあるか! 俺だってまだ死にたくないし生きたいわ!!」
なに諦めてんだ俺!
まだ彼女を作った事も無いのに死ねるか!
俺は武器を握りしめて前を向く。
「この一振りに全てをかける!」
そう意気込んで覚悟を決めた瞬間に魔物は何かに吹っ飛ばされた。
さっきまで魔物がいた場所にはイケメンがスマートに立っている。
そして俺よりもでかい動く物体がこちらに向かってやってくる。
そして中からは今までの人生で見たことがないような美少女が出てきてイケメンに微笑んでいる。
あぁ、あの男は勝ち組なんだなって無意識に感じていた。
SSランクの魔物をワンパンして、傍にはとんでもない美少女。
街中で美男美女のカップルを見たら、恋人なんていらないと思いながらも嫉妬と憧れが入り混じったような気持ちにもなる時があるが、レベルが違いすぎてそんな気持ちにもならない。
あのイケメン見ていたら、あの程度で威張っていたウチのクソリーダーが哀れで笑える。
ウチのリーダーも最初は冒険者の頂きを目指していたが、夢破れ絶望した結果クソ野郎になったと酒場で知らないおっさんに聞いた事がある。
死んだからも知れないが、そのエピソードと本物の勝ち組を見たら哀れでクソ野郎の事を許せるような気がしてきた。
・・・
僕の話しを聞いてイデアルが魔物を倒しに行ってくれた。
魔物は5メートルぐらいのカブトムシみたいな見た目で少しカッコいい。
そんな魔物もイデアルに蹴られて吹き飛ばされて行った。
あんな巨大カブトムシをいとも簡単に倒すなんて流石だ。
あたりを見渡すとこちらを見ている男性と目が合った。
「あの、助けて頂きありがとうございます。おかげで命拾いしました」
少し緊張した様子で僕たちの方にやって来てお礼を言う男性。
「別に気にしなくてもいい」
素気なく返事をするイデアル。
「そ、そうですか」
そんなイデアルに少し萎縮する男性。
「じゃあ行こうかカエデ」
「あ、うん」
何か言いたそうな雰囲気の男性にペコリとお辞儀をして車の中に戻る。
それから15分で次の街に到着した。ここがこの国の王都らしい。




