許昌攻略戦⑩
10ターン目。再び場所は変わり、放浪軍本隊VSソウソウ軍本隊の戦場。
秋渓と夏侯淵の戦線離脱後、一塊となった怜華・魏延・陳宮隊は、ソウソウ・キョチョ・チンタイの包囲攻撃に曝されていた。
「……先に抜けた夏侯淵の動きが気になるが、向こうには奉孝(曹軍参謀・カクカの字)が居ればシバイも居る。戦線が多少乱れても、崩壊するおそれはあるまい。それよりは敵の本隊を撃滅する事が先だ。
――キョチョに伝えよ。「決着の時を急ぐ故、守りの陣を解いて攻めに全力を振れ。我が隊もそれに続いて全兵を繰り出す」。また、チンタイには引き続き隙を狙わせ、敵の撹乱に全力を注がせるのだ」
早期決着を望んだソウソウは、自らを含めた三部隊に総攻撃号令を下した。
こうなると、怜華に代わって矢面に立つ魏延・陳宮隊は堪ったものではない。
そう、堪らないのだ。出生と同時に2mの高さから叩き落とされるキリンの赤ん坊みたいに。
母キリン「あっ、産まれる。そろそろ産まれ――フゥゥゥゥンッッ (*`Д´)!!!」
子キリン「おぎ――ギャアアァァッ Σ(゜Д゜)!?」ドスン!!!
※キリンは立ったまま出産するので、キリンの赤ちゃんは2m近い高さから産み落とされる。比喩とか例えではなく、言葉通り“産み落とされる”。
よく死なないな……と思うでしょうが、キリンの赤ちゃんは1.7~2mほどの身長をもっており、成人男性に勝るとも劣らない体躯がしなる事で衝撃を緩和させているのだとか。
それでも一番最初の感覚が「落下」と「衝撃」とかマジで勘弁な。ついでに2つ繋げて発音が似ているからって「落花狼藉」も勘弁な。
「あぁっ!? 熱い! 熱いぃ!? むさ苦しいですわっ!! ちょっとあなた! 唾を飛ばさないでくださいまし! さっさと帰宅するんですわよ!! オホホホホホ!!」
要は何が言いたいかと言えば、最前列で戦う魏延の許にソウソウ軍の兵士(中年男性)が群がっている事で、自棄くそになった魏延の言葉使いが貴婦人みたいになったという事。
だから落花狼藉は勘弁だって……え、魏延は女ではないから大丈夫だって? これは失敬!! でも激しい戦闘を続けているせいで衣服が乱れ、ちょっと危険な感じを醸し出しているのでやっぱ勘弁。
「ふぅ……ふぅ……やれやれ、けっこう押されてきましたなぁ……」
「……あら……こんにちはですわね、陳宮殿。いつの間にこんな所まで」
曲刀を構える魏延と、軍配を握り締める陳宮が背中を合わせた。
夏侯淵離脱によってキョチョとタイタンを張る事になった魏延は、曹軍を代表する高武力に終始押され気味となり、ソウソウの見事な用兵を前にした陳宮はじり貧状態。
それに加えて、苦境にある二人の隙をチンタイが虎視眈々と狙っている。
「怜華殿の《治癒》のおかげで、私共は粘り強く耐えられるものの…………この容赦のない攻勢は、いささか “最期の戦” を思い起こさせますなぁ……」
「ふふふっ……下邳の戦い、ですわね」
「左様でございます。あの時はリョフ殿が我等を軽んじるばかりに、裏切りが発生して内より敗れましたが……今は違います。陳めを信じてくれる頭領がおり、私共の後ろには “守るべきもの” もあり、背を合わせる貴殿も…………」
「……私も……どうしました?」
「そう言えば魏延殿も、リョフ殿に負けず劣らず謀反ばかり起こしてましたね」
「……いけずなこと言うもんじゃありませんわ! そこは綺麗に――」
不意に言われた黒歴史。魏延は眉根を寄せて振り返り、陳宮の前に出ようとする。
陳宮もそれに合わせて、魏延と背を合わせ続けた。
「信頼できる仲間がいる!!」
「でよいですなぁ!!」
そして二人して立ち位置を交代するや、魏延は曲刀を一閃して陳宮に迫る敵兵を薙ぎ払り、陳宮は軍配を振るって部下達をキョチョに突進させる。
不意を突かれたキョチョとソウソウ隊の兵士達は、予期せぬ連携攻撃によって弾かれた。
「最後の抵抗か! おのれ、小賢しい真似を!」
圧倒的武力で陳宮兵を吹き飛ばしたキョチョが、さも忌々しげに吠える。
片や、再びキョチョと対峙した魏延は不敵に笑う。
その笑みの一端には、確かな希望を見据えた愉快さが同居していた。
「ふふ……最後? これしきで最後ですって? 甘い、実に甘いですわ。やはり貴方は虎痴なのね」
「負け惜しみをほざくな! 貴様らは、今ここで敗れるのだ!」
「……敵の誰も彼もが惑わされる。当たり前ですわ。あれほど破天荒な常識破りを、貴方達は他に知らないのでしょうから」
「……なにぃ……?」
「試しにほら、貴方達の後ろを見てご覧なさい。手は止めてあげますから」
言われて従うは癪だが、キョチョは魏延を睨みつつ、己の背後を一瞥した。
「……なっ!? 何だとぉ……!」
そして、彼は目を見開いて呆然とした。
劣るとは言え、蜀を代表する一級の猛将・魏延。それを目前にしていながら、無様にも隙だらけな状態で静止したのだ。
ではなぜ、キョチョともあろう豪傑が、そこまで驚愕したのか。
答えは正に、彼の目線先にあった。放浪軍本隊を攻囲する曹軍の輪の外側にして、全力で攻めに転じているソウソウとキョチョの背後に――
「へっへへへぇ……! なんとか間に合ったみたいだぜェェ!!」
「……あれなるは敵の総大将・ソウソウだな。本来は砦にありし者がここに居るとは……フッ! 完璧な状況ではないか……!」
「どうやら第一の親衛隊長・キョチョとも離れている様子。父上! 千載一遇の好機ですぞ!」
「おおぉーーぅ息子よぉぉ!! 派手にやったろーではないかぁぁ!!」
「ファーング! ファァーーングッ!!」
最前線から反転した俺達が、《強行移動》をもって現れたのだ!!
※強行移動……通常移動範囲を超えた移動の事。機動力としては通常の1.5倍だが、実行部隊の士気が若干低下し、脱落者による兵数減少も発生する。
ただし、戦術の《速攻》を採用した場合は、通常移動範囲が強行移動範囲まで広がり、強行移動という選択肢がなくなる。脱落者による兵数減少も発生しない。
また、《速攻》の上位戦術に当たる《疾風》の場合は、上述の移動範囲が更に広がり、通常移動の二倍もの機動力を得られる。
「戦屋の殿路、それに御仲間衆! ここに見参!! さぁてソウソウ軍よ……俺達と目を合わせた、それこそが最期だと思い知らせてやる!!」
そして放浪軍頭領の俺が、全軍の先頭にあって威風堂々たる仁王立ちを見せると同時、今戦にあっては “戦う者” ではなく、“導く者”として、全軍に号令を下す。
「夏侯淵と朱桓は、魏延と共にキョチョを挟撃だ!! 甘寧・凌操・凌統はソウソウに突っ込め!! 怜華も出撃してソウソウに突撃!! 陳宮はチンタイを阻んでくれ!!
――放浪軍! いざ、遂行ォォォーー!!」
「「「ウオオォォォォーーー!!!」」」
決着の時、来たれり。俺は俺の存在を証明するかの様に、仲間達の全力に頼った。
次ィカァァァイ!!
『ブルゥアァァァ!! 牛乳だと思ってイッキ飲みしたら、青汁だったァァ!! 俺の三年間分の記憶を返せェェーーイ!!』




