ゲームの中へ戻れェェイ!!
逞しき男達が土地を巡ってハッテンハッテン!! し、生足軍師が豪雨につられて現れたネッシーに気を取られている頃(多分こんな状況の筈)。
幻想世界に居る俺は、俺と許劭によって生み出された都市で絶品中華を食べていた。
「ほぉ~ら許劭。杏仁豆腐に蜂蜜かけてみぃ? うんまいぞぉ~」
「甘々じゃい。やっぱり儂は小籠包に辛子醤油じゃい」
運ばれた杏仁豆腐に蜂蜜をかける俺に対し、許劭も負けじと小籠包に辛子醤油をたっぷりとかける。
せいろの内部が満たされて表面張力が発揮される程にたっぷりとかける。
「っていうか小籠包見えなくなったし。スープじゃん、これ」
「違うわい! 辛子醤油じゃい!」
「え? 小籠包ちゃうの?」
「あっ、本当じゃ。これ小籠包じゃったわ」
「どうすんねん。ちゃんと食べれるんか、それ? 殿路家々訓その3にもあるように、食べ物を粗末にする輩は許さんぞ」
「安心せい! 儂は自分で注文した食べ物は何が何でも食べる男! これしきの事、わけないわぃ!」
「よくぞ言った! それでこそ漢だ! それでこそゲッターンの許劭だ!」
「因みに、その家訓ってどんな内容なんじゃ?」
「殿路家々訓その3! 『食べ物を粗末にする事なかれ! 食べ物を裏切りし者は、いずれ食べ物に裏切られると心得よ!! っていうか目前にありし殿路家の人間が、尻にコンプレッサーぶっ挿して内部から腹を破裂させる刑に処すから』…………だ!!」
「おぉ、怖いのぉ怖いのぉ。…………うむ、辛子醤油旨いのぉ!!」
許劭は辛子醤油に満たされたせいろを持ち上げるや、何の躊躇いもなしにイッキ飲み。
その上で小籠包はちゃんと噛み締めながら食べる。なんと恐ろしいプロ技であろうか。
「ふぅーー。……まっ、そんな脅し文句なんぞなくとも、儂にかかれば朝飯前の別腹御膳じゃ。それに尻へ挿入するコンプレッサーなんてここにはないじゃろうし……」
「え? 出せるよ?」
爪楊枝でシーシーする許劭が、はぁ(ーдー)? みたいな表情を浮かべるのも束の間。
俺は左手を挙げて特大コンプレッサーをドガン!! と召喚する。
全長140cm・全幅70cm・全高80cm。機体には『拷問用コンプレッサー・尻!! 使用後は綺麗に清掃する事』という紙も貼ってある。
「想像した物よりデカ!? ……じゃのうて! コレはコンプレッサーいうよりディーゼルエンジンじゃ!! こんなもんケツにぶっ挿したら局部破裂どころか全身爆発するわい!!」
「なぬ!? コレ、エジソンの一種か!? 電子機械科じゃねぇから分かんなかったわ!」
「エンジンな。エジソンと似てるけど全く違うからの」
殿「……エンゾン?」
許「エンジン」
殿「エンジソ」
許「エジソ……じゃのうてエンジン(アカン、早くもゲシュタルト崩壊しそうじゃ)」
殿「…………エゾ」
許「シカ」
殿&許「肉!!」グッ!!
意志疎通した俺と許劭は、熱々の拳を交わした。
さて、食事も充分楽しんだところで、そろそろ本題に入るとしよう。
「御馳走様でした。…………よし、それではこの新世界からおいとまするか。……許劭、ゲームの中へ戻りたいのだが、お願いできるか?」
「…………それも良いが、一つ。儂の提案を聞いてみてくれんか?」
「提案? なんだそれ。ゲーム内での仕様変更とかか? 例えば魔法カード「死者蘇生」で楽屋裏の武将を召喚できるとか、新武将登録で許劭を作成して一緒に戦うとか?」
「うぅ~む、合ってる様でいて合っていないんじゃが……。まぁ要は…………ゲームクリアした後の話だが、お主ら二人とも、我等の仲間になる気はないか?」
言葉の途中……強いて言えば長い瞬きと共に、突然雰囲気を変えた許劭。
得も言えぬ真剣さが全身からビシビシと感じられ、妙な鋭さも放っていた。
先程まで遊戯していた許劭擬きとは、明らかに別人である。
「…………爺さん。ホント何者だよ」
だが俺が問い詰めると、許劭は再び許劭擬きの言動に戻って見せる。
「ふふふ……儂らの友達として勧誘しようかなと思っての。さっき言ったじゃろ? 「人の子に留めておくには惜しい存在よ」……と」
※さっき=第73話「チャーージィゴー!! キチガイとはナイスガイ」参照
「あぁ……確かに言ってたねそんな事。何ヵ月も前の話だから忘れてたわ」
「えっ? この店に入る前じゃぞ? 言ったの」
「いや、読者の目線で言えば何ヵ月も前の話だよ。だって戦争始まる前だし」
「…………いきなりのメタ発言じゃのう。メタルス○イム並にメタいわぃ」
「いきなりシリアス路線に突っ込んだお前に言われたくないさ。……それにな許劭。メタル種ってのはな、倒しにくいけど大量の経験値を持つレアモンスターだから存在価値があり、だからこそ続編での再登場も伝統になってるんだよ」
「……まぁ、そうじゃろうな。あの瞬速の逃亡劇も愛嬌と見られるぐらいじゃし」
「でもな許劭。硬いだけで倒しても何の旨味もない癖に倒さないと先に進めないメタル雑魚ってのは……ユーザーへの嫌がらせって言うんだよ。だいたい何だよ……200回攻撃してやっと倒せる雑魚って。その耐久性を平然と誇る時点でアイツは雑魚じゃねぇよ。取り敢えず土曜日に出てくるメタルコ○ルト死ね」
「……お主こそ何の話をしとるんじゃい。儂はソシャゲには詳しくないんじゃぞ?」
「大丈夫だ許劭。既に過疎ってるゲームの話だから殆どの人が詳しくは知らない筈さ」
(……いやだから何の話じゃい。さっきまで読者目線で見ればとか何とか言っておったのに……もう追い付けん話題に切り替えよったぞこやつ)
「…………あぁ……ホント、キャラクターや素材は最高なのになぁ……」
ホント、なんであんな改悪をしたのかなぁ。
ただでさえ減ってたユーザーが更に更に減って、サービス終了まで噂されてきてるし。
「そんでまぁ、話を戻そうか。
……爺さん、最初会った時に“関わる者”とか言ってたけど、察するところ神の一種みたいなもんだろ? だとしたら悪いけど、何ヵ月か前にも言った通り……神仏の存在に示す興味と、近づかんとする熱意は別もんなんだわ」
「ふっふっふっ……! 「何ヵ月か前」……か。儂からすれば、さっきと変わらぬのだがな。
――まぁよいわ。お主が興味ないならしょうがないしょうがない。少々惜しい気もするが、あたら変えるわけにもいかんし。……別の世界で、別の奴を勧誘するかのぉ」
「だから急にシリアス路線突っ込むなって。シリアスブレーカーか爺ちゃん」
「ふふふ、どうじゃぁ? 影のある男はカッコいいじゃろぉ。見ませい、このむっちりラリアットを!! これで儂もプレイアブル化間違いなしじゃ!! 前キャラを凌ぐ火力インフレで女子高生をキャーキャー言わせてやるわぃ!! ついでに無駄なイケメンになって既存ユーザーも引退させてやるわぃ!!」
「ヤメロォォーーー!! このエロ爺、ぜってぇー知ってんだろ!!」
果てしない周回回数でアクティブ稼ぎしなくとも、面白ければ必然的にやる。イベントを重ねるごとにインフレさせなくても、キャラに魅力があれば飽きはしない。露骨な課金誘導しなくとも、無駄に露出・豊満・イケメン化しなくとも、キャラ愛があればガチャを引くし課金もする。運営への信頼があれば、改悪があっても引退者は抑えられるし復帰も望まれる。強いてはそれが、利益へと繋がるのだと思う。
だが、俺の自論なんてまるでお構いなしな許劭は、秒を追って輝かしい肉体をインフレさせる。
「腹筋はいつの時代も6つが当たり前じゃと? ……否! 初期の筋肉キャラの腹筋が6つに割れているならば、後に出る筋肉キャラの腹筋は火力的に見て7つが道理!! もしくはインフレを前提とした場合、初期キャラの腹筋は控えめに見て1割れとすべきなんじゃ!!」
「火力を基準に腹筋を割るなよ! 気持ち悪いわ!! それならなにか!? 腹筋7割れキャラの後に出たブッ壊れ美少女キャラは、一肌脱げばヨルム○ガンドのバルメさん並の腹筋でも持ってるってか!?」
バルメとは
本名:ソフィア・ヴェルマー。もの凄い巨乳と腹筋を持つフィンランド人女性。
過去の戦傷で右目を失っており、平時・戦闘時を問わず医療用眼帯を装着している。
隻眼という不利を感じさせぬ圧倒的戦闘力を誇るメスゴリラ……にして百合属性。
知らない人は調べてね。ヨルム○ガンド面白いから。
「それが宿命と言うものじゃ!! ふぅぅんむぅ……キエェェェーーー!!!」
「ぐおぉっ!? なんて輝かしさだ!? 呑みこまれ……うおおぉぉっ!?」
意に介さぬ許劭は全身を輝かせ、生暖かい光で俺を包んだ。なんだかとても、酸っぱい匂いがしたんだなこれが……。




