許昌攻略戦②
5ターン目の天候は雨だった。
そしてターンの始めに、陳留を出発したソウソウ軍の援軍4部隊(総兵数27,600)が到着する。
指揮官は名軍師・シバイ。かのショカツリョウと渡りあった稀代の謀将であり、三国を征した晋帝国の太祖とも言える人物だ。
彼は様々な作品で味のあるキャラにされており、某アクションゲームでは「フハハハハハッ!! 馬鹿め!!」という高笑いや、「凡愚めが!!」という激昂ぶりを見せる。
代表的な三国志漫画に於いては「待て、あわてるな。これは孔明の罠だ」が有名。これはショカツリョウとの戦いで血気に逸る諸将を諫めた際に出た言葉だが、結局はチョウコウを始めとする将軍達に押し切られて開戦し、敗北する。
因みに上記の台詞、LINEのスタンプになってたりする。曹操「げぇっ」、諸葛亮「だまらっしゃい」、馬超「むむむ」、郭図?「ウム!」、蜀の巫女「ヒィィ」とかもある。お手頃価格のオススメスタンプ。ただし用法を間違えるとかなりウザいと思うので注意。
話を戻して、ソウソウ軍の援軍が戦場に到着したと同時、姫崎放浪軍の第二陣も前線に姿を現した。
第二陣の主将は太史慈、副将は丁奉。兵数は計1万。
彼等は先に交戦した第一陣の、特に凌操を救援すべく、チンタイ隊を標的に据えた。
「チンタイ様! 敵の第二陣が現れました! その数一万! どうなされますか!?」
「…………カクカ様が態勢を立て直す時間は充分稼いだ。ならば我等も速やかに引くのみ。主力兵が削られぬ様、最大の注意を払え」
「ははっ! ……全騎兵に告ぐ!! 迅速に反転し、砦まで後退するぞ!!」
対するチンタイは凌操隊へ与えるダメージも程ほどにして、早々の後退を見せる。
その引きあげ方もまた見事なものであり、チンタイ自らの指揮がなくとも、側近達の指示だけで事足りていた。
(決着の刻はまだまだ先だ。殿路放浪軍よ、その時まで十二分に苦しんでおけ)
去り際に第二陣部隊を一瞥するチンタイからは、限りない余裕が感じられた。
敢えて言えば、カッコ付けていた。漫画的擬音で表現するなら「ゴゴゴゴ……!」だろうか。はたまた「ウホホホ」かもしれない。いや、チンタイなら「チン◯ン!」という選択肢も捨てがたい。
「決着の時は、まだこれからだ(ФωФ)(ドヤァ)」チンチン!
…………うむ、中々と良い効果音ではないだろうか。200円で購入した「ウム!」のスタンプを貼っておこう。「ウム!」チンチン!
閑話休題。丁奉の沈静によって落ち着いた凌操隊は態勢を立て直し、進軍を再開。
その一方で、前線にも動きがあった。
先のターンで甘寧・凌統隊の猛襲に曝されたテンイ隊が、甘寧隊に止めを刺されて壊滅。手の空いた凌統は朱桓と連携して敵軍師カクカを狙ったものの、カクカは素早い転進を行って攻撃をかわし、山を明け渡す形で一時的に戦線を離脱した。
「んだぁ? 敵さん、えらくあっさりと引きやがったじゃねぇか」
「俺達の勢いに気圧されたのでしょう! まずまずの戦果かと!」
「……甘寧殿、凌統殿。努々油断めされるな。敵がこうも簡単に引くには、きっと裏がある」
「おぅ、朱桓もそう思うか? 実は俺もだ。この感じ……何だか釈然としねぇ」
純粋に喜ぶ凌統と違い、甘寧と朱桓は怪訝な表情を浮かべた。
度重なる戦で疲弊しているとは言え、あのソウソウ軍にしては余りにも拍子抜けする強さに感じたのだ。
「……まっ、取り敢えずは足場の確保に成功した訳だな。ここを拠点にして後続部隊と合流後、南西に進んで前線砦を攻げ――」
「!? 甘寧殿、朱桓殿! あそこを見てください!」
急に驚愕の声を上げた凌統に応え、甘寧と朱桓は示された場所に視線を向ける。
そこは先ほどカクカ隊が消えていった麓の森であったが……
「出るぞお前達!! 土地を持たぬ痩せ犬どもに、我等の威を示してやれ!!」
なんと、カコウトン率いる軽装騎兵隊4,600が、カクカ隊と入れ替わるように出現。
しかもそれだけではない。まるで図ったかの様なタイミングで、カコウトンの左右にチョウコウ隊2,300とジョコウ隊2,300が展開。南側の麓を押さえる形で布陣した。
尚、チョウコウとジョコウの兵種は重装槍兵だ。
「へっへへ……魏国大将軍の左右に五虎将が二人。
――ハッ!! 相手にとって不足ねぇ!! やっぱ戦はこうでなくちゃなぁ!!」
「……魏軍屈指の猛将三人が率いる強部隊の様だが……数も地の利も此方が上だ。焦らず迎撃すれば、なんて事ないだろう。
――が、然し……如何せん手筈が良すぎるな。凌操殿を奇襲したチンタイといい、まるで待ち構えていたような出現から察するに……」
熱を帯びた甘寧が鉄鎖を握りしめて狂喜する傍ら、朱桓は依然として眉をひそめる。
(敵の防衛線はかなり前に出来ているようだ。報告では、この山より南西に位置する平野に砦があるとの事だが……そこを守らずして敢えて出撃してきたとするならば、奴等は此度の防衛戦術に余程の自信があるに違いない)
「……ご両人、下手に動かぬ事をお勧めする。おそらくだが、我等はこの地に誘い込まれた」
戦場を刺す朱桓の睨みが鋭くなった。
彼は共に戦う甘寧と凌統に、自分が感じる恐れを共有して自重を促した。
するとヤル気に満ちていた甘寧が一転して落ち着き、戦術的な発言で返す。
「……北側から迂回するっていう作戦が、読まれてたって訳かい?」
「それもおそらく。何せ、敵の大将はあのソウソウだ。先の譙攻めで見せた奴の神速の迂回戦術は伊達ではない。あの絶望的な状況で「出来る」ならば、今にあっても予測ぐらいできて当然だろう」
朱桓の考察に、凌統が頷きながら返そうとする。
「確かに……こっちの作戦が看破されてても、何らおかしくはない強敵で――」
「話はここまでだ。来るぞ」
切り出し人が話を中断するや否や、麓を制したカコウトン隊から大歓声が上がった。
見れば、魏国を代表する大将軍・カコウトンが、軍列の先頭に出馬していた。
それに伴って兵達が勇気づき、自然と歓声を上げたのだ。
「曹魏の全精鋭に告ぐ!! 殿路放浪軍など、元来我等の敵ではない!! 姑息な策を弄せねば勝てぬ不男どもを蹴散らし、譙の屈辱を千倍にして返してやれ!!
――全兵、突撃だァァーー!!」
カコウトンは左右を固めるチョウコウとジョコウの準備が整ったと同時に、戦場を震わす程の勇ましい攻撃号令を下した。
その矛先が向けられたのは、凌統隊だった。




