許昌攻略戦①
281年10月。殿路秋渓より一時的に頭領の位を継承(簒奪)した姫崎怜華は、ソウソウ軍の本拠地・許昌へ向けて5万の軍を発した。
第一陣。全軍の先鋒を務める主将は甘寧。副将には朱桓。更には凌統と凌操の親子が随行し、兵数は各隊5千ずつの計2万。
第二陣。主将は太史慈、副将は丁奉。兵数は計1万。
第三陣。本隊を率いるのは総大将の怜華。全軍の参謀には陳宮。両翼は夏侯淵と魏延が固め、兵数は計2万。
各隊の兵種については、太史慈と夏侯淵が弓兵。それ以外が軽装槍兵で編成されている。
許昌に侵入した姫崎放浪軍は、開戦を前にして軍議を始める。
「さてと……じゃあ作戦会議といきましょうか。みんな、気を引き締めてよ!」
「うぇぇ~~~い (* ̄▽ ̄)ノ~~ ♪」
返事の一番槍を飾る仲間は、当然ながら甘寧である。
何ともナイスミドルな歌声…………とは程遠い気の抜けた生返事であるが、ニヤニヤと笑っているところを見ると、わざとであろう。
「ファーーアング!! ファーーアング!! ファーーアング!!」
それに続いて夏侯淵による万歳三唱。甘寧の生返事を掻き消す様な、勢いの良さがあった。
「嗚呼!! 軍師殿直々の指揮……わたくし、何時になく燃えてきましたよ!! デュクシィッ!!」
今戦にあっては美しき「指揮」を求める魏延。
彼が右肩を晒すや否や、刻まれた桜吹雪の刺青が輝き、陣中には季節外れの桜が舞い散る。世に言う「花咲かデュクシ」とは彼の事である。
「よぉーし息子よぉぉーー!! 気合いを入れるのだ!! ぬぅおおぉぉぉーー!!」
「ああぁぁっヽ(´Д`;)ノ 父上! 熱い! 熱……うおぉぉぉーー!!」
片や、凌操の熱い抱擁を受けた凌統は、体温が200℃近くまで上昇。
汗が熱湯となって発散され、周辺の気温を著しく上げる。
ともすれば、熱気を帯びた丁奉や太史慈が上半身裸になるのは必定であり、二人の輝かしい筋肉を見た兵達が熱狂の渦に呑み込まれるのも当然の事。これは神話全書にも書かれている。
(うぅわぁーー、あつぅぅーー。なんなのよもぉーー)
兎に角、周辺の気温は更に上昇し、10月だというのに真夏の炎天下に勝る45℃を記録した。
熱に弱い怜華は袖と服を捲って露出を増やし、涼を得ようとする。
彼女はここに秋渓(状況悪化型UMA)が居ない事を幸運に思う一方で、秋渓抜きでも発揮される筋肉パワーに呆れ返ってしまった。
「ぶはぁっっ!? よ……良き……! 良き露出だ……!! 流石は軍師殿……良く良く存じておる……!!」
露になった怜華の腹部。その中心にありし可愛らしいお臍を見て、朱桓は鼻血を出した。
さすれば、朱桓周辺の気温が急激に下がり、一足早い冬が到来する事も当然と言えるだろう。何せこれも、神話全書に書かれているのだから。
「……あぁーー、うん。気の引き締めて方は……まぁ……個々人に任せるね……。
――さっ、陳宮殿。彼等は無視して作戦決めよ」
「ははぁっ! 承知致しました。この陳めにお任せ下され!」
結論を述べるなら、姫崎放浪軍の陣営に春夏秋冬が同時に訪れたという事。
それ即ち、今回の戦術は「索敵」が採用されたという方程式が成り立つ。
因みに索敵戦術とは、広範囲に視界が及ぶ事で、待ち伏せによる敵の不意討ちを回避できる戦術だ。大将か参謀が「広域偵察」のスキルを習得していると選択可能であり、怜華がそのスキルを習得している。
また、策略は「鼓舞」を3つ、「天変」を1つ、「幻術」を2つに決まった。
余談であるが、策略の選択に消費する策略Pは、大将と参謀の合計知力値である為、秋渓と怜華のコンビより、怜華と陳宮のコンビの方が多かったりする。
「へっへへ! 野郎共! 気合いは入れたか!? そんじゃあ……始めるぞォォーーー!!」
「ウオオオォォォーーー!!!」
作戦が定まるや否や、甘寧を主将とした第一陣が鬨の声を上げて出陣した。
敵の罠を避ける為、戦場の端を真っ直ぐ北上し、北の端で西へ進路を変更。俯瞰で捉えるならば、上下左右が反転したL字の様な進軍経路である。
「見えたぜぇ……! ドンピシャ、敵の真横だ!」
第一軍は開戦から4ターン目にして、山上と麓の平野に布陣する敵の二部隊を捕捉した。
参謀を務める朱桓は、精査した情報を基に行動を促す。
「斥候の報告によれば、山に布陣する部隊は敵軍師・カクカ。麓に布陣しているのが猛将・テンイとの事だ。そして、奴等はまだ此方の存在に気付いていない様子。……甘寧殿、仕掛けるならば今のうちに」
「おぅ! 上等な獲物と最高の状況だぜ!! 一発で決めて、敵の策略を封じてやらぁ!!」
敵に先んじて居場所を認知する事こそ、索敵戦術の真価と言えた。
甘寧・朱桓の両部隊は疾風迅雷となって突撃し、それぞれがテンイ隊2,700とカクカ隊3,100へ襲い掛かる。
「オラオラオラァァーー!! 俺こそは昭毅武恵遺愛霊顕王・甘寧!! 木っ端の雑兵なんざ相手じゃねぇ!! 微塵に吹き飛べやァーー!!」
「うわあぁぁーーん///」
先ずは甘寧による「猛攻」が炸裂。テンイ隊は1,062人が暴風に巻き込まれ、自宅へ強制送還される。その際、彼等は褌をチラリズムさせ、純情な乙女の様に頬を染めたという。
「呉の朱桓、いざ参る!!」
それと同時に朱桓隊もカクカ隊へ通常攻撃を浴びせ、1,268ダメージを与える。
対する朱桓隊への反撃ダメージは210。カクカの武力がとても低い事もあって、通常戦闘でも充分な戦果を得る事が可能だった。
「甘寧殿! この凌統も続きますぞ! いざっ!!」
「おっしゃ凌統ッ! 俺とおめぇで、いっちょ派手にやってやるぜェーー!!」
次いで現れた凌統隊は、側面急襲を受けて動揺するテンイ隊の正面に堂々と姿を見せた。
彼等は甘寧隊と共にテンイ隊を挟撃し、その数を一気に減らしていく。
交戦1ターン目でありながら、テンイ隊は壊滅の危機に瀕した。
「よし! ここに父上が続けば、敵将・テンイを撃破できる! さぁ父上! 今が好機ですぞ!!」
後に続く父の部隊へ向けて、凌統は熱視線を送った。
かの凌操ならば、ここで咆哮を上げて応える筈である。
「フッ、馬鹿者どもめ。この曹軍を簡単に打ち破れると思ったのか? 侮り過ぎだぞ、殿路放浪軍よ」
――が、その熱視線の先に凌操隊は居なかった。
というのも、ソウソウ軍の一部隊が進軍中の凌操隊を奇襲しており、凌操隊は後方にて人知れず混乱状態にあったのだ。
「ちっ! あいつはチンタイか……! まぁーた嫌な奴が背後に回りやがった!!」
知勇兼備の名将・チンタイ率いる軽装騎兵隊2,300。
先の譙攻防戦に於いても、横陣の裏を掻いて凌操隊を奇襲した強部隊だ。(第63話「第二次譙攻略戦⑥ チンとタイと古墳と観光」参照)
(……にしても、広範囲に視界を持つ俺達を逆に奇襲するなんざ……あの野郎、よほど前の方に出張ってやがったな)
止めの一撃を阻止したチンタイを忌々しく思う甘寧。対するチンタイは、さも得意気にほくそ笑んでいた。
「土地を持たぬ痩せ犬ども。貴様らはそこら辺の丘墓場ではしゃぐのがお似合いだ」
「へっへへ、言ってくれるじゃねぇの……このチン○(ピーー)野郎が!」
甘寧の口の悪さに、チンタイは思わず眉根を寄せた。寄せて、心なしか攻撃が激しくなった気が……。
凌統はそんな二人の様子を見聞きして――
(あれ? 甘寧殿って「挑発」スキル持ってましたっけ?)
などと思ったという。
尚、甘寧の兄貴は「混乱」は持っているが、「挑発」は持っていない。
先程の悪言は、ただの兄貴系標準語である。




