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チャーージィゴー!! キチガイとはナイスガイ


「ふむ……ここは何処だ?」


 突然だが、何もない真っ白な空間で目覚めた俺は、「ふむ系主人公」の始まりを予見した。

決して「腐向け主人公」ではなく、「アッッーーー♂」でもない。「良っい湯・だ・な! ウホホ!!」でもなければ、「うっふん男祭り!! ポロリで出来てるよ///」などでもない。

「国庫が足りないと? ふむ……では紙幣を大量に刷れば良いのでは?」という「ふむ」から始まるデフレスパイラル系主人公の事だ。


 話は変わるが、「スパイラル」と聞いてチャージマン◯ンの胸毛生えたお父さんが、人工津波に呑み込まれて「うわあぁーーん///」と叫んでいた光景を思い出すのは俺だけだろうか。


 結局何が言いたいのかと言えば、怜華ハンマーを使って眠りについた俺は、気がつけば虚無の空間に居たという事だ。うわあぁーーん。


「うわあぁーーん///」ビュオオォォーー!!


 なんと!? 何処かで見覚えのある逆さ三日月髭男爵が、竜巻に呑まれてパンチラもとい股引きチラしているではないか!?

見違える筈もない。あの股引きは確か…………あの逆さ三日月髭は確か、許劭(キョショウ)だ!

本人の暇潰し目的で、俺や怜華をゲーム世界線へ転移させた本人だ!!


 そして、何も無い真っ白な空間で竜巻に呑み込まれてクルクル回る姿が、もの凄いシュールだとか言ってはならない。なんと言っても、彼の心はグラスハートなんだから。


「何も無い真っ白な空間で竜巻に呑み込まれてクルクル回る姿がもの凄いシュールだぜ!! 今すぐ助けてやるぞ!」


 俺は脱兎の如く駆け出した。許劭とは反対方向に駆け出した。正しく脱兎の如く。


「大丈夫じゃ! 今自分で自分を助けるぞ! ふんっ!!」


 そして、許劭は当然の様に竜巻を霧散させ、自己解決に至る。

最近流行っている回復と攻撃をこなす自己完結キャラだ。ソシャゲーのガチャに登場すると、一躍人気者になって再登場も約束される好性能キャラだ。

つまり、許劭はこれから人気者になる筈。……まぁ、ガチャに実装されればの話だけど。


「……そんで? “関わる者” だとか何とか言ってたお前が、こんな所でなにやってんだ?」


 降り立った許劭に改めて近寄るや、俺は毅然と問い質した。

対する許劭は拳を握りしめる否や、悔しい顔を浮かべながらチアガールの物真似をし、茶色の素敵な股引きをチラチラパタパタさせる。


「儂も! お前さんらみたいにワイワイしたかったんじゃ!!」


「いやいや、少なからず股引きをチラチラなんてしてねぇよ」


「でも褌はチラチラさせとるじゃろうに」


「くっ……! 的を射ているぜ!」


 射抜かれた俺の心がズッキューン! は言わないながらも、反論を封じ込めた。

それで得意気になった許劭は、微笑を浮かべるとともに何も無い近くを手で示す。


「ふっ、人物評に長ける儂の弁に、敵うものはなし。

――さっ、そういう事でほれ。ここに腰掛けい」


 瞬きの合間に優雅な喫茶セットが出現した。

アンティークモダンな家具や食器、香り際立つ極上の茶葉やお菓子が彩る見事な空間。


 俺は思わず感銘を受け、同時に奮起する。殿路家の男として、負けられない戦いを前に奮い立ったのだ。


「……ふぅおおおおぉぉぉーーーーー!!!」


 俺の雄叫びに応える形で、即席喫茶セットよりも一回り大きい黄金の茶室が出現する。

金ぴか好きの豊臣秀吉ですら、ビックリ仰天して急逝し、大坂夏の陣と冬の陣が一緒になった秋の陣が起こる程に。食材の秋に際して、皆が太ってしまう程に。


「ふんっ! どうだ! これが殿路家奥義『匠泣かせの絢爛建築術』だ!! この技を喰らってプライドを折られた職人は数知れず。お前もこの技の餌食となれぇい!!」


「ふっ……甘い甘い。アッッーーー♂……まい。その程度で敗れる儂と思うてか!!」


 許劭の反撃。むぅぅーーん! と唸って手を合わせるや、喫茶店が出来上がった。

無論、従業員や他の客も、何処からともなく現れる。


「キィィエェェーーー!!!」


 負けじと天命の加護を祈り、周辺に緑や土を生み出す俺。

猫や小鳥などといった小動物も集まり、それを目当てにした客が増える。


「むむむ……言うだけあって中々やるわい。ならばこれはどうじゃ!!」


 許劭が本気を出した!! 12に割れたバキバキの腹筋を露にした腹踊りを以て、オフィスビルや住宅街を形成したではないか!?

当然ながら人口が急激に増えた一方、水や食料の不足が顕著になった。


「おおぅ! やってくれるな許劭!! ならば俺も、この町造りに全力を尽くして見せる!!

――トロールモッチャン・船越英◯郎ォォォーーー!!」


 気合いの咆哮もとい殿路家に伝わる呪文によって、大地が変貌を遂げる。

荒れ地だった部分が広大な田園に整備され、農業者が増えて沢山の農作物が収穫される。郊外には草原が生まれ、馬・羊などの放牧から、牛・豚などの牧場が始まる。川や海も生まれて漁業が成り立ち、流通路の確保から輸入食品も目立ち始めた。


「よっし! ここまで手を加えてやれば、後は彼等だけで自立できるな! それにしても……まさか連続して殿路家奥義を放つ事になるとはな。……許劭、なんて末恐ろしい子!?」


「ふっふっふっ! 殿路秋渓。人の子に留めておくには惜しい存在よ。その力を行使すれば、新世界の神にでもなれるだろうに」


「生憎様……神や仏の存在に示す興味と、存在に近づかんとする熱意は別でね。そういうのは柄じゃないのさ」


「じゃが、最近のチート主人公は異世界で魔王だったり神になったりするぞい。……お主はならんのか? 筋肉の魔王だったり慈愛の女神とかに」


「ふふふっ。……許劭、一つ良いことを教えてやるよ。筋肉ってのはな……人の上に立つ為にあるんじゃない。それそのものが……絶大なる『愛』だ」


「!!?」ピシャアァーーン!! ブッ!?


 許劭の脳裏に稲妻が迸り、臀部から絶大なる屁が放出された。

その放屁が都市のガス不足に貢献し、町では火力の芸術たる中華料理がブームとなる。


 俺はその光景を見て、三つ思った事がある。

数ある伝説に於いて創造神と崇められる存在達は、きっとこの様なやり方で人や自然を創ったのではないか……と。

さすれば、虚無の世界に新しい営みを創造した俺と許劭も、創られた人や自然からすれば創造神に当たるのではないか……と。

あぁ! 旨い中華が食いてぇなぁ……と。


「……めっちゃ良い匂いがしてきた。これは相当旨い麻婆豆腐だぞ……」


「よしよし、では早速食べに行くかのぉ!」


 結論。神や魔王に興味ないので、一般市民になって中華料理食べに行きました\(^-^)/


 余談ですが、庶民に愛され続けている中華の代表『四川料理』って、蜀(現在の四川省)が発祥なんですって。秦の始皇帝から三国志の劉備の時代にかけて確立されたって、Wikipediaさんに書いてあった。


っていう事は、現代のものとは違っていながらも、劉備も麻婆豆腐みたいなものを食べてたのかな? ハフッ! ハフッ! この麻婆豆腐ゥ……絶品!! とか言いながら。

でもマジレスすると……当時のご馳走って確か、牛肉や羊肉のスープだった気がする。少なくとも、麻婆豆腐じゃないと思う。麻婆豆腐も挽き肉のスープみたいなものだけどね。


お酒はどぶろくみたいな濁酒で、原料は殆どが粟。米は南方の呉でしか獲れなかった。そしてアルコール度数が低い為、現代の酒に比べれば水みたいなものだったとか。

だから三国志随一の酒好き張飛も、水の様に飲んで漸く酔えたのではないか……と。

酒乱君主こと大虎・孫権に至っては、良質な原材料による旨い酒が、彼を酒乱君主にさせたのではないか……と。


因みに、曹操は酒を嗜む名人だと思う。人妻には溺れても、酒による失敗がなく、酒席の名場面が多いのは流石。名酒の製造方法を確立させてもいる。

間違いなく、彼と一緒に飲む酒は旨い筈。多少命懸けではあるだろうが……。


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