第二次譙攻略戦⑨ 一騎討ち
「カコウ・ミョウサイ見参! てめぇとの一騎討ちを所望! さあ来やが――」
「断る」
キョセイの次の番は、カコウエン。
彼は朱異の部隊と接触するや、武将同士の「一騎討ち」を申し込んだ。
「一騎討ち」は攻撃コマンドの一つであり、攻撃コマンドには「通常」「一騎」「戦法(戦法Pがある場合に表示される)」の三種類がある。
その内の一つ「一騎」を選択すると、攻撃目標とした部隊の隊長に一騎討ちを挑めるのだ。
「……乗り悪っいなぁー。……お前さんも武将だろ? 武将にして武人の類いだろ? だったら男らしく一騎討ちしよう――」
「断固拒否する」
そして、一騎討ちを持ち掛けた側 (カコウエン)に対して、持ち掛けられた側(朱異)にも拒否権があるのは当然の事。
故に、朱異は頑なに拒否する。
「…………良いから一騎討ちしようぜ――」
「押し売りお断り」
朱異は分かっていた。自分の武力69に対し、カコウエンの武力94では相手にならない事を。
ここで一つ、今回の様な状態で発生する事象についてを、朱桓風に説明致す。
まず、著しい士気の低下を招いた敵は、行動思考が変化する。
それまでは武力の高低に関わらず物理攻撃を仕掛けてきたところが、一騎討ちや計略による特殊行動をとる様になるのだ。
それは士気の低下に伴って攻撃力が減少し、かつ反撃ダメージが大きくなったからである。
例を挙げるならば、計略の「混乱」で部隊を状態異常にさせ、そこを攻めるとする。それならば反撃ダメージは極めて小さく、僅かな攻撃力でも確実に与える事ができ、劣勢挽回の手立てとなりうる。
「一騎」に関してはその効果が最も大きい。
端的に述べれば、一騎討ちでカコウエンが倅に勝利した場合、倅の部隊にどれ程の兵数が残っていようと壊滅させられる。
それ即ち、個人同士の出来レースで戦局を覆せる……という事だ。
倅でなくとも、こんな馬鹿げた勝負には普通乗らんだろう……以上、朱桓風説明でした!!
「朱異隊長……何だか頼りないなぁーー」
『一騎討ちを拒否した事により、朱異隊の兵士が193人減少しました』
「カァーー、なっさけねぇなぁ! それでもお前さん、男か!?」
『カコウエン隊の士気が1上昇しました』
ついでに補足すれば、断った側に生じるデメリットと、断られた側に生じるメリットもある。
それは戦略的思考に則った華麗なスルーを理解できない兵士の見限りと、喧嘩を吹っ掛けた側の士気が僅かに上昇する事。
後者のメリットの発生に関しては、士気が低ければ低い程、高い確率で起こる。
……まぁ、それでも上昇量は所詮1なので、戦局に大差ないと言えるが。
因みに某三国志シリーズのアクションゲームでは、一騎討ちに際して負けるとゲームオーバー。拒否すると味方全軍の士気低下となる。
キャラ補正の掛かっているスーパーサイヤ人状態の呂布と狭い檻の中で一騎討ちなんて、どうやっても勝てません本当に本当にありがとうございました…………にも関わらず、味方総大将の袁紹曰く「相手にするな、自重せよ」にも関わらず、一騎討ちから逃げると味方からブーイングの嵐を受けるブゥーー!!
じゃあ味方NPC武将が敵うのかと言えば、「豚は死ね!!!」で有名なルカ・ブラ◯ト様並みの一閃を受けて二、三撃で退場するブー。
抑々の話、広い戦場で逃げながら敵総大将を狙い討ちするだけでも大変なのに、狭い檻の中でゴジラみたいな奴と乳くり合っても勝てる訳がないのだ。
※1.広い戦場で戦えば、勝てない訳ではない。現に曹仁さんで倒した事があります。
※2.ルカ様の一閃は敵軍の全部隊に兵数50%の無条件ダメージを与えます。
ルカ様を倒すには矢の雨で予め負傷させた後、剣豪・猛将などの手練れ18人(6人×3回戦)で弱らせ、その後に一騎討ちで追い討ちを掛け、最後にまた矢の雨を降らして漸く撃破です。誰だよこんなチートキャラ考えた奴。
「フッ……所詮、我等の底力とはこの程度であったか。もはや覆る様な状況ではないが……まぁ、それでも構わん。私は私で、最後まで私を貫くまでだ。
――ソウ・シカン、今より敵将・太史慈を狙う」
話を戻し、猛将として物理攻撃特化のカコウエンすら行動を変えれば、他の武将もまた然り。
カコウエンの次に行動するドS王子・ソウヒは、通常攻撃ではなく、太史慈隊に向けて計略の「混乱」を仕掛ける。
尚、肉親の部隊が壊滅して捕縛された際、戦場に残っている一族武将は、本来ならば奮起して士気を上げるのだが、そこは天性のドS王子である。
父親の部隊が壊滅しても奮起などしてやらず、あくまでも己の冷徹さを貫き、他の部隊同様に士気を低下させるのみ。ソウソウ涙目。
というよりは、ソウソウが馬ちゃんアイテムを持っている為に捕縛されなかっただけか……。
「無駄だ。今更、混乱するような事態はおきぬ。潔く敗けを認めるのだな」
然し、ここまで大勢が決した今となっては、計略も戦法も成功確率が極めて低い。
その上、仮に成功したところで大きな効果は望めないだろう。
ソウソウ軍はただ、迫り来る敗北の波に呑まれる瞬間を待つのみだ。
「敵将・太史慈! このキョチョと一騎討ち、一騎討ちィ!!」
「おぅ、良かろう! 貴殿とであれば良い勝負になりそうだ!! いざっ!!」
『太史慈がキョチョとの一騎討ちを承諾しました』
その矢先だった。ソウソウ軍最後尾になるキョチョが太史慈に一騎討ちを挑み、太史慈がそれを了解したのだ。
「ファッ!? タ、タイシジサァァン!?」
「殿路殿、心配無用! 拙者は必ずや勝つ! 勝って、この戦に終止符を打って見せる!!」
武将には「勇猛」「冷静」という二種類のマスクデータが存在する。
意味は言わずとも分かるだろうが、勇猛が高いと好戦的かつ物怖じしない性格に。冷静が高いと状態異常になりにくく、なってからの復帰も早い。
太史慈もキョチョも例に漏れず、勇猛値がとても高かった。
「このまま何も出来ずに終わっては、丞相(ソウソウの意)の面目がたたん。せめて、これが最後の行動となるのなら……太史慈殿! 貴殿の首、必ずや頂戴する!!」
「ソウソウ軍随一の猛将・キョチョ。お前は「守るものの力」を……力というものの根本を、良く知っているようだな」
主の面子を想ったキョチョ。彼の見せる厚き忠誠心に感じ入った太史慈が、堂々と一騎討ちを受けたのは当然だったのかもしれない。
太史慈は両手に持つ手戟を構え直し、キョチョに睨みを利かす。
「ならば尚更良い!! さぁ来られよ!! 俺達二人で、この戦の大一番を打ち出そう!!」
「……いざ……参るぞぉぉぉーーー!!!」
咆哮一発、肉体に満ちていた気合いがキョチョの見えない鎧を成した。
「おおおぉぉぉーー!!」
「はあぁぁぁぁっ!!」
『ガアァァァァッッ!!!』
キョチョの矛と太史慈の手戟が真っ向より激突し、盛大な火花を生じさせる。
「火殺」の火種になりうる程の、熱く激烈な薄命花だった。
「……一合目はお互いに、高武力を活かした大技を繰り出したな」
解説役が板についてきた朱桓が、戦いの審判と実況を務める様子。
すかさず俺は、彼の隣にベンチを召喚して腰掛ける。
当のキョチョと太史慈は早くも二合目に移り、大技を続けるキョチョと、反撃と気力溜めに専念する太史慈の図となる。
「朱桓先生、激しい戦いですね。この勝負はどうなるのでしょう? キョチョの武力は96で、太史慈は93です。武力差は僅差ですが、太史慈の苦戦は予想できますか?」
「苦戦あってこその激戦。そして、僅かな武力差は関係ないでしょう。……要は想い!! 太史慈選手も言っていましたが、力の根本たるものが理解できていなければ、それはただの蛮勇。得物に気合いを込めたところで真価は得られぬ。振り回されるだけだ」
「成る程、それが強者同士の戦いでは命取りになると。…………ではリョフはどうなんでしょうね? 彼には確固たる想いがある様には思えませんが……」
「奴の場合は、己が最強たる自負こそが、力の源かと存ずる」
「「絶対的な自信」が、最強の座を譲れぬ想いになっている……みたいなものでしょうか。
――おっ! 気力を溜めていた太史慈の動きに変化がっ!? 出るか一撃!?」
「穿て!! 我が渾身の一撃!!」
二合目にてキョチョの大技を流した太史慈が、三合目の始めに奥義を炸裂させた。
「ぬぅっ……!? ぐあぁっ!?」
クロスした二振りの手戟から放たれた一閃。キョチョを盛大に弾き飛ばし、彼の体力を三分の一も削った。
「出たぁーーー!! これぞ奥義! 『クロスチョップ』!! 彼女と一緒にお化け屋敷に入り、「怖かったら俺に抱き付きな!」と格好付けた瞬間、彼女からバツ状にクロスした体当たりチョップを受けて気絶して、目が覚めたらベンチの上で彼女の膝枕を受けていたというラブゲー界隈の王道技!! こぉれはキョチョの心も陥落だぁぁーー!!」
「んな技あるかっ!? それと黙ってなさい!!」
「ぐばぁぁっ!? クロスチョップゥゥ……!?」
伝説の奥義を解説する俺に、怜華が背後からクロスチョップを仕掛けてきた。
俺の体力も、三分の二が削れた気がするんだな……。




