第二次譙攻略戦⑧ 敵大将も、帰宅
凌統隊による乱撃は一回目が成功し、661ダメージを与えた。ソウソウ隊の残兵数はそれ以下であった為に、その一回目の攻撃でソウソウ隊は壊滅する…………のだが、あんな攻撃は一回で充分すぎるわな。
「………………(゜Å゜)ォォォ…………ぜつえいぃ…………おうちかえろぉぉ……」
突然だが、ソウソウは初期状態で沢山のアイテムを持っている。
「爪黄飛電」という馬ちゃん、「絶影」という馬ちゃん、「赤兎馬」という馬ちゃん(年代による)、「倚天の剣」、「孟徳新書」など。
馬は部隊が壊滅した際、逃走確率を100%にするもの。倚天の剣は武力値を3upさせる。孟徳新書は知力値を5upさせる。
ソウソウの能力値は武力68 知力91 政治94 魅力96の総合349。堂々たる1位。そこに武力3と知力5が加わり、戦場での捕縛も不可能。これぞ公式チート。
つまり何が言いたいのかと言えば、金的されたソウソウは涙ながらに城へ帰ったという事。
そこには威厳の「い」の字もなく、皆の同情を買うに相応しい声音と雰囲気が醸し出されていた。ソウソウ軍のマスコットキャラが彼に決まったのは、言うまでもないだろう。
「むっ!? 逃げるのかソウソウ! 卑怯なり!!」
「いやもう……お願いやから逃がしたってェ……! 敵やけど助けたってェ……!!」
伝説の金的壊滅だけでは飽きたらず、捕縛まで狙う凌統。
普段から爽やかな顔を浮かべる好青年が、今は何よりも恐ろしい鬼に映った。
「……ところで秋渓。アレって、そんなに痛いものなの?」
俺達が凌統を制止して、凌統が渋々了解した後、怜華が不意に尋ねてきた。
俺は股を押さえながら帰るソウソウの後ろ姿を目で追いつつ、徐々に小さくなる彼に哀れみの感情を抱き、男がその様に感じる理由を精一杯伝えてやる。
「……今のアレは度が過ぎすぎて威力の程は断定できない……っていうか死んだ方がマシに思うぐらい痛いだろうから想定したくないけど…………聞く話によれば、通常の金的で感じる痛みは女性の生理痛に似たものがあると……」
「じゃあ今のアレを簡単に言えば…………一年分の女の子の日が一日に凝縮されて下着が血塗れになって寝る事もできない……って感じか」
「……多分そうだと思う。女になった事ないから分からないけど……」
「そりゃぁぁ……痛いわぁーー。ソウソウさん御愁傷様」
「まぁ女の子は金的並の痛みを毎月の様に味わってる訳だからなぁ……それに比べれば、生涯に何度あるか分からない金的なんて月とスッポン、薔薇とペンペン草みたいなもんかもな」
「そう! 女の子は大変なんです、色々と! ……でも今回の事は、人妻スキーなソウソウさんにとって良い勉強になったんじゃないかな?」
「何の勉強だよ!?」
「世の中の女性や、狙われる奥さんと振り回される敵味方の気持ち……の勉強!!」
中々と強烈な勉強方法に、俺は戦慄した。
試験勉強の際、怜華にはとても世話になったが……まさか次からは体に叩き込む勉強法になるのか!? 「ほぅーら、私が叩いてやるから良い声で鳴きなさぁぁーーい!!」……的な?
(いや珍獣ハンター怜華であっても流石にそれはないだろうがちょっと期待してしまう様な何処と無く楽しみでもある様なそれでいて無くもなさそうで否定できないぞ……!!)
「どうしたの秋渓? ほら、朱異殿と凌操殿がガクシンとチンタイの部隊を蹴散らしたよ?」
「…………いま、「チン」って言った?」
「タイをつけろ馬鹿が」
大軍師怜華様万歳は、下ネタをお好みであらされない。
俺は低頭するとともに、敵部隊を壊滅させた朱異と凌操に向けてサムズアップした。
※横陣より出撃して太史慈隊の右に回った朱異隊が、ガクシン隊848へ通常攻撃。1,077ダメージを与えてガクシン隊壊滅。
チンタイ隊と接触していた凌操隊が、チンタイ隊604へ通常攻撃。1,483ダメージを与えてチンタイ隊壊滅。
次はソウソウ軍の軍師・カクカのターン。
「殿が敗れ、士気の低下は最悪を極めたか……。だが然しっ! これで終わるのは甚だ詰まらんというもの! せめて敵大将に一矢報いてやろうではないか!」
カクカは計略の「混乱」を発動した。俺の部隊に、再び危機が訪れる……!?
魚人「ルブブブブブ!! ドーモコンニチワ。モマン・タガオ、トモウシマス」
鮪「ウオ! ドーモコンニチワ。ワノクニカラ、オヨイデキタ、マグロデス」
鳥「ウオ! ドーモコンニチワ。ユーラシアカラ、トンデキタ、ワタリドリデス」
象「ウオ! ドーモコンニチワ。アマゾンデ、ミツリョウサレカケタ、アフリカゾウデス」
…………訳はなかった。やはりと言うか、カクカは頭が良すぎるのだ。
良すぎるせいで、彼は軍師としての面子に拘った模範的な計略を仕掛ける事しか出来ない。
己の知略を発揮する事に酔う根っからの戦屋であるが故に、敵を混乱させる為に「混乱」を計略として仕掛けてしまう。
それこそが彼の弱点であり、勢いで押し勝つ俺との相性の悪さだ。
というより単純な話、俺の部隊に現れた珍獣や、それらを捕獲・保護せんとする怜華に皆の意識が行っている為に、他部隊からの情報云々の一切が関係なかった。
即ち、カクカの計略はまたしても失敗。俺の部隊は変わらぬ勢いを保持した。
「むむむ……殿路秋渓、理解に難い大将よ。ならばこのキョセイが、物理的な一矢を穿つのみ。全員、放てぇ!!」
弓隊カクカの次は弓隊キョセイ。
彼は文官に似合わぬ勇壮な声を以て、射撃号令を下した。
「…………えぇい、何をしておるのだ!? 放て、放てェ! …………放ってくださーい!!」
残念ながら、殆どの兵士が命令を無視。ひたすら帰宅準備を進めていた。
「いや、今更攻撃しても負け確は負け確だし……」
「オヤツ貰えないのに、これ以上残る理由ないし……」
「どーせオヤツ貰えないなら、家に帰って娘と一緒に餅食べるし……」
「抑々にして、純粋なソウソウ軍じゃない隊長の下だとやる気でないし……」
「ガァァーーン!?」
大将部隊の壊滅は士気を-10させる。且つ、その大将が君主である場合は更に-5される。
即ち、元々低くなっていたソウソウ軍の士気が、ソウソウの金的撤退によって格段と下がり、オヤツ不足以上の帰宅(離散)を招いたのだ。
因みに、キョセイが純粋なソウソウ軍ではないとかは、士気に関係ない。ただ単に兵士の個人的感想だ。
結果、キョセイ隊の攻撃力は雀の涙どころか空気中のイオンとなり、俺が受けたダメージは34だった。
キョセイドンマイ、涙が出ちゃうのは仕方ないよ。だって文官なんだもん。




