第二次譙攻略戦④ 総大将出陣
5ターン目に突入。譙守備のソウソウ軍は44,589人まで減少。
だがここで、本拠地・許昌より兵数36,300の5部隊が、援軍として到着。これでソウソウ軍の総兵数は80,889。俺達の倍程度となり、下がっていた士気も5だけ回復する。
「援軍を気にする必要はなぁぁい!! ただ単に、見えない所に戦えない連中が兵数減らしに現れただけだ! そんな事より先ずは前だ! 行くぜ皆、正面から正々堂々と奇襲してやれ!!」
援軍は戦場中央にある砦より、更に城側へ進んだ所に出現する。
そして距離的なものを鑑みれば、彼等が戦列に加わる事は不可能。
何故なら戦場端で戦う俺達の所へ来るまでに、譙の守備隊が菓死(オヤツ切れでやる気がなくなって自然的に解散)する事になるだろうから。
余談だが、「ハッ◯ーターン」がとても美味しいと感じるのは、俺だけだろうか……。
仮にソウソウ軍のオヤツがそれならば、ソウソウを見限って帰宅する兵士はもっと多…………あれ? この手の話、前も確かにしたような。まぁいいや、「ハッ◯ーターン」旨いし。
「…………全員、ダンボール箱を被れ。うむ、良いセンスだ」
話を戻して、俺の部隊は正面の森に構えるジョコウ隊へ、戦法の「奇襲」を発動。
コヨエモンが用意してくれたダンボール箱を被り、抜き足差し足忍び足で静かに進みながら、途中で「待たせたな」とか「太陽ォォォーーー!!!」とか「はいだらぁぁぁーーー!!!」とかを叫びながら近付く。
考えて欲しい…………5,000人近いダンボール人間が、見晴らしの良い平野をコソコソと進みながら、「待たせたな」とか「太陽ォォォーーー!!!」とか「はいだらぁぁぁーーー!!!」とかを叫びながら近付いて来る狂気的光景を、その先に望める結果を、考えて欲しい。
「てっ、敵襲ゥ!? 敵の奇襲ゥーー!? 略して敵襲ゥーー!?」
当然、成功する。否!! ダンボール箱の力を借りて成功しない任務など、この世にあろうか!?
ジョコウ隊3,589に1,281ダメージを与え、俺が受けた反撃ダメは99。良き戦果だ。
「ぬぅぅ……! あの程度を見切れなんだとは、このジョ・コウメイ、一生の不覚!!」
「戦争は変わるって事だ。覚えときな!」
奇襲に成功した俺達は、自部隊のターン終了に伴って平野へ戻るが、俺は去り際に言葉を残していく。限りなく借り物の、誰が言っても格好が付く台詞だが……。
「貴様の言う通りだ。戦争は変わる」
「むっ!? 誰だ!?」
何処からともなく、俺の台詞に返す者の声が聞こえた。
やけに威厳があり、酸いも甘いも知っている様な重みのある声音だった。
俺はすかさず意識を尖らせる。もしかしたら奴ではないか、と。
「然れど、戦争を変えるのは貴様ではない。このソウ・モウトクよ!!」
そして俺の予想通り、奴は現れた。
横陣二段構えを見せる俺達の北側から、即ち右側から横陣の弱点たる端部を突くように、視界に現れたのだ。ソウソウ軍大将にして戦争の天才・曹操が。
「……遂に現れたか……ソウソウ! しかも山越えして側面に回り込むとはな! 抜かったわ!」
正面の森からではなく、北西に位置する山からでもない。山を越えた先にある北側の平野に出て、そこから南下。
つまり、カコウトンとジョコウの騎馬隊、カコウエンとキョセイの弓隊は囮。北側から現れたソウソウと彼に続く歩兵隊が、本隊にして主攻という訳だ。
「でもよぉ……“兵は神速を尊ぶ”とは言え、幾らなんでも速すぎやしねぇか? あいつら山騎でもなく槍兵隊だろ? 山越えて戦場迂回したにしちゃあ、速すぎんだろ」
俺の左に布陣する、急襲・奇襲・速攻を得意とする一番乗り大好き兄貴こと甘寧ですら、ソウソウの大奇襲には動揺している様子。
彼の疑問・驚嘆に関しては、俺の右側に布陣する朱桓が一拍遅れて解説する。
「…………天候だ。戦が始まってからここまで、変わらずの晴天だった。故にソウソウ軍は、各隊長が習得する軍事系特技による加速に加え、兵種本来の機動力を最大まで出せたのだろう」
「へっへへ、天は我に味方せりってか? やっぱりやりやがるぜ、あいつ等。
――丁奉、太史滋。気ぃ付けろよ? 右翼側、きっと相当な激戦になるぜ?」
最も右に構える丁奉と太史滋は壁役にならざるを得ず、この陣形からすれば、俺や甘寧の援護は受けられない状態だ。
「乱世の姦雄、恐るに足らず!! さぁ、参りましょうぞ太史慈殿!!」
「おぉ! 我等両人が鉄壁の盾となりて、敵の強襲を弾いてくれる!!」
だが、当の二人は極めて高い士気を見せていた。
正しく、ドォーーンと来い!! といった感じだ。力強い事この上なし!! 例えるならばそれは、少ないお小遣いで駄菓子屋に行った時、20円および10円というコスパ最強の「キャベ◯太郎」と「う◯い棒」を見つけた感じだろう。あの安定感と安心感は、子供心に力強く感じたものだ。
「ふん、正面から攻めるだけが戦の常道だと思うな。先ずは内を崩す」
対して、子供の頃から「大人のおつまみ」をオヤツにしてきたであろうソウソウは、そんな子供心など露知らず、丁奉と太史慈から一定の距離を保ちつつ、二人を越して奥に控える朱異に「混乱」を仕掛けた。
「朱異隊長! 大変です! 後方より敵が迫っているとの情報が!?」
「その様な事は断じて有り得ぬ! 我等を混乱させる為の敵の虚報だ! ……っ! 既に広まってしまっているか!? この朱異とした事が……!」
まさかのまさかで、ソウソウの「混乱」は成功してしまった。
朱異は「混乱」や「挑発」をやり返すスキル「反計」を習得しているというのに、それをすり抜けて混乱状態に陥ってしまったのだ。
「正しく、虚報である。だが、このソウ・モウトクより放たれし嘘は真となる可能性に恵まれておる。故に人は惑い、それは「反計」を持ちし貴様とて、例外ではない。
――さぁ進め。カコウトン、ジョコウ。群れるしか出来ぬ痩せ犬共に、真なる軍勢のみが繰り出せる兵法の極意を見せてやれ」
「オォ! お任せよぉ!!」
ソウソウの号令に従う形で、ジョコウが俺に「猛攻」を仕掛ける。
「トラップカードオー……ぷうっは痛ぁーー!!」
今回は防ぐ事が叶わず、俺の部隊は1,138ダメージを受けてしまう。
「見ろ!! 敵の防陣が崩れ始めたぞ! この機を逃さず、敵を追い詰めろ!! 痩せ犬共を追い返せ!!」
「黙らっしゃあぁぁい!! そう言うならさっさと掛かってくるが良し!! さっきから吠えてばっかりで、ビビってんのか!?」
ジョコウに続いたカコウトンは、3ターン連続で「大喝」を発動し、3ターン連続で失敗。さっさと掛かってくるが良し!! とは俺の談。だって、ずっと山頂から動かないし。
「喧しい! 貴様ごときに臆するカコウ・ゲンジョウではないわ! ただ単にジョコウが邪魔で動けんだけだ!! 分かったか!!」
「…………それを先に言ってくだされ。3ターンも無駄にしておりますぞ」
どうやらカコウトンは、先に動くジョコウ隊が邪魔で、俺と接触できない様子。
怒れるカコウトンと、一転して鋭気を削がれるジョコウと、それを見て爆笑する甘寧。
「……いや、俺に固執せずとも、甘寧の兄貴に当たれよ。さっきから暇して鉄鎖ブンブン振ってるしよ」
「ぎゃははは!! 別にいいんじゃねぇ!? 何もしてないだけで兵と士気が減ってくんだから!!」
「それもそうだな!! ワハハハハ!!」
確かに兄貴の言うとおり、カコウトンが吠えるだけなら、俺達にとっては好都合と言えた。
一方、カコウトンとジョコウのターンが終わり、前衛の俺と甘寧がぎゃははは! 言っている傍ら、最後衛に布陣する怜華は取るべき行動に迷っていた。
「うぅーん……余裕そうな秋渓を援護するべきか……朱異殿を沈静するべきか……」
彼女の迷いに関しては、俺と同じく前衛を張り、朱異の父であり、彼を背後に控えさせる参謀補佐の朱桓が答える。
「無用だ軍師殿。倅の混乱は私が正す。それよりは殿路殿の兵力を回復なされよ」
「……分かりました。なら朱異殿の方は任せますね」
「うむ、任された。我等両人で態勢を立て直そうぞ。
――さて倅よ、無様な姿からさっさと目覚めろ。さもなくば絞めるぞ」
「絞殺だけは遠慮する! 皆もそうであろう!」
「うおおぉぉぉーー!!」
「治癒」を発動した怜華によって、俺の兵数は2,839人から4,198人に回復。
彼女の次は朱桓が、如何にも物騒にして息子本人にとってはトラウマに他ならない「沈静」を以て、混乱状態から無理矢理回復させた。
「「沈静」……だよな? 歴とした回復だよな? 如何にも脅迫じみた「大喝」に思えたんだが?」
「……恐いよ朱桓殿……冗談に聞こえないって……」
「ふっ、結果が全てを語る事もあろう。それが冗談だろうと、本気だろうと……な」
「いや本気はダメだろっ!? 本気は!?」
微笑を浮かべる朱桓に対し、珍しくツッコミ役に回った俺と、気圧される怜華であった。




