第二次譙攻略戦③ 交戦
「殿路放浪軍頭領・殿路秋渓。散々小賢しい策を弄してくれたものだ。……然し、それもここまでよ。このカコウ・ゲンジョウの眼に収まりし今、貴様の命運は決まった」
山頂に現れたカコウトンが、眼下に布陣する俺達へ睨みを利かす。
馬上にあって勇壮に構える隻眼の猛将は、とても不機嫌な様子だった。
彼は目障りとばかりに俺達を見下し、右手に持つ槍の刃先を突きつけるや、腹の底から殺気を含んだ威圧声を爆発させる。
「モウトク(ソウソウの意)の天下取り、阻んだ貴様には「処断」の二文字こそ相応しい。
――この俺が懇切丁寧に、敗北と捕縛の四文字も教えてやる故……早々に失せろッ!!!」
計略の一つ「大喝」。
「威風堂々」のスキルを所持する武将のみが発動できる技で、計略範囲内にいる敵武将を恐慌状態にさせる事がある。計略なので使用制限はなく、戦法Pも消費しない。
発動武将の武力値と内面データの勇猛値が高く、敵の値がその逆である程に成功しやすい。
「聞いたか丁奉。ソウソウ軍のカコウトンが、ソウソウに失せろ! ……だってよ」
「両者は君臣を気にせぬ間柄と聞いておりますが…………些か不敬罪が過ぎますな」
然しだ、カコウトンの計略範囲内に居るのはガチムチの武人(慈愛と筋肉の戦士)ばかり。当然、武力値と勇猛値は非常に高く、威圧されても畏縮しない。
結論を言えば、武力値と勇猛値の低い怜華が最後衛に控えている為、カコウトンの「大喝」は全くという程に効果がなかったのだ。
因みに、敵の計略範囲外に怜華が居るという事は、逆を言えば怜華の計略範囲内にも敵は居ないという事を意味する。それ即ち、怜華は味方に対して「治癒」「沈静」を行えるが、敵に対して「混乱」は行えない。
故に、両軍の計略合戦は意味を成さないものと見るべきだ。
「……ちっ、土地を持たぬ痩せ犬の癖に、肝だけは据わっている様だな」
カコウトンは右の目元を吊り上げ、更に不機嫌な様子で忌々しく呟いた。
彼と共に現れた先陣部隊の一人・ジョコウが、そんなカコウトンの傍に駆け寄る。
「新進気鋭の放浪軍と言えども、中には大陸に名を轟かす武者が在籍しております。……ともすれば、互いに小細工や言葉は要り申さぬ。正面切ってぶつかり、ただ打ち破るのみ」
武力アイテムの「大斧」を所持するジョコウ。
彼は静かに俺達を見詰めるだけで、必要以上に騒がなかった。
片や、俺の左に回った甘寧は、二人の猛将と相対した事で血を滾らす。
「へっへへ……「盲夏侯」に「不敗の徐晃」か。相手にとって不足ねぇな!」
朱桓に次いで配置に付いた彼は、得物の「鉄鎖」をブンブンと小回しし、激突の時を待つ。
今の今までが張り合いのない戦ばかりだった為、純粋に楽しいのだろう。
そして4ターン目。天候は雨。ソウソウ軍の兵数は47,850人から46,200人となる。
更に詳しく把握するなら、カコウトン隊は5,270から5,007へ、ジョコウ隊は3,922から3,805となり、士気も74から72へ低下。
戦をする上で、兵糧という名のオヤツが如何に重要な要素かを物語っていた。
余談だが、「ぱり○こ」煎餅がとても美味しいと感じるのは、俺だけだろうか……。
仮にソウソウ軍のオヤツがそれならば、ソウソウを見限って帰宅する兵士はもっと多い筈。という事は即ち、ソウソウ軍のオヤツは「ぱり○こ」ではないと断言できる。
それでは「一体どんなオヤツが支給されているのか?」という話になるが、そればかりはソウソウ軍でなければ分からない。
「……兎に角、今は当面の敵を迎撃すべきだな。殿路家秘伝の鉄壁戦術で、どんどん長期戦にしてやるからよ。さぁ来い! 来いよカコウトン、来いよジョコウ!!」
一度不退転を決め込んだ俺は、下手に動くことはしない。
地形的に不利な条件と分かりつつも、敵の接近を促す様に待機を選ぶ。
「ジョコウ隊、これより突喊する! 固き守りを突き崩し、我等が勝利の階となるのだ!」
すると防衛側大将のソウソウに次いで、兵種による行動順に従ったジョコウ隊が前進する。
※今回は「疾風」戦術ではない為、両軍の行動順は、侵攻側大将→防衛側大将→軽装騎兵→軽装槍兵→弓兵。
尚、同兵種の場合は知力値の高い順となる為、知力63のカコウトンより、知力69のジョコウの方が先に動ける。ジョコウだが徐行しないのだ。
「殿路秋渓よ、我が隊必殺の「猛攻」を受けてみよ!」
俺の部隊と肉薄したジョコウ隊は、山の上から戦法の「猛攻」を仕掛けて来た。
ここに両軍は刃を交え、一番槍はジョコウが飾る事となる。
そして俺は、それを正面から受け止める。
「はっはっは!! 無駄よ無駄無駄ァ!! トラップカードオープン!! 「ツッパリごっつぁん両国バリア」発動!! このカードは敵の猛将がなんか痛そうな技(戦法)を仕掛けて来た時、その攻撃を肉壁でなんとなく弾く事ができる!! 出でよ、守護力士!!」
伏せ表示にしておいたトラップカードを発動し、守護力士を召喚。
天よりドスドスドスドス!! と舞い降りてきた力士達が即行で万里の長城を築き上げ、ジョコウ隊の突撃を防御。被害を194ダメージに抑え、肉壁によって147人を帰宅(反撃ダメージ)させる。ごっつぁんです。
「……放浪軍頭領・殿路秋渓よ、失礼だが……今のは「武」か?」
「いや、俺もよくわかんね。……でもほら、“兵は神速を尊ぶ”って言うじゃん? 多分そんな感じ」
思わず唖然とするジョコウの質問に対し、思った事を正直に答えたものの、それでもジョコウには理解ができないようだった。
まぁ抑々にして、俺の行動に俺本人の理解が及んでいない件について。詳しくはうちの軍師である怜華に尋ねてほしい。つい先日、コヨエモンが放浪軍テレフォンを発明し、000-3594-5963と入力すれば繋がる様にしてくれたから。詳しくはそこに電話して、受付担当の全琮と全禕に聞いてくれ。
その一方、冷静沈着なジョコウに反して、彼の次に行動するカコウトンは激怒する。
「ふざけた真似をしよって!! 馬鹿にしているのか!!」
彼は山頂から動くことはせず、前のターン同様に「大喝」を発動する。
「馬鹿じゃねぇ!! 俺はアホだっ!!」
無駄よ無駄無駄。俺達に大喝は通用しない。
「……ちっ、馬鹿に何を言っても効かぬか!」
「だから馬鹿じゃねぇって、俺はア――」
「はいはい分かった分かった。敵の言葉に必要以上乗らないの。やけになって挑発状態になりかねないんだから、秋渓は」
カコウトンの次に行動する怜華が、俺を宥めると同時に「治癒」を発動。
兵数が多く減っている訳ではないが、俺の部隊は一応回復し、4,806人から4,932人となる。
そして今戦に於ける軽装槍兵中、最たる知力値を誇る怜華がターンを終了させれば、他の軽装槍兵隊に順番が回る。
とは言え、侵攻側である俺達は基本的に待機もしくは布陣改めで行動を済ませ、ソウソウ軍の方でも新たに索敵範囲内に現れた部隊はいない。
つまり、このターンではまだ、軽装槍兵の交戦準備は両軍ともに整っていないのだ。
そうなれば次は、軽装槍兵の次に行動できる弓兵の番となる。
「ホッホッホッホ! 敵が見えましたぞ! 一斉射撃開始!」
「いぃやがったなぁ! カコウ・ミョウサイ、疾風の連続射撃!! 間断なく撃ち掛けてやらぁ!!」
肉薄する必要のない間接攻撃型の弓兵。放浪軍では、やや火力不足が否めない弓兵。
そんな弓兵を率いて出現もとい攻撃してきたのは、旧コウチュウ軍の文官・キョセイと、カコウトンの弟に当たるカコウエン(妙才は彼の字)だった。
二部隊はカコウトンとジョコウの背後から颯爽と現れ、そこから弓矢の通常攻撃を行う。
キョセイは朱異隊に294ダメージを、カコウエンは俺の部隊に856ダメージ。
「弓の通常攻撃の癖に、ふっつうに痛いな。流石は「疾風の驍将」カコウエン!!」
「へっ、まだまだこれからよぉっ!! 俺の攻撃、どんどん受けてくれやぁ!!」
通常攻撃を流すことは、さすがに無理。こういう状況にあっては弓兵が有利であり、敢えて騎兵ではない所にソウソウの兵種編成の真髄が見てとれた。




