第二次譙攻略戦② 露呈
布陣を整え終えた俺は、敵の出現を待つのみとなり、3ターン目は待機。
侵攻側大将である俺の行動が済めば、次は防衛側大将であるソウソウの番となる。
ソウソウは下がっていく士気を奮わす為に、策略の「鼓舞」を使用した。
「我が兵達よ、よく聞けェ! この山を越えると梅の林がある! そこで好きなだけ梅の実をとり、飢えを満たすのだ!!」
兵士A「梅よりも普通にオヤツくれよ常考(常識的に考えて)」
兵士B「なんかなぁ……勝ち目なさそうだし、もうそろそろ帰ろうかな……」
兵士C「午後から親戚集まって餅パーティー開くんだけど、お前も来る?」
兵士D「マジで? アザーす。餅のロンで行きまーす。マジで神ッス」
残念な事に、ソウソウの激励は失敗した。
真夏の進軍時に兵士達が喉の渇きを訴えた際、梅の林を想像させる事で乗り切ったという有名な鼓舞だが……残念ながら兵士達が今欲しているのはオヤツ(兵糧)。水分ではないのだ。
「ソウ・モウトクとした事が……人の心を読み違えたか」
ソウソウは見えない所で悔しがっている様子。
如何な英雄と言えども、兵糧というオヤツがなくなれば脆いものよ。おそらくだが、これに懲りて以後は「鼓舞」をしないだろう。
「ふっふっふっふっ……聞いたか丁奉。ソウソウの奴は大層苦しんでいる様だぞ!」
「えぇ、正にその通り! これは思う以上に勝利が近いでしょう!」
俺は丁奉と共にニヤけて見せる。
お互いに、この流れなら勝利は固いと思ったのだ。
「油断大敵って言ったよね? まさかもう忘れた?」
だが、そんな俺達を戒める様に、怜華が前線に現れた。
彼女の部隊は、本陣に構える朱桓の後方だった筈。
「怜華が前衛に立つ……はっ! さては遂に、お前も乱撃道を学びに!」
「ち・が・う!! 何であんた等は何でもかんでもおかしくするのよ!!
――はぁ……私が来たのは、甘寧殿に頼まれたから」
「甘寧が? いったい何て?」
「秋渓の右側を徹底して意識しろ、左は俺が跳ね返してやる。……それとこれは私から……兵糧がなくなったとは言え、まだ3ターンしか経ってない。ソウソウ軍はまだ、其処らの軍以上の武力を持ってる筈。だから油断しないで」
「…………甘寧の兄貴が言うには、ソウソウ軍は進軍しやすい正面の道を選ばないかもしれない。怜華が言うには、ソウソウ軍はまだソウソウ軍である……という訳か?」
「甘寧殿の話に関しては多分だけどね。あくまでも可能性の一つ。……でもその可能性が実際に起きた場合、私達は裏を掛かれる事になる。例えば正面の森を進まず、山を越えて北側から迂回して現れるとか」
首肯する怜華も、甘寧に忠告されて気付いた様子。
ソウソウ軍が進んでくるであろうルートは、西側に広がる森だと思われていた。
というより、俺達から見て北西と南西に山脈があり、その二つの山々に挟まれた形で位置する西側正面の森以外は、進軍するに適さない険路なのだ。
然し甘寧が言うには、ソウソウ軍は敢えて山越えからの奇襲を仕掛ける……との事。
「ふっふっふ! 流石は軍師と怜華と甘寧と兄貴。一切の油断・慢心がないな。……だが、ソウソウなだけにそうそう心配する必要もないだろ。大体なぁ、超短期決戦を望む奴等が、態々山を越えてまで現れ――」
兵士E「敵襲ーー。敵襲ーー。てーき襲ーー。前方の山よりてーき襲ーー」
言うや否や、広域に及ぶ索敵範囲内に、ソウソウ軍の先鋒部隊が引っ掛かった。
何と! 俺の真っ正面に位置する山の頂きに、カコウトン(5,270)とジョコウ(3,922)の軽装騎兵部隊が現れたではないか!?
「ほぉぉ……! まさか、山の中を進軍してくるとはなぁ……! 「山騎」ではないにしろ、軽装騎兵ならではの機動力ってやつを活かした訳か」
大陸北方を支配下に収めると編成可能になる「山騎」。正式名称を山岳騎兵。
その兵種は極めて高い機動力に加え、名前の通り山岳移動を得意とする。
だが今のソウソウ軍は北方どころか中原すら支配していないので、当然ながら山騎は編成できない。去れど山騎に次ぐ軽装騎兵を選択した事によって、優れた機動力を出した様子。
「重装騎兵ではなく、あくまでも軽装騎兵! 防御力を捨てた神速の攻め特化って訳だ! 現状に適した兵種編成をする辺り、流石のソウソウと言える!!」
「敵を誉めてる場合? あの二部隊が山に布陣したからには、私達の陣形は丸裸になったよ」
普通の状況であれば、山を制する側が有利。だが今戦に至っては普通に非ず。
だからこそ常道に囚われる事なく、全軍を平野に配して待ち構えていたのだが……
(本っ当に、流石はソウソウ……!! 小手先の軍略なんぞ通用しねぇか!!)
「陣形を変える!! 横陣二段構え!! 俺が敵の注意を引き付けている隙に、怜華の支援が及ぶ範囲で二段構えの横陣を展開する!! 指示を聞き逃すなよ!!」
今から作戦を組み直す暇はない。
故に俺の経験則を以て、包囲殲滅の鶴翼から徹底守備の横陣へ改める。
不幸中の幸いは、今回は疾風戦術ではなかった事。
行動の順番が本来の兵種順による為、俺と怜華以外の仲間達が今から行動できるのだ。
「翼を閉じて壁を成す!! 甘寧は俺の左に、朱桓は俺の右に、丁奉は朱桓の右に回ってくれ! 魏延は甘寧の左後方で遊撃隊として待機! 凌操は甘寧の背後、朱異は朱桓の背後、太史滋は丁奉の背後、凌統は俺の背後を頼む!
――最後に怜華、お前はそこから動くなよ。俺がここで不退転を貫く限り、カコウトンの威圧はお前には届かない。だが今さっき言った通りに皆が布陣すれば、最後衛に位置するお前の支援は皆が受けられるようになる」
「えっ……ちょっと! まさか今の一瞬でそこまで考えたっての!?」
「数百を超える戦を経験したんだ(※ゲームしまくった)。今回みたいな状況は極稀でリサーチ不足だったが……受身に徹しさえすれば、これぐらいは対応できる。
――そして要は、俺が踏み留まれば良い!! 踏み留まればお前がカコウトンに気圧される事も、弓矢の集中攻撃を浴びる事もない。存分に支援してくれ。頼んだぜ怜華!!」
「あっ……は、はいっ!」
(さぁてと……俺の死地となるか、ソウソウ軍の死地となるか! おっぱじめようじゃねぇか!!)
布陣変更の状態
『 山 』
『 山 』丁 太
『 山 』朱 異
『カ ジョ 』 殿 統 怜
『森』『平』 甘 操
『森』『 平 』魏
『森』『 平野 』
『森』『 平 』
『森』『平』
『 森 』
※1 カ……カコウトン、ジョ……ジョコウ
※2 カコウトン及びジョコウの居る場所は山




