定陶山の戦い開幕!
「よっしゃぁぁーー!! やったるぜぇーー!! 疾風戦術で敵を突き崩せェーー!!」
「ウッホ! ウッホ! ウッホ! ウッホ! ウッホ! ウッホ! ウッホ! ウホォォォーーー!!」
開戦と同時に告げた俺の号令が全兵士の心に火を灯し、体を火照らせ、元から無い防具の類いを外すふりだけして、最終的に上半身裸となる。
(あぁ……そっか……うちの兵士って殆どが訳わからない元賊兵だもんね……)
これ戦争だよね、と怜華は言いたげだが、そんなの気にしていたらお腹が空いてしまう。
かの高名な用兵家も、「兵は胃袋で動く」と言っていた。
だからこそ俺は、腹が空くより先に一気呵成に攻め破る。兵站なんぞ知った事ではない速さで戦場を駆け抜けるのだ。そうすれば抑々にして兵站など気にする必要はないのだから(ホントに酷ぇ戦術だ)。
そして開戦と同時に味方部隊の士気は20上昇し、機動力に関しては普段の2倍となる。
これぞ疾風戦術! 「騎兵指揮」のスキルを有するが故に使用できる戦術であり、騎馬隊を編成すらできない放浪軍にあって不要スキルとなりかねないものが活きる時だ!
「さて! 記念すべき1ターン目は晴れ! 俺が一番手となって堂々と先駆けよう!!」
戦争形態はターン制であり、1番最初に行動できるのは侵攻側の総大将、即ち俺だ。
その次は防衛側の総大将のターンとなり、それ以降は基本的(戦術によって変化有)に兵種によって両軍合わせた行動順が決まる。軽装騎兵→軽装槍兵→弓兵→重装騎兵→重装槍兵と。
そして兵種が同じならば知力の高い武将が優先され、知力も同じならば兵数の少ない武将が優先される。
兵数も同じならば……流石にそこまでは知らないが、恐らくは侵攻側が優先だろう。
えっ、じゃあ知力も兵数も同じ武将が二人以上侵攻側に居たらどうなるかだって? …………ごめんなさい、流石にそこまでは分かりません。多分、五十音順になると思いマッスル。
ただし、上記の行動順は戦術が「通常」や「罠探」等の場合だ。
今回の様な「速攻」又は「疾風」の場合は、侵攻側総大将→防衛側総大将→侵攻側部隊の兵種優先順→防衛側部隊の兵種優先順という、侵攻側が先制攻撃を行える状態になる。
つまりは俺→リュウタイ→怜華→朱桓→甘寧→太史慈→敵武将1→敵武将2→敵武将3(防衛側は上記の行動順を参照)。この流れになるんだ。
話を戻して、俺はいきなり戦場の端っこに寄る形で斜めに進軍する。
「端じゃあーー!! 端じゃあーー!! 端を進むんじゃぁーー!!」
「ハッシ! ハッシ! ハッシ! ハッシ! ハシヲススメハシヲススメ! サケガノメルゾーー!!」
「ジュウガツゥハ、イックサデサケガノメルゾーー!!」
「サケガノメルノメルゾー! サケガノメルゾーー!!」
「うえぇーー!? なにそれ軍歌なのぉーー!?」
10月の進軍マーチ「オラは戦場で酒を飲むだ」陳留市場にて好評発売中!!
尚、宣伝大使とパッケージは我等が軍師・姫崎怜華…………全くもって酒と関係ねぇな。
「……ねぇ、甘寧殿。あれ、何なの?」
「ウヒャッヒャッヒャッ!! あいつ等はもう勝った気でいやがる! いんや、既に勝っている!! 勝ったぞォーー!! 勝ったぞォーー!!」
「うおぉーー!! 兄貴ィーー!! 勝った勝った勝ったァーー!!」
「まだ始まったばっかでしょ! 何処の地黄八幡よあんたら!」
地黄八幡・北条綱成!! 大将でありながら先頭を切り進み、「勝った! 勝った!」と言いながら敵を打ち倒していった日ノ本戦国時代を代表する猛将。五色戦隊「ホウジョウジャー」の黄色担当であり、総司令官・氏康の一族だ。
彼が3千人で8万近い敵と亘り合った事を思えば、こんな戦は既に勝っているも同然であり、そこに気付く怜華と甘寧の兄貴は流石…………いや甘寧の兄貴なんで知っての?
「ふぅ……じゃあ次は私ね。秋渓に続いて端を移動するよ!」
「ダイタブノノドシングチタレオ! イーワ!」
「ナカルエラモテシコイイコイイラタッバンガ!」
(あっ、ダメだ。やっぱり彼ら色々おかしい)
大将の次は知力チートの怜華のターン。
彼女も俺に倣って斜めに進軍し、戦場の端を移動する。
何故端を進むのかだが、その理由は至って単純。防衛側の敵は戦場の端に罠を仕掛けないからだ。これについては99%断言できる。
(何百回も戦争を経験したけど……味方AIが一度だけ端に近い所で引っ掛かったのを見ただけだ。「罠探」は高確率で罠を回避できるけど……機動力が大きく下がるから、AI武将が上司にならない限りは使った試しがないんだよなー)
AIが総大将の場合、プレイヤーが参謀ではない限り戦術はほぼ勝手に決まり、罠探戦術はその時ぐらいしか使用した事がない。
抑々にしてAIが大将の場合はどんな戦術にしようが、敵との戦力差が余程大きく優勢でない限り、高確率で敗北する。
その理由も至って単純。総大将が馬鹿みたいに騎馬隊で単騎駆けして敵の大軍の中に突っ込み、敵味方の援軍が到着する5ターン目ぐらいには壊滅して士気を大きく下げ、味方の部隊を状態異常に陥らせるからだ。
それ故に、このゲームではこんな造語がある。
「AIの味方総大将は高確率で敵のスパイ」、「総大将の騎馬隊突撃は敵への援護」、「知力108のショカツリョウでさえ総大将になれば馬鹿になる」…………等々。感動的だな。
「まぁ俺が総大将になったからには大船に乗った気でいてくれぇー……って、甘寧の兄貴がいつの間にか俺を追い抜かしてる」
「おぅ! そりゃ攻撃拠点からスタートのおめぇより、ちょっとでも前に出てる俺の方が早いに決まってらァー! このまま敵陣に一番乗りーってな!!」
気が付けば、甘寧隊は俺より大分前に出ていた。
元々のスタートが俺より前だった事もあるが、それでも兄貴が俺の速さに匹敵する進軍速度を誇るのは、偏に「槍兵指揮」のスキルを持っているからだろう。
指揮系のスキルは該当する兵種を率いる際に、機動力が上昇する。「槍兵指揮」ならば槍兵の機動力が、「騎兵指揮」ならば騎兵が、「弓兵指揮」ならば弓兵がというように。
ただ前述のように放浪軍は騎兵を編成できないので、主に役立つのは「槍兵指揮」と「弓兵指揮」。更に言えば弓兵の火力は高が知れており、防御力も低く、軽装槍兵よりも行動順が遅いので、放浪軍では実質槍兵一強となる。
因みに「槍兵指揮」と「弓兵指揮」が活きる戦術は守備側でしか選択できず、守る土地なんて何もない荒らし専門の放浪軍では選択の余地すらないのだ。
そして戦争2ターン目。天候は雪。俺達は変わらず戦場の端を移動。
「今回の戦場は端が平地だから雪でも移動がラック楽ー」
「へっへっへ! 大将さんよ、あんま油断してんなよ!」
「大丈夫大丈夫。まだまだ敵の索敵範囲外だからよー」
3ターン目。天候は変わらず雪のまま。
「補給限界線まで来たぜ。俺はこっから北に上がるつもりだ!」
「了解! 次のターンにでも敵の姿を捉えられるだろうから、挟撃頼んだぜ兄貴!」
甘寧隊は補給限界線を目印に一旦停止。俺の部隊とは3ターン移動のうちに結構離れていた。




