作戦会議
280年10月 陳留 3回目の軍議
太史慈の登用以降、3ヶ月間に亘ってひたすら募兵と賊討伐を行った現在、放浪軍の物資は金97に兵糧10569、兵士15046となっていた。
ここで注目する数値は兵士数。コツコツ集めた末に1万5千を突破して、漸く戦らしい戦ができるようになったのだ。
では金と兵糧は? と思うだろうが、放浪軍が戦をするには両方とも不要だ。
厳密に言えば兵糧は必要だが、現在の兵力を総動員したとしても3千程度あれば1回ぐらいの戦争は行える。放浪軍が一度に投入できる最大兵数5万人(1部隊につき5千人)で戦争をしたとしても、兵糧が1万もあれば充分なのだ。ましてや兵器どころか重装歩兵すら編成できない放浪軍。金に関しては言わずもがなで消費しない。
改めて言えば、放浪軍では武将に対するお給料が発生しない(相変わらず酷ぇ軍だ)。いや、実際には給金は払われているが、放浪軍の懐から金が出る訳ではなく、何処からともなく生み出されて気付けば武将の懐に収まっている謎仕様(ホントに酷ぇ軍だ)が発生している。
そして今回で軍議3回目。次のターンあたりから敵勢力が動く事が予想される為、機先を制するべく俺達は、今ターンで戦争に踏み切った。
今は丁封と全端が集めた情報を元にした作戦会議の真っ最中。
司会及び解説は軍師補佐の朱桓が務めてくれている。
「陳留に隣接する敵勢力は4つ。西のカシン、北のカンフク、北東のリュウタイ、東のトウケンだ。カシン軍は総兵数が4万近い上に、陳留から攻めれば虎牢関で止められる。現状戦力でこれを打ち破る術はない。故に奴等は侵略候補から除外される」
カシン。彼はカシン精肉店の店長であり、漢王朝の大将軍も兼務している。勢力としては皇帝を抱えている為に外交が有利に働き、言わば官軍だ。
他の勢力に比べて初期国力が高く、戦争に特化した武将は少ないながらも鉄壁の要塞・虎牢関に守られている。チートスキルを使って雷を落とせば簡単に陥落させられるが、怜華でさえもそのスキルは持っておらず、仮に持っていたとしてもそんな至極詰まらない戦法は最終手段だろう。
そこへ甘寧の兄貴が一言添える。
「一番最初に落とされる都市が洛陽(カシン精肉店)ってのも笑えるけどな! 皇帝さん開始早々にボッチになる訳だぜ」
「まさかの漢王朝滅亡がスタートとか、それはそれで面白そうだな!」
兄貴が言うように、漢王朝の首都・洛陽(陳留の西隣)をいきなり攻め落とすのも面白そうだ。
「おぉのれぇトウタクゥ! 漢十二代歴史が燃えるゥ! 住ゥみ慣れた家が燃えるゥーー!! ってな」
「ちょっ! 兄貴なんでそのネタ知ってんだよ!」
兄貴の弁舌は尚も続き、炎上音頭までも披露する。パーティー中じゃない今が悔しいぜ!
「……すまんが、洛陽攻略は諦めてくれ。流石に無謀だ」
「ウィーーッス!」
現実を見る朱桓に制止され、俺達は談笑を中断して軍議に戻った。
次は怜華が、今後の方針を交えて説明する。
「……話を戻して、西が無理なら残るは3都市だけど、ここでもう1つ候補が減るよ」
「鄴のカンフクかぃ?」
戦略脳に切り替えた兄貴がすかさず答える。怜華は大きく首肯した。
「うん、その通り。カンフク軍の兵数は1万5千と同程度だけど、あそこは洛陽に次いで都市防御力が650と固いの。それともう1つ、何よりも面倒な存在がいてね……」
「チョウコウ、ですわね」
次は魏延が答えた。彼は今しがた名の上がったチョウコウとは幾度となく対戦しており、その手強さを俺達の中で最も知っているのだ。
「彼の武力はわたくしとサシで殺り合える程に高く、決して馬鹿でもありません。そんな彼に防御の固い砦を守られては、消耗戦で此方が間違いなく負けますわ。……かく言うわたくしも、何度か彼の防陣を目にし、その度にしっぺ返しを受けました。避けるのは英断ですし…………それと彼には暫くの間ですけど、エンショウ軍に睨みを利かしてもらわねばなりませんからねぇ」
「うん、カンフク自体はどうとでもなるけど……問題はチョウコウが前線の陣頭指揮に当たる事と、カンフク軍の北に控えるエンショウ軍が厄介な事」
都市の防御値が高い程に、合戦の際に出現する前線砦は数を増して堅固になる。
攻撃側はその砦の占拠が重要であり、守備側は余程の戦力差がない限りは必ずと言っていい程に砦に布陣する。戦力差の例を上げるなら、攻撃側が5万で守備側が1万とかその辺りだ。
そして名将チョウコウが砦に布陣する確率は極めて高い。特にカンフク自身の能力値が低い為に、彼は戦争に参加せずチョウコウ達に任せるという事例が何度かある。
魏延と同じ武力90に加え、知力だって66もある。
更に言えば、鄴にはソジュという一級軍師も居る。正に知勇が揃っている状態なのだ。
そんな彼等を相手にする事は避け、彼等以上の戦力と国力を有するエンショウ軍(カンフク軍北隣)の台頭を牽制してもらうべきだった。
「では残る2都市……リュウタイ軍の濮陽か、トウケン軍の小沛ですか……」
「如何にも。だがそれも、半ば決まっている様な状況だ」
全琮の呟きに朱桓が返す。やっぱり、二人は揃って立つと格好良いな。
「小沛の防御力は126。4都市の中では最も低く、守備兵も1万3千と少ないが、東の下邳にはトウケンの本軍3万6千がいる。これが援軍に来れば、我々は間違いなく敗北するだろう」
「小沛の守りに就いている武将も油断できる様な人物じゃない。知将のチンケイに、知勇兼ね備えたチントウ、それに武勇に長けたゾウハ。援軍到着前に彼等を倒す事は現状の戦力だと厳しいよ」
侵攻戦の場合、都市所属の武将が率いる部隊を全滅させれば、援軍が残っていようが勝利となる。援軍は合戦開始から5ターン経過で出現し、そこから2ターンもすれば砦に到着する。
一方の攻撃側は超最短でも3ターン目ぐらいで砦に迫り、そこから戦闘に発展する。
つまり、二流ながら侮り難い敵の三将を2~3ターン余りで全滅させなければ、此方が全滅する危険に曝されるのだ。
「なら、記念すべき第1戦はリュウタイ軍の濮陽だな!」
「うん。リュウタイ軍の領土は1つだけだから援軍はないし、兵数は15800、城の防御力は260、危険な武将も居ない。苦戦する事はないと思うよ」
リュウタイ軍は三流武将が殆ど。例え兵数が同じでも、凄まじき筋肉集団である俺達に敵う謂れはない。
尤も、これで勝てなければ全勢力滅亡ENDなんて無理だろう。
「人選は誰だ! 誰が出る!? 配備兵数はどれほどだ!?」
合戦に息巻く俺を見て、怜華は微笑を浮かべながら陣容を述べる。
「秋渓と私は大将と参謀で決定。それで先陣には甘寧殿。遊撃部隊に朱桓殿。秋渓の護衛には最も固い太史慈殿。兵数は各々3千ずつで兵種は全部隊が軽装槍兵。…………他のみんなには留守を任せる様で悪いけど……1部隊毎の兵数をこれ以上薄くすれば簡単に壊滅しかねないから……ごめんね……」
「何の何の、気になさるな怜華殿。我等はここに残り、武運を祈っておりますぞ!」
出番のない仲間達へ謝罪する怜華。
本当であれば放浪軍頭領である俺が謝るべきところを、彼女にさせてしまった。
だがそこを訂正するより先に、丁奉が怜華にフォローを入れる。
そして彼に倣って他の仲間達も了解を示してくれた。
「皆、すまないな。代わりに文句がない程の大勝利を収めてくるから、戻った時に備えて大宴会の準備をしていてくれ!!」
「おおぉっ!!」
皆の想いを無駄にしない為にも、この戦絶対に勝つ!
俺を含む出陣組は闘志を滾らせ、陳留を出陣。リュウタイ軍が治める濮陽へ侵攻した。




