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その男、絶賛不満中


 丁封加入を祝って豪華な夕食を作らんとした怜華は、残り行動力が50の状態で今回のターンを終了しようとした。


「軍師殿! 及ばずながら私も協力致します! 先ずはこれ! 農民の方々から頂いた食料です!」


 スキル「農民の思い」を持つ諸葛靚(ショカツセイ)は農地に赴いた際に食料を貰う事があるらしく、今日頂いた沢山の野菜達を怜華に献上。慣れた手つきで下処理まで済ませていく。

聞けば野菜のお礼を畑仕事で返してきたとの事。純粋な性格と鍛えられた肉体を遺憾なく駆使した彼に、感謝をしながら食べなければ。


「…………私も……食べるだけは遠慮する……。食材はこの通り……商人との交渉で……大分安くしてもらった……。遠慮なく……使ってください」


 「商人魂」と「弁舌」のスキルを持つ顧雍は、市場にて肉や魚を格安で購入したらしく、食事のレパートリーをかなり広げてくれた。


「ありがとう二人とも。仲間が多くなって大変に思ってた所だよ!」


 顧雍と諸葛靚。二人が今日の夕飯作りを手伝ってくれるそうだ。


「悪ぃな軍師ちゃんよ。こうなると俺達、基本役立たずなんだわ」


 丁奉、諸葛誕、朱桓、全琮、甘寧、凌統、丁封、俺を代表して甘寧の兄貴が詫びる。

揃いも揃って大食漢達は、バリバリの戦闘員なのだ。


「気にしないで。作るのは好きだし、沢山食べてもらうのは嬉しいから」


「何とお優しい…………皆様方! 我々はせめて、軍師殿を応援致しましょう! せーのぉ――」


「でもね、脱がれると単純に熱いの! 夕食できるまでラムちゃんと遊んであげて!」


「メェーーー!!」


 怜華の笑顔に当てられた丁奉が立ち上がり、彼に倣って皆が一斉に熱気立たせようとするものの、怜華は大根をズバン! と両断しながら警告。

最近構ってやれなかったラムも遊んで欲しそうに鳴いた為、俺達はラムの毛繕いやら、撫で撫でやら、小屋の掃除やらに従事する事になった。


「…………おぉぅ……皆どうしたのだ? 今日は、ラム殿の誕生日か何かなのか?」


 良い歳した男達が揃いも揃ってラムの面倒を見ている所へ、朝から行方知れずだった凌操が帰って来た。

ラムを軽んじている訳でもなく、動物だから二の次にしているとかは一切ないのだが、戦力外通知により追い出された姿を見られて……純粋に恥ずかしかった……。


「えっと父上、今まで何処に行って――えっ!? 貴方はっ!?」


 凌操の背後に目をやった凌統が驚き、俺も逸らしていた視線を改める。


(うわぁーお。おやっさんドストレートに凄い人連れてきたぁー)


 凌操の背後には、深紅の大鎧に身を固めたガチガチ筋肉の武将がいた。

彼の表情は誇らしげな肉体に反して暗く、会釈を兼ねる様に頭を垂れていた。

これでは折角のいぶし銀が台無しだと思った俺は、二人の出迎えを兼ねて早速声を掛ける。


「お帰り凌操! それと、貴殿はリュウヨウ軍(ソンケン軍東隣)のタイシジ殿だな! 噂はかねがね聞いている! 会う事ができて光栄の極み!」


 そう、凌操が連れてきた人物とは孫呉を代表する猛将の一人・タイシジだ。

恩義に厚い性格で、老母が世話になっている人物がイエローハチマキ集団こと黄巾党に包囲されて危険だと知るや、遥々北の大地より駆け付け窮地を救う程の渋い漢。


歴史上に於ける彼の所属勢力を問われれば、それは孫呉に他ならない。

然し、この280年オマケシナリオでは残念な事に、彼の所属は孫呉以前のリュウヨウ軍であり、甘寧同様に上司との相性が非常に悪かった。


「殿路殿に紹介したくて連れてきた。今宵の宴に彼を同席させても宜しいかな?」


「勿論だとも! 凌統、悪いけど怜華達にお客さんが来たって言ってきてくれるか?」


「勿論だともっ!」


 味方の武将は相性値が近い他の武将を紹介の為に連れてくる事がある。

そこに軍閥や立場や発見未発見の有無は関係なく、時にはこのように敵勢力の武将を紹介してくれる事もしばしば。


(まさか勧誘登用を狙っていたタイシジがピンポイントで現れるとは思っても見なかったけど……あの出来事に比べれば驚く程ではないな。平常心平常シシシシ……!)


 あの出来事とは、以前リュウビをプレイしていた時の事だ。

条件を達成すると三連続で発生するイベントにより、かの大軍師・ショカツリョウを仲間にできるのだが、本来リュウビは三度目の訪問にして最後のイベントで漸くショカツリョウと面会できる。

…………筈なのだが、そのイベント発生前に何をトチ狂ったのか、イベントの仕掛人たるJO・SYO君が普通にショカツリョウを紹介してきたのだ。


JO「リュウビ様、今日は紹介したい人物がおります」

ショ「初めましてリュウビ殿。私はショカツリョウと申します。以後お見知りおきを」

リュ「おお、それがしはリュウビと申す」


 というやり取りがあった数ヶ月後にイベントが発生して……

「あなたがショカツリョウ先生ですね。私はリュウビと申します。漸く会う事ができて望外の喜びです」

……となる。いやお前ら、普通にリュウビ宅で面会して意気投合して長い時間話してたからな?


 とまぁ、時に暴走する武将紹介ではあるが、これの利点は何と言っても「行動力を消費せずに紹介した武将と、された武将との友好度が大きく上昇する」だ。

そして現在の状況を鑑みるに、凌操がタイシジとの架け橋を担ってくれたのは殊更大きな効果だろう。

何せ俺や怜華がタイシジを仲間に加えたいと思っている矢先なのだから。


「どうぞタイシジ殿。先ずはお茶でも飲んで気持ちを大きく持ってください」


「これは……かたじけない」


(…………なぁ怜華……あれ、たぶん酒じゃねぇ?)


(う……うん。甘寧殿がニヤニヤしてるから……間違いなく酒だと思う。色は確かに緑色してるけど……たぶん清酒に茶を混ぜてるよ)


 食事の準備が整ったところで皆が食卓を囲み、紹介人の凌操が茶と称して豪酒もとい豪酒の茶割を勧める。


 浮かない表情のタイシジは何か深刻な悩みがある様で、差し出された大椀の茶(?)を、大して疑う素振りも見せずにグイッと飲んだ。

いや、一気呑みさせるのは流石にやべぇだろ凌操のおやっさん。


「くそぉ、キョウめぇ……! 私は終始孫呉だからリュウヨウ軍とは無縁でぇーす! なんて言ってさっさとソンケン軍の登用に応じよって……この薄情者めぇ……!」


 そして簡単に酔い、堅物故に明かせない悩みをオブラートなしでゲロッた。


「ほぅほぅ、息子のタイシキョウ殿はもうソンケン軍に寝返ったのですか。それはそれは寂しくもあり、腹立たしくもありますなぁ! さぁどうぞどうぞ!」


 凌操は絶妙な相槌を打ちながら、更にタイシジの椀に酒を注いでいく。


「うわ、本当だ! 軍議1ターン目にして早くもタイシキョウがソンケン軍所属になってる!」


(凌操殿……絶対に事情を知った上でやってるわ。……確信犯よ……)


 ラムに情報画面を開いてもらい、まずはリュウヨウ軍の陣容を確認した。

偵察を行っていない為、詳しい情報は不明だが、都市に誰が居るのかだけは判明する。それでタイシジ親子の名前を探すものの、結果はタイシジがゲロッて凌操が補足した通りだ。


息子・タイシキョウは、既にリュウヨウ軍を抜けていた。抜けていて、ソンケン軍の情報に切り替えれば、そちらに異動していた。


「確かにぃ……キョウに関して言えばリュウヨウ軍より、まだソンケン殿(パパの方)が馴染み深いかもしれませんよぉ! でもね凌操殿! 拙者は義理固い漢で通しているんです! 例え馬が合わずとも、リュウヨウ殿を主と崇めて1日でも禄をもらえば、それは忠義を示すべき相手に他ならない訳ですよ!」


「おぉう! 如何にもそのとぉーり! タイシジ殿の気持ちはよぉく分かりますぞ!」


「犬も三度飯を貰えば主に尽くすとか言いますが……拙者は一宿一飯の恩にですら応える漢なのです! リュウヨウ軍の軍狗だなんだと、余所者は拙者の事をそう言うみたいですけど、違いますからね! 犬なんかと比べないでくださいよ!」


「些細な恩でも忘れない漢・タイシジ! いやはやカッコいいですぞ! 同じ漢として尊敬致しますぞ! 今宵はもっと無礼講で参りますぞ!」


「おおぉぉぉーー!!」


(……なぁーんか、嫌な予感がするなぁー)


 殆どの者が凌操のおやっさんに乗せられる中、怜華と顧雍の二人は、おやっさんに何かしらの裏若しくは策があるのだと看破した様子。


「ふぅぅー! もう……飲めません! 拙者……武勇に長けた豪傑……としては自信があるんですが……酒は……もう飲めません……」


 そして、凌操が狙ったそれは、存外早くに訪れた。

俗に言う泥酔状態、俗に言う何を頼まれても断れない嬉し素敵な状態だ。


「タイシジ殿、お近づきの記しに貴殿のサインを頂きたい! この色紙にサインを下され!」


 意識を失う一歩手前で、凌操がすかさずアレを出す。確信犯だぜおやっさん……。


「うっく! サインなんてお手の物……! ふっふぅー……これでいいですふぁ?」


 殴り書きの字ではあるが、凌操が用意した何やらアレなアレに、「太史慈」の名が刻まれてしまった。


「おぉう! タイシジ殿! 感謝致しますぞぉーー!!」


 これからはもっと無礼講だぁー、という凌操の熱く激しいハグを受けるタイシジ。

彼自身が酒に弱いのか、酒に泥酔促進薬的な何かが混入されているのかは知らないが、兎に角タイシジはぐでんぐでんに酔っ払って羽目を外し出した。


 酒が飲めずにシラフ状態である俺と怜華と顧雍は、凌操が不意に手放したアレを見る。

それは「リュウヨウ大っ嫌い同盟 署名用紙!」……という形式の紙であり、名誉会長の欄には「太史慈」と書かれていた。


「なぁ怜華……これ使えばリュウヨウはタイシジを解雇するんじゃ……」


「そうだね。タイシジ殿にはすんごい悪い気がするけど……最高のアイテムだよ……これは」


「……凌操殿……以外と……姑息」


 宴会に乗り損ねた俺と怜華と顧雍は、揃ってタイシジを気の毒に思い、揃って凌操の手慣れたやり口に唖然とした。


諸葛靚(字:仲思(チュウシ))

諸葛誕の息子。父が司馬一族に反旗を翻した際、援軍を求めた呉へ人質として送られ、そのまま呉の武将となる。

呉では厚遇され、何と280年の晋軍侵攻(呉滅亡)の時には、大司馬(国防長官)・副軍師の地位にあって古巣勢力の迎撃を任されている。この事から、彼が如何に呉の皇帝に信頼され且つ期待されていたかが窺い知れる。

呉の滅亡後は晋帝・司馬炎の旧友ということもあり、助命された上に侍中(皇帝の側近)に取り立てられそうになった。「そうになった」である訳は、この厚遇話を諸葛靚本人が断ったからである。


物凄くマイナーな武将ではありますが、マイナーでありながら彼ほどに紹介できる内容がある武将はそうそうおらず、ウィキペディアを見ていただければ彼の凄さがお分かりになると思われます。

ただ一つ……戦争だから仕方ないとは言え、降伏した七千人の敵兵を残らず生き埋めにするよう進言したのは、ちょっとサイコすぎな気が……プチ白起さん(40万人生き埋めした常勝将軍)みたい


ゲーム内では263年に呉軍の武将で登場。それ以外のシナリオは280年のオマケシナリオのみ。

相性値がまんま呉軍のそれであり、父の仇が魏である事も影響して、いきなり高い忠誠値を誇っています。

武力67 知力55 政治52 魅力68

スキル……農民の思い(開墾の仕事で成果を上昇させる)、水軍指揮

戦法……乱撃Lv2 火矢Lv1 水禍Lv2 奇襲Lv2




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