顧雍
甘寧、凌操、凌統、顧雍、諸葛靚の加入を祝うべく、陳留に戻った俺達は全琮が用意してくれた大パーティーを開催した。
「俺も少しだけ酒を……」
「待て待て。大将さんは未成年だろ。大人になる前から飲み始めると、どっかの酒乱君主になっちまう……ぞっと!」
「…………だからと言って、何故私に寄越されるのだ」
年齢的に酒が飲めない俺が盃に手を伸ばすと、此方の世界でもお酒は二十歳からのようで、すかさず甘寧が阻止。濁酒の満たされた盃を右隣に座っていた朱桓に流す。
「へっへへ、俺は自分の金じゃなけりゃ浴びるほど飲まないって決めてんだよ。んで、大将さんと軍師ちゃんは飲んじゃいけねぇしな。それにこの御仁も酒が飲めねぇからよ」
言って甘寧は、左隣に座る顧雍を親指で示す。左が駄目だから右なのだ。
「…………飲めぬ…………」
服職人の時とはまったく別人の様に寡黙な顧雍。
彼曰く「自分不器用です」との事だけど、明らかにギャップありすぎるだろお前。
「そう言えば顧雍殿はお酒を好まれませんでしたね」
「…………殿から嫌われる……程に…………」
思い出した丁奉に対して頷く顧雍。彼はソンケンから言われた言葉を思い出す。
「…………私と一緒……つまらぬ……と…………」
それはソンケンに仕えていた時の話。
滅多に酒を飲まず寡黙な顧雍は、宴会にあって黙々と食べるだけであったという。
大の酒好きにして、甘寧と丁奉と朱桓と全琮と凌操と凌統曰く「酒乱君主」たるソンケンは、そんな顧雍を見て宴会中に萎える事がしばしばあったとか。
呉の筆頭文官・チョウショウ爺といい、二代目丞相の顧雍といい、ソンケンはどうも上位文官とは気が合わなかった様だ。
それでもソンケンが顧雍を信頼していたのは確かな事実で、そこは純粋に凄い点だ。
飲みニケーションを多用する上司としては顧雍の性格がつまらない筈なのに、それでも彼を嫌う事なく臨終の際まで彼と彼の一族を強く想っていたのだから。
(ソンケンの器と顧雍の実力が、そうさせたんだろうなぁ)
そう思えばこそ、俺もソンケンに負ける訳にはいかない。
仲間となってくれた顧雍の期待を裏切る訳にはいかないのだ。
「よぉーし! では一緒に食べよう! ひたすら食べて朱桓をベロンベロンにさせよう!」
「だから……何故私なのだ」
食べる者は食べる、飲む者は飲む、ただそれだけだ。
朱桓は「ワケ分かりまへんで秋渓はん」とばかりに置かれた盃を睨むものの、結局飲む。良い飲みっぷりだ、感動的だな。
「…………では……遠慮なく……」
顧雍も俺の誘いに乗ってくれて、食べ専となって箸を進める。
食が細いと思っていた彼だが、文官でありながら武力52を誇るだけあってかなり食べた。
逆に、これといった武勇伝がないにも拘わらず武力が52もあるのは何故なのか。
彼のお師匠様に当たるサイヨウ爺さんなんて武力16。彼と共に呉の政権を支えてきたチョウショウ爺はもっと低い武力13(当ゲームの後継品では武力4)である。仮に一騎討ちしたら一撃で撃破できるぐらいの開きがある。
「…………なぁ、顧雍って何で武力が高いんだ? 並の文官じゃ歯が立たないぐらいだよ? 仮に文官武闘大会でも開いたら結構勝ち進めると思うよ?」
気になったので直接聞いてみる事にしたが、俺の脳内には集められたヒョロヒョロ文官達が筆で叩きあって戦う中、顧雍を含む比較的武力の高い文官が刀で切りかかる図が浮かぶ。まじで容赦ねぇっす顧雍さん。
そして当の顧雍さんの返答がこちらっス。
「服職人として極上の一品を仕立て上げる。それが私の務めにして責務! 素材集めの為に日夜を問わず狩りに赴き、大陸中の山海を渡り歩いて今日も今日とて討伐依頼を繰り返してきた故に、この肉体を手に入れました! いざご覧あれェ!!」
「おおおぉぉぉ!!」
服の話題となって熱を帯びた顧雍。
別人格を顕した彼は服を脱ぎ、文官に似合わぬ肉体美を披露する。
「流石は呉国丞相! そこいらの文官とは訳が違うな! どれ、私も一つ脱ごうではないか!」
「おぅーしやれやれ朱桓! おっ! おおぉ!! いよっ、流石は朱桓! 古今稀に見る漢前!!」
宴会芸の様にポーズを決める呉国丞相に当てられた酔っぱらい状態の朱桓が、怜華の左隣で上半身裸となって素敵な肉体を顕にする。
「では私も皆様に応えましょう! いくぞ靚!」
「はい父上! フゥンッ!」
今度は怜華の右隣に座る諸葛誕と、もう一席右隣の諸葛靚が脱ぐ。
ここまで来れば後は言わずもがな。やぁや我こそは筋肉! 我こそは漢! 遠き者は音に聞けー! ……と名乗りをあげ、怜華と全琮を除いた俺を含む皆が漢祭りを開催し――
「熱苦しいわっ!!!」
「ぐはあぁぁーー!?」
仲間内で最も武力の低い怜華が沈静に当たり、全琮が荒ぶる彼女を宥めた。
「ふしゅぅーー!! …………じゃ、私は屯所に行って治安の仕事してくるからね」
「ぐんしどのいってらっしゃぁーい」
宴もたけなわ。歓迎パーティーが半強制的に終わり次第、怜華は全琮と共に屯所へ向かう。
何でも陳留の治安が著しく低い為に、治安の仕事をしたら賊が発生するかもしれない(賊は治安の仕事中に発生する災害)との事だった。
ボコボコにされた(特に俺が)俺達はみんな仲良く手を振って、怜華と彼女に付き添う全琮を見送った。
そして軍師殿の予想は見事に的中する。
治安値54(Max100)という低さが影響して3720人の賊兵が出現し、怜華は一回目の討伐で440人の賊兵と金9と兵糧7を手に入れる。
「もう一回行くよー!」
二回目の討伐では440人の賊兵と金4と兵糧19を手に入れ、都市の治安値が58に回復した所で、彼女は今回のターンを終了した。
「それにしても、何でこんなに治安が悪いんだか」
ふと思って呟いた俺に、すかさず甘寧が答える。
「徴兵のやりすぎだろ。エンショウといい、ソウソウといい、奴等は食料生産量を無視してでも兵を集める事が好きだからな。……逆に言うと、もうじき動くだろうぜ、大将さんよ」
「成る程な。ゆっくりもしていられなくなったか」
甘寧の言う通り、各勢力が着々と軍備を整えていた。
その証として、徴兵によってもたらされるデメリットが、全国で頻発しているのだ。




