オォ? ガン垂れてんじゃねぇよ! 飛んじまうぞ、俺が
2020/05/09
saikinn pasokonn okasii desu huguaidarake
hiragana hennkann dekimasenn
syuusei simasunode toukou hinndo osokusimasu
goryousyou kudasai
怜華をも一撃で納得させる知能派武将・顧雍を仲間にした俺達は、陳留に戻って大パーティーに興じるべく、ウキウキ状態で呉の城門を潜ろうとした。
「っとぉ! あれはゼンイではないか!? おーいゼン――」
その途中、ふと城壁の上に目を移した時だ。
以前、凌統と狩りに出掛けた際、呉の郊外で出会った全琮の孫のゼンイそっくりな後ろ姿を持つ男が城壁上に立っていたのだ。
「ア゛ァ゛!?」
「――イーー。…………いぃ……?」
……だが、全く同じ赤の鎧と、全く同じ身長や体型と、全く同じポニーテールをしていながら、俺の呼び掛けに応えて振り向いたのは全くの別人であった。
お前どうしてそうなったと言いたくなる程、顔に大量の傷痕を持ち、超極悪な面を浮かべ、眉毛すらなく、言葉とともに顔に帯びたオーラだけが荒々しい。
顔意外がゼンイと瓜二つなのに、顔だけで天使と悪魔ネタができそうな程の人違い、いや面違いだった。純粋に恐ぇ。
「…………ごめんなさい。人違いでした」
「アッアアァ!? 人違いな訳あるか! 今ゼンイっつったろ! それはぁ………………」
極悪面のゼンイもどきは前屈みの姿勢となると同時に丹田に力を込め始め、長い溜め時間の後に黄金のオーラを放って爆発する。
「うぉれ様の息子だァァーーー!!」
大空に向かって吼えたゼンイパパ、即ち全琮ジュニア。
彼が放つ凄まじい闘志の渦が絶大な衝撃波となって周囲の衛兵を軽々と吹き飛ばし、城壁の上に黄金の小型竜巻を生み出した。
その衝撃を間近に受けた髪留めは真っ先に弾け飛び、解放されたロン毛は下から巻き上がる旋風に従って激しく逆立ち、正に怒髪天を貫く様相へと変貌させる。
「うぉれはおめぇを知っているぞォーー!! 殿路秋渓だなァーー!!」
爆発した彼の闘志が彼の声を重複させ、自然と間延びする様に聞こえてくる。
気合いによってもたらされる、セルフエコーと言えば分かりやすいだろうか。
俺は彼の闘志に、すかさず上半身裸となって応え返す。
「おお如何にもその通り!! 最近放浪軍を結成したばかりの殿路秋渓と申す!!」
「やはりそうかァーー!! うぉれの爺と息子と、そこの凌統から話は聞いているゥーー!! お前は全ての勢力に戦いを挑んでこの大陸で戦いを起こせないようにするらしいなァーー!!」
「その通り! 俺は、いや俺達は! 全ての勢力を打ち破る!!」
俺の決意表面を聞いたゼンイパパは満足そうな悪人笑いを見せた後、ゼンイそっくりな背中を見せて親指を立てた。
「その道は長く険しく先が見えねェーー!! うぉれでも見えねェーー!! くれぐれも気を付けるんだぞォーー!! グッドラァッグゥーーー!!」
そう言い残したゼンイパパは城壁の上から飛び上がり、遥か彼方の遠方へ飛んで行った。
ゴゴーー!! とか、キーーン!! とか、シュゴーー!! とかではなく、シュワァッーー!! というどうやったら発生するのか分からない効果音だったが、それが妙にマッチングしていた。
「カッケェーー!! ゼンイの父って言ってたな! って事は彼はゼンタンか!?」
悪人面に似合わぬ情熱と覇気を持っていた男……ゼンイの父と言えば、そうゼンタン。
彼からのエールを受けた俺の心は、不思議と熱く燃え上がっていた。
「はい! 彼がゼンタン殿です! 全琮殿の息子でゼンイ殿の父親です!」
どうやら凌統もゼンタンの熱に当てられた様子。
纏っていた紅の戦衣を脱ぎ捨て、爽やかな顔に似合わずバキバキに鍛えられた肉体を余すことなく示し、溜め息混じりに服を拾ってくれる怜華に気付くことなく――
「フワアァァーー!! おぉう息子よーー!!」
「グハァァーー!? 油断大敵大敵は直ぐ傍にありィーー!!」
同じく熱に当てられた凌操に殴り飛ばされた。
これが彼等親子のコミュニケーション。型破れを通り越して尚、伝わるものがあるのだ。
「……おっと、ゼンイに話し掛けて面識を持った為か行動力を消費したな」
「んじゃ、大将さんはここまでにして、軍師ちゃんに交代するかい?」
「そうだな。はい怜華! バトンターッチ!」
残り行動力が14となった俺は甘寧の勧めに従って怜華にターンを回す。
「……凌統殿と凌操殿を見て思ったんだけど、ちょっと寄り道させてもらえる?」
ターン交代に伴って、怜華は脱ぎ捨てた俺の服を手渡しがてら提案した。
「構わないけど、寄り道って何処に……」
「今ここには諸葛誕殿が居るでしょ?」
「はい諸葛誕です! ここに居りますぞ軍師殿! フンフンッ! フンフンフンフンフンッ!!」
名前を挙げられた諸葛誕もゼンタンの熱に当てられており、服を脱いではいないが、その場で何やら筋トレに勤しんでいるようだった。
「いや……違う! あれは筋トレに見立てた機織り……いや筋トレだ! いったい何を作って……な、何ィ!? この短時間でエプロンドレスを作っただと!?」
アシスタントに顧雍を据えた諸葛誕は、目にも止まらぬ早さで乙女チックなカモシカ柄のエプロンドレスを作成。超高速で足と手を動かす玄人技「機織りエクササイズ」の先駆け者を体現したのだ。
「それを怜華にプレゼント! あんたやっぱり漢だぜぇーー!!」
「諸葛誕殿! 貴殿の男気、この凌統にも伝授してーーグッパ食中毒ゥーー!?」
「馬鹿もーん! 教えを請うばかりでは成長せんぞ息子よ! 先ずは自らの精神を鍛えるのだ!」
「うむ……ふむ……。怜華嬢さん、絶対にお似合いですよ。さぁどうぞ!」
(………………なんぞ……この状況……)
可憐なエプロンドレスを献上する諸葛誕と顧雍、愛の拳で殴り合う凌親子、そして諸葛誕の功績を誉め称える俺に囲まれた怜華は、無言で甘寧に助けを求める。
「へっへへ! おれぁしーらね!」
怜華曰く、甘寧の兄貴は無情にも両手を後頭部に回して静観を貫いた。
怜華は話が進まない事を回避するために有り難くエプロンドレスを貰い、その場で軍師服の上に着込んで見せる。うん、普通に可愛いカモシカさんだ。
「……えっとね、諸葛誕殿が居る今を利用して、広陵に居るショカツセイ殿を登用したいの」
「おぉ! 倅をですか! 嬉よすなぁ!」
怜華の提案は、後回しにしてしまっていたショカツセイの登用だった。
この場に丁奉が居たなら彼の弟であるテイホウだったかも知れないが、残念な事にテイホウと面識を持つ兄・丁奉は陳留に向かわせてしまった。
「よし! では広陵に寄り道して、ショカツセイを登用しよう! 頼むぞ、大軍師・怜華!」
俺達は善は急げと広陵に向かい、ショカツセイと再開するや即座に推挙。
「セイ! やるぞ! 我等の力を天下に知らしめるのだ!!」
「はい父上! フン! フン! フン!」
諸葛誕の口添えもあり、諸葛靚は快諾。
これで諸葛親子も揃い、残り行動力が120となった怜華を先頭に、改めて陳留へ戻った。




