ソヒさんは良い人なの、人気がないのが残念なの
「土地を持たない放浪軍で大陸中を暴れまわる。中々に面白そうな大戦じゃねぇか……主力となる兵達は誰だい?」
「勝ち進めるうちに得る敵兵が六割、賊兵が四割」
「はっは! 半分が賊兵か! そんなら俺の居心地も良さそうだな」
「元が賊だろうが何だろうが、勝った者勝ちだ。そうやって歴史は紡がれている!」
「おめぇさんの言う通りよ。勝てば官軍・負ければ賊軍。そんで大切なのは世上が満足する結果っつー訳だ。やれ経歴がどうの体裁がどうのと喚いて滅ぼされるは無知蒙昧な凡人。今を見るだけで先を見れぬ時の迷い人に違ぇねぇのさ」
俺の説得に対してカンネイは自論を主張。それは間違いなく直属の上司たるコウソや、大上司に当たるリュウヒョウを指していた。
彼の言葉はまだ続き、コウソすらも口を止めて耳を傾ける。
「温故知新なき勢力には滅亡、創造し続ける勢力にも滅亡、中道による保持を望む勢力にも滅亡。男たるなら乱世に於いて天を裂いて地を穿つ……上等だ!!」
そして彼は自らの左拳を突き出すと同時に、右手で机を放り投げる。
「昭毅武惠遺愛靈顯王・甘興覇! おめぇの旅に手ぇ貸してやるぜ!!」
「のぎゃあぁぁ!?」
決めポーズと共に机でコウソを押し潰す甘寧。
それはまるで、今までの鬱憤を晴らすかの様な、金輪際の関わりを完全拒否するかの様な一撃だった。
「よし! では行こう! 俺達の戦場へ!!」
対する俺も拳を突き出し返し、甘寧の加入を心から感謝。
お互いに笑みを浮かべて戦場を望み……もといこの場からの脱出を図った。
「こぉの……気違いどもがぁ!! 衛兵ども、出会え出会え!! あの餓鬼どもを残らず殺せ!!」
机を掛け布団にされたコウソは当然の様に大激怒。
宮城内に響き渡る大号令を下して衛兵達を呼び寄せた。
「へっ、三下どもが! ……てめぇらが束になったところで敵う甘興覇じゃねぇよ!!」
一喝が衛兵達の勇気を殺し、拳を掲げれば天井が突き破られる。
落下と言うか召喚と言うか、甘寧の言葉を合図に黒光る鉄球を両端に付けた鎖が現れ、彼の腕に収まったのだ。
「見ろ怜華! あれは甘寧愛用の鉄鎖! 主の求めに応じて天より降臨したんだ!」
(うぅーわあり得ねぇー)
甘寧が初期から所持しているアイテム「鉄鎖」。元から高い彼の武力を更に高める武器にして、彼の名場面を飾るには欠かせない名器である。
「だっはっはぁ!! もうここに戻る事はねぇからな、遠慮なくぶちかますぜぇーー!! 死にたくなけりゃお家に帰んな三下どもぉ!!」
甘寧が鉄鎖を一振りすれば、それは天が気紛れに寄越した暴風の様なもの。
鉄球が当たった場所は家具であろうが壁であろうが大黒柱であろうが一撃破壊。3メートル近くまで伸びきった鎖の部分は鎌鼬が如く鋭利な刃となって広範囲を切り捨てる。
風を切り、風に勝り、一陣の嵐とも言える暴れっぷり。
正に、雑兵が束になったところで敵う相手ではない。それを今更ながら理解した衛兵どもは恐れ戦き、大守たるコウソを無視して逃げ惑う。
「大将さん達よ、今の内に逃げ出すぜ。放浪軍の拠点はどこにあんだ?」
捕手を一通り追い払った甘寧は俺達に振り返り、してやったぜ感満載の笑みを見せる。
「ソウソウ軍領の陳留だ。……後ろは俺が受け持つ! 丁奉と諸葛誕は怜華の左右を固めてくれ! 俺らの軍師に指一本触れさせるなよ!!」
「承ったァ!!」
(へっ……この大将、自分が殿になるのかよ! 俺以上に頭イカれてんな!)
俺と丁奉と諸葛誕は嬉々として先導する甘寧に応える形で即席の陣形を作り、怜華を中央で守りながら宮城を後にする。
全力疾走で目指すのは無能な門番がいる城門。そこさえ抜ければもう追手はかからない。
「にっ、逃がすな! 追え! 追えー!」
恐怖心を懸命に抑えつつ、兵達に追撃号令を出すコウソの声が背中に届く。
然し、その声に従う衛兵は少なかった。
甘寧の天下無双ぶりを前にしたコウソが怒りを恐怖に変えた様に、衛兵達も自らの職責に上回る恐れを抱いて尻込みしていたからだ。
「俺だって負けんぞ! 喰らえ! 殿路流奥義・空気中微生物大爆発ゥーー!!」
それでも迫り来る追手には、最後衛を守る俺が当たる。
背後に振り返ると同時に突き出した拳を握り締め、衛兵達の進路上にある空気を圧縮。即席の空気爆弾を作った瞬間に爆散させ、周囲に雨を降らして虹を生む。虹が出れば子供達がそれを見に集まり、図らずとも追手の足を阻んでくれる。
「相変わらず訳の分からない技だけど、この調子なら簡単に抜け出せ……あれはっ!?」
後ろの光景を流し見ながら微笑を浮かべる怜華が、前方に向き直った時。彼女は俺達の進路上に立ち塞がる、とある人物に気が付いた。
「甘寧、北門から脱出する気か?」
それは甘寧とコウソの仲を取り持っていた両人の理解者、ソヒであった。
人気のない道で単身待ち構えている様子から察するに、やはりというか彼に敵意はないようだった。聞かれた甘寧も軽い返事を返すのみ。
「まぁな。放浪軍の拠点が陳留だから北門が一番早いだろ」
するとソヒが間髪入れずに言い返した。
「ブンペイ殿の一隊が既に北門に配された」
その一言だけで甘寧と俺と怜華は理解。甘寧に至ってはさも当然とばかりの軽口で流す。
「おぅおぅ、流石は江夏の守護神だ。早ぇったらねぇや」
ブンペイという武将は甘寧に次ぐ江夏の実力者。甘寧を抜けば彼が実質的な一級武官足り得る程に強く、リュウヒョウ軍の武を担う猛将だった。
史実に於ける実績も凄まじいもので、リュウヒョウ軍滅亡後にソウソウ軍所属となった彼は、あのカンウやソンケン(息子)を撃退し、その後は江夏大守として数十年間に亘って同地を死守。対呉の最前線でありながら、遂に陥落する事はなかったという。
「んで、ブンペイの野郎が居るから北門は止めろって?」
「その通りだ。如何に強いお前でも、この状況で彼と殺り合う暇はないだろう」
84の武力を持つブンペイと彼の部隊。甘寧であっても簡単にあしらえる存在ではない。
何より此方は少人数である上に、肉弾戦を苦手とする怜華だって居る。彼女の身を思うなら、あまり強引な突破は望ましくなかった。
「でも……彼は何で、こんなにも早くに私達の動きを察知できたの?」
怜華がソヒに問う。
俺が甘寧に逃げる方向を尋ねられた際、俺は彼や怜華達にだけ聞こえる声で陳留だと答えたにも拘わらず、ブンペイが予め知っていたかの様な先回りを見せた事に不審を抱いたのだろう。
「ブンペイ殿の国防に関する視野は広い。彼は北の脅威足り得るソウソウ軍の陣容を偵察する中で、陳留にある貴殿等の事も調べていた。それ故に貴女方の逃げる方角が北であると推測できたに違いない」
どうやら彼は、甘寧風に言えば先を見る事ができる人物。
俺達が甘寧の登用に現れたと分かった時点で甘寧の離反を確信し、逃げられる前に討ち取ろうと考え、逃げ道を塞ぐべくコウソを無視して軍議を途中離脱したようだ。
「西門と南門から出てもリュウヒョウ軍の領土だ。残るはソンケン軍と境をなす東門のみ。盧江を経由する形で東から抜けた方が、お前にとっては知り合いも多いだろう。……幸いにも東門の守備は私だ。お前の突撃にわざと負けてやるから、その隙に逃げろ」
何と、ソヒは甘寧の逃亡を手助けするという。ソヒさん、あんたはやっぱり漢や。
「…………新天地で、その名を存分に轟かせてこい!」
しかも彼はこれから敵となる甘寧にエールまで送る。やっぱりあんたは漢やで。
「へへっ……何時も悪いな。どうだ? お前も此方に――」
「俺は先に向かっている。遅れて正面から突撃して来い」
甘寧が最高の理解者ソヒに対して勧誘するものの、やはりと言うかソヒはソヒだった。
彼はあくまでもリュウヒョウ軍所属を貫く。甘寧同様に呉系の相性値でありながら、真逆の相性を持つリュウヒョウを唯一の主君と決めている様だった。
「……悪ぃなソヒ。いっつも俺の我が儘に付き合わせちまってよ」
「…………甘寧……」
ソヒの姿が消えた後に呟いた甘寧。
先程まで見せていた嵐の様な覇気は消え失せ、リュウヒョウ軍にて唯一人、自分を理解してくれた恩人に申し訳ない想いを抱いたのだろう。
「……さぁ、ぶっ飛ばすぜ大将さん。あいつの分まで、俺を暴れさせてくれよ!」
「よし! なら先ずは派手に突破しよう!! 正面から化物みたく門に迫り、自ずから道を開けさせる様な鬼っぷりを見せようぜ!!」
「おぅし来たァ!! ぶっ飛ばすぜェーー!!」
俺と甘寧は怜華の左右前方に立ち、丁奉と諸葛誕が左右後方を固める。
そしてソヒの言った様に、正面から堂々と東門に突撃をかます。
対する門番達はソヒの指示を受けて広域に散っており、その隙を突くようにして俺達は手薄な東門を突破。無事に江夏を脱したのだった。
甘寧(字:興覇)
呉を代表する猛将。若い頃は徒党を組んで江賊の頭領をしていた。粗野な性格ながら筋を通す人物であり、気に入らない相手はたとえ権力者でも容赦しなかったという。
彼はある日を境に書物へ没頭して学識を得ると、荊州を治める劉表に仕官する。然し当時の荊州は中央の戦乱から逃れた知識人が多く集まり、元から学者肌である劉表は彼等を用いても賊上がりの甘寧を用いる事はなかった。甘寧も劉表には乱世を征する力は無いと見て、彼の武臣に当たる黄祖へと鞍替えする。
そして黄祖の下で孫権軍と戦い、凌操を討ち取る手柄を立てるものの、黄祖は甘寧を重用せず、蘇飛はそれについて諫言したが効果はなかった。
劉表も黄祖も取るに足らない人物と見限った甘寧は蘇飛の後押しを得て出奔。敵対した孫権の許へ降り、そこで厚遇を受けた。
ゲーム内では184年最初のシナリオから登場。江陵という、後のリュウヒョウ軍支配圏にて未発見の在野武将となっています。
見聞して発見状態にしないと十年ぐらい経った頃に賊として出没し、治安の仕事を任されて討伐任務に赴いた他の武将を悉く返り討ちにしてきます。
武力70程度の曹操でプレイした時、他にも武将が居るのに自分だけ治安の仕事を回されたなぁー、なんて気軽に考えながら討伐に行ったら「よく来たな死ねェーー!!!」とばかりにスッテンテンにされたのは良い思い出……おい仕事割り振った朱儁、お前はちょっとこっち来い
彼の能力値は以下に記す通りです。
武力92+2(鉄鎖所持) 知力74 政治44 魅力58
所持スキル……猛将の極意、混乱、槍兵指揮、弓兵指揮、水軍指揮
戦法……猛攻Lv4 連射Lv3 矢嵐Lv3 水禍Lv5 奇襲Lv5 攻城Lv5




