求めるもの、それは情熱! 求めるもの……それは、一番乗りィーー!!
リュウヒョウ軍領土 江夏 城内の宮城
此方でも当然ながら軍議が開かれていた。
然し、それは殿路放浪軍とは比べ物にならない程の険悪な軍議であった。
「カンネイ! この役立つが! 仕事の成果が一切上がっておらんぞ! 貴様さては、経費だけむしりとって宴会でも開いておったのだろう! この役立つ! 役立つの役立つめが!!」
「サボったつもりはねぇーけどなぁ! こちとら商業は苦手なんだよ! 大体この結果は普通に考えれば分かんだろ! 仕事割り振ったてめぇにも責任はあるだろうがボケェ!!」
「何を抜かすこの馬鹿ンネイ! 賊あがりの貴様に仕事をくれてやっただけでも有り難く思え! この給料泥棒の役立つの半裸男が!!」
「30以上も知力が下のてめぇに、馬鹿呼ばわりされる謂れはねぇよ役立つの消化酵素! つーかてめぇ、何時も偉そうにしてるけど全ての能力値が俺よりずっと下だからな! 文化人気取りのてめぇより俺が商業した方がまだマシだからな! 分かってんのか、あぁ!?」
「あぁー聞こえない聞こえない! 賊の戯れ事なんて私聞こえなーい!」
「あぁそうかよ! 開始1ターン目で暗殺される雑魚太守には俺の声なんざ聞こえねぇーか! 実はもう死んでて目の前のこいつは亡霊かもだしな!」
「んだと馬鹿ンネイ! 誰が開始1ターン目で暗殺される亡霊だ!」
「おう聞こえてたか雑魚太守! まんまその通りの意味だよバァーカ!」
江夏太守のコウソと末席武官のカンネイ。
太陽が昇って朝を告げる様に、二人の口喧嘩は今日も平常通りに行われていた。
この光景は日常茶飯事となっており、高位に胡座をかく横暴なコウソと、実力はあれど文化人意識の強いリュウヒョウ軍と馬が合わないカンネイといった構図だ。
因みにリュウヒョウ軍の相性値とカンネイの相性値は完全に真逆を示している。会話しに行けば高確率で門前払いされる程に互いが毛嫌いしており、正に犬猿の間柄と言えた。
だがそれでも、中にはカンネイと同じ相性値でありながら、リュウヒョウ軍の武将と良好な関係を築く特殊な人物もいる。
「カンネイ、コウソ殿は俺達の上司だ。例え頭に血が上ったとしても、無礼な言動は控えるべきだろう」
それはコウソの側近かつカンネイの同僚に当たるソヒだ。
彼は常々仲裁に入り、二人の関係を辛うじて取り繕っていた。
「違ぇよ! これに関しては無能な消化酵素が悪ぃ!」
「む、無能……! 無能だと!? 何を抜かすか馬鹿ンネイ!!」
「両者ともに落ち着かれよ。……コウソ殿。徒に怒鳴り、叱責するのは己を小人だと言っておる様なものです。貴方が防衛戦を得意として内政を苦手とするように、カンネイにも得手不得手があります。そして上に立つ博識者とは、その長所を愛して活かし、短所を笑って流せる者を言うのです。何卒、カンネイのみにあらず、貴方も深く考え直してみて下さい」
「ぬ……ぬぬぅ……!」
「一度、私に仕事の割り振りを任せていただけませんか? カンネイの力を存分に発揮させ、江夏の発展と安全に繋げてみせます」
ソヒはカンネイの理解者であると同時に、コウソの理解者でもある。
コウソが江夏随一の知力を誇るカンネイを軍師に任命せず、録な仕事も回さないのは、彼がカンネイの実力に嫉妬しているからだと解っているのだ。
それ故にカンネイと距離を置かせ、自分が仲介を果たそうとした。
「ふんっ……まぁ良いわ。カンネイ、次は確かな成果を上げるのだぞ」
結局、コウソはソヒの案を突っぱね、カンネイとの口論も有耶無耶で終わらせる。
カンネイは実に面白くないとばかりに舌打ちで返し、口を動かしもしなかった。
「はぁーはっはっは!! 次だと? 笑わせるなコウソ! カンネイは俺達がおもち帰りする!!」
「なっ……何奴だ!?」
待ちに待った出番到来だ! 俺は扉を蹴破って軍議の間に乱入した。
「秋渓一番乗りィーー!! 俺達はカンネイを!」
「丁奉二番乗りィーー!! このお餅の様に!」
「諸葛誕三番乗りィーー!! お餅帰り致します!」
「…………えっと、あの……怜華です。……お邪魔しまーす……」
耳糞をホジホジして欠伸をする門番を余所に、俺と丁奉と諸葛誕は魚を咥えたどら猫よろしく餅を加えた男として参上。怜華はそぉーっと入室するが、女の子だから仕方がない。
「おもち帰りのモチって餅!?」
何もできない怜華に代わってソヒのナイスなツッコミ。こいつは痺れるぜとっさぁん。
「いよぉっ! なんかやべぇ奴等に目ぇ付けられたと思ったら丁奉じゃねぇか! おめぇ、餅なんて咥えて何してんだ?」
「お久しぶりですカンネイ将軍! 勧誘に来ました!」
丁奉はカンネイの指揮下で戦った経験があり、丁奉曰く上官に当たる、カンネイ曰く先輩と後輩の間柄との事だ。
勢力を越えた久しぶりの再開に、カンネイは先程までの怒りを忘れて笑い返す。
「おおっ! 新手の宗教か!? モッチモチ餅教みてぇな!」
「敢えて言うなら殿路教です! 此方におわすのが殿路秋渓殿! 放浪軍頭領にして、大陸全土の勢力に戦いを挑む男の中の男!! そしてこの方は殿路教司祭の諸葛誕殿! モッチモチの餅に定評のあるナイスガイです!」
(あんれぇー? うちって、いつの間にそんな宗教団体になったのー? 怜華しーらない)
丁奉のナイス解説が、カンネイ以外のリュウヒョウ軍武将の介入を自動的に阻む。というよりはカンネイ以外が一様に絶句していた。
これぞ好機! 俺は続けて熱弁する。
「カンネイ! リュウヒョウもコウソも、お前を良しとする事は断じてない! ここに居てはその腰に帯びた鈴が錆びるだけだ! 願わくば俺達と共にあり、全勢力滅亡を図った大戦乱の先陣を……一番乗りを担ってほしい!! それができるのはカンネイを於いて他にない!!」
「如何にもその通り! カンネイ将軍、是非ご検討を!!」
「我等は貴方を心から欲している! 男たるならば力を貸していただきたい!!」
(……だからさ……あんたら何で、所構わずに脱ぐの……?)
半裸族……否、鍛えられし肉体美戦士はカンネイのみにあらず! 俺も丁奉も諸葛誕もそうだ!
俺達三人組はバサァー! っと服を脱ぎ捨て…………怜華が溜め息混じりに回収してくれた。
(…………奴等が陳留で旗揚げしたばかりの新勢力・殿路放浪軍か……)
(……ん、あの人は確か……)
その最中、軍議に参加していた一人の武将が静かに席を外し、怜華が怪訝な表情を浮かべるものの、俺と丁奉と諸葛誕は構わず甘寧の登用に専念する。
黄祖(字:不明)
劉表軍の武将。江夏大守。孫堅軍との戦いで孫堅の戦死に関与した為に、孫一族から仇敵視された人物。
甘寧を元賊と軽んじて出奔させてしまい、演義ではそれが影響して討ち取られてしまう。
ゲーム内では184年に㐮陽(劉表軍の本拠地となる都市)で未発見在野武将として登場。
189年には江夏太守に就任。192年のシナリオ以降は孫堅を討ち取った事になっており、晴れて孫一族から狙われる羽目に……。
正史では208年に孫権軍の攻撃に遭い、江夏城は陥落し、黄祖は逃亡中に討ち取られている。それに伴ってゲーム内では207年が彼の最後の登場年となり、翌208年以降の江夏は孫権軍領土となる筈ですが……おぉっと劉備さんが占領している! 抑々208年シナリオでは劉表軍すらいねぇっす! これには訳があり、曹操軍が南下を始めると同時に劉表が没し、旧劉表軍は曹操に降伏。劉備は仲の良かった劉表の息子の劉琦を頼って江夏へ落ち延びた……という演義の話を準拠しているから。
因みに甘寧が言っていた「開始1ターン目で暗殺される」というのは本当で、192年~207年の間に孫一族をプレイした際、仇敵欄に「黄祖」と明示されており、運よく会話にさえ漕ぎ着ければ彼を1ターン目に暗殺する事は可能。逆に黄祖をプレイすると、定期的に(運が悪いと数か月連続)孫一族の誰かが暗殺に現れます(孫策とか孫策とか孫策とか)。黄祖の息子がゲームに登場しない事と、孫一族の多い事が、彼の暗殺比率を高めているようです。ヌルフフフフ殺せるといいですねぇ、じゃないだから普通に戦で討ち取ってやれよ……




