仲間を求めて初軍議、狙いは定まった! 行くぞ!
280年4月 陳留 酒屋
軍議。このゲームではそれを、勢力の行動ターンとも言う。
3ヶ月毎(体感では3日)で季節が変わるのと同時に発生し、1月から4月に変わった現在、個人ターンに先んじて開かれたのだ。
「ジャン! ジャンジャカジャンジャンジャン!! ジャン! ジャンジャカジャンジャンジャン!! デーンデーンデーン! デーデデーン! デーデデェーーン!! デーンデーンデーン! デーデデーゥン! デーデデェゥーンゥ!! デーデーデー、デデデンッ! ンデーデーデー、デデデンッ! デデー、デーデデーン! デーデデェーーン!!」
「おっ! ベイダー殿、お早うございます。軍議が始まりますぞ」
「シュコー! シュコー! …………うん、お早う諸葛誕」
黒マスクに見立てた黒布を顔に巻き、フラフラとした足取りで皆の前に登場。
「…………じゃあ……いただきますと、放浪軍の初軍議を始めます」
「いただきまぁーす!!」
全員が揃った事で、怜華が食卓軍議開始を告げる。
俺と丁奉と諸葛誕とラムは、軍議そっちのけで手を合わせた。
「悪ぃ丁奉、ちょっと味噌とって」
「煮た大根に味噌ですか。それも美味しそうですな」
「お二方、焼き餅に味噌も絶品ですぞ。次は私に味噌を貸して下され」
「了! ……いよっとお待たせ! 餅一欠片だけちょうだい」
「了! ……ほっ! さぁどうぞ」
俺と丁奉と諸葛誕とラムは、軍議そっちのけで舌鼓を打った。
それを見て軍師兼料理士の怜華が呆れ気味に言い放つ。
「……あんたら三人は本当に良く食べるよね。作る側からしたら嬉しいけどさ」
それは怜華の飯がバランスと味を兼ね備えた旨飯だからである。
しかも彼女はラムの主食たる草にワカメを入れ、人に限らぬ動物の胃袋まで掌握している。流石は怜華軍師殿、恐るべき根回しだ。
「……食べながらでいいから聞いて。今の私達には戦ができるだけの資源がない。だから、あと少しの間は軍備増強に努めたいけど……それ以上に仲間がもっと必要」
怜華に続いて軍師補佐を務める朱桓が、現状確認を交えた改善策を提示する。
「私を含めて殿路殿と怜華殿、丁奉殿に諸葛誕殿に全琮殿と、仲間衆は6人まで増えた。だが、これだけで戦をするにはまだ心許ない。何より、我らの中には決定的に不足している人材がいる。……先陣を切り、一番槍を飾る突撃隊長だ」
言われて、怜華と朱桓以外の俺達はあっと声を上げて理解を示した。
その中でも最も早く気付いた全琮が、皆を代表して語る。
「確かに。一見して殿路殿が先陣を切りそうですが、頭領ですからな。役柄が違います。……それに儂も丁奉殿も諸葛誕殿も、遊撃を得意とする者故、先陣は向いておりませんな」
「私も武力に関しては自信があるが、怜華殿と共に味方の支援に回る方が良い」
現状、朱桓は怜華に次いで知力が高い。彼は本人が言う通り、戦場にあって味方部隊の状態異常などの治癒役と遊撃役に徹するべきだろう。
「そこで私から一つ提案があるの。既に朱桓殿に頼んで下調べは済ましてる」
「他勢力から武将を引き抜くのか」
「さっすが。こういう事に関しては理解が早いよね、秋渓は!」
親指を立てる軍師殿。伊達にプレイしまくっているな、といった眼差しだ。
勢力の武将確保には幾つかの方法があるが、大部分が敵勢力からの登用だろう。
戦で捕縛した敵武将を勧誘したり、軍議中に他勢力の武将を買収したりするのだ。
放浪軍では主に、前者の方法を使う事になる。
その理由として放浪軍の軍議では、他勢力に対する計略コマンドが使用できず、武将の忠誠を下げる「離間」や、戦中の寝返りを要求する「内通」等の調略工作が不可能だからだ。
尚、放浪軍はそれ以外にも、正規勢力が行えるコマンドで使用できないものが幾つかある。
「……登用するにしても、忠誠が低く、それでいて希望条件に合う武将がおられるのですか?」
提案した怜華と内容を知っているであろう朱桓に、諸葛誕が問い掛ける。
彼の言った忠誠値の低さこそ、放浪軍の買収登用が難しい所以だった。
言わば、武将の忠誠値を下げる裏工作が仕様上の問題で封じられている放浪軍では、元々の忠誠値が低い武将にしか買収登用は通用しないのだ。
しかも放浪軍の買収登用は買収とは名ばかりのお願い行為に他ならない。
正規勢力であれば支度金や寝返り後の出世を約束して武将の関心を買う事ができるのだが、放浪軍では階級が存在しないので出世どころか支度金もない(ホントに酷ぇ軍勢だ)。
しかもしかも、そこに放浪軍頭領と登用される側の武将の相性値も影響する。いや寧ろ、お願い行為であるからして、相性値こそが正否を左右する大きな要素と言えた。
だがそんな問題を払拭するかの様に、怜華は笑みを浮かべて即答する。
「呉系の相性で、とっても強くて、上司に恵まれていなくて、主君と不仲で現在の忠誠が低い人……そんな武将が居たら、みんなは欲しいと思わない?」
もうこの時点で俺には二人の名前が上がったが、怜華軍師がノリノリのノリ子ちゃんみたく可愛くウインクするので彼女に言わせる。
「リョウトウ殿と会話して私も思い出したんだけどね、リュウヒョウ軍に在籍するカンネイ殿が、どうやら鳴かず飛ばずで不貞腐れてるみたいなの。彼を放浪軍に勧誘したらどうかな? バッチリ突撃隊長でしょ!」
彼女の話によれば、朱桓を仲間に加え、リョウトウの推挙に失敗した後の事。
リョウトウとの親睦を深める為に会話した際、カンネイの名前が上がったという。
彼曰く――
(この間、リュウヒョウ軍の江夏に遊びに行ったんですが、カンネイ殿が機嫌を損ねてプンプン言ってましたよ。「コウソの糞野郎は元より、リュウヒョウも俺の言う事を聞き入れねぇ。糞上司の下で働きたくねぇから異動願い出してんのによ、下っ端武官は賊退治でもしてろおっとお前は賊だったけなすまんすまん、って言いやがってあの糞爺!!」……って! 宥めるのに大変でしたよー、もうプンプクプンプンなんですから!)
……どうやらカンネイは、相も変わらず上司と大上司から嫌われている様だった。
俺達は満場一致で、カンネイを仲間に勧誘するべく動いた。
機嫌を損ねる彼が居るとされる都市は江夏。ソンケン軍が治める盧江の北西隣だ。
「では早速説得に行ってくるぜぇー! 宴会の用意は頼ん――」
「秋渓が飛ぶと行動力が大きく減るし、兵を集めたい今は他の人に頼むべき」
カンネイの登用は仲間に任せ、俺は軍備増強に当たるべきだと怜華は言う。
大方、魅力値の高い諸葛誕や物腰柔らかな全琮を使者として派遣するつもりだろう。
だが、今回に限っては彼女に過ちがある。
賢人を求める思いがあるならば、人任せなど到底してはならない行為であり、行動力節約や軍備増強の優先などは考慮すべき内容ではないのだ。
「否、俺が率先してカンネイの登用に当たらなければ! 丁奉、諸葛誕! ともに来てくれ!」
「承知致した!」
「えっ? 二人も連れていくの?」
二将に同行を頼む俺に、怜華は疑問符を浮かべる。
大方、ゲーム通りに一人ずつ派遣するつもりだったのだろう。
「俺に考えがある。心配せずともカンネイは俺達が必ず説き伏せる。…………では行こう!」
「ごっつぁんです怜華殿!」
朝食を食べ終えると同時に、俺と丁奉と諸葛誕は揃って酒屋を出た。ごっつぁんです!
「……宴会の用意は私がしておきますから、怜華殿もついて行かれてはどうです? きっと面白いものが見れると思いますよ」
「……嫌な予感しかしないけど……秋渓が暴走しないか見張ってくるね」
全琮に後事を託した怜華も、結局は同行する事に決めた。
ただし彼女に至っては行動力を消費しない同伴扱いとして、手出し・口出し無用状態。




