一狩り行こうぜ
全琮を仲間に加え、彼が陳留に移動するのを見送った後、俺と怜華は屯所へ向かった。
無論、賊の討伐が目的であり、今回の敵は1440名の山賊だ。
「前みたいなやり方は絶対嫌! 秋渓が捕縛した賊兵を使って残りを討伐させて!」
「それは構わんが、ちゃんと止めだけは刺してくれよ。俺の行動力は残り128で本来なら2回の討伐ができるけど、怜華に多くの金を持たせる事を考えれば俺が全ての賊兵を討伐しない方が良いし、何より兵糧が欲しいからさ」
「オッケ! 私も2回討伐できるから、きっちり後始末を付けられると思うよ!」
賊に止めを刺すと、討伐途中で得られる物資とは比較にならないほど多くの金や兵糧が手に入る。言わば賊が蓄えていた物資を戦利品とする事が可能なのだ。
金に至っては討伐武将の物となり、兵糧に至っては放浪軍の物となる。
そして、そこで得られる金を怜華にあげるには、それなりの理由があった。
俺は放浪軍頭領として通常の会話コマンドで、金を使わずに武将を登用できる。
更には頭領の立場と行動力10を用いて、放浪軍の金を自分の物として引き出す事も可能。
然し、放浪軍の同志扱いである怜華にはそれができず、推挙や他事にも金を必要とする彼女には多くの金を持たせるべきなのだ。
「では作戦会議も程々に……行くぞぉー!!」
討伐申請を行い、郊外へと出撃。賊のアジトへ向かう。
「テシュシクアコノナンオイイワカイワカ!」
「イーワーダシアマナノカシモカ!」
「ダシヤイノツイイユデイカセノケラダコトオ!」
現れた賊兵共は、やはりどこかがおかしかった。
鉄棒を武器に、リーゼント頭と派手派手メイク。上半身裸の上に可愛い青龍の法被を着込み、ピンクのブラジャーを愛用している。
「ピュアな彼等を退治するのは良心が痛むが……これも乱世の習い…………「民の暮らしを脅かす不埒者どもめ、この殿路秋渓が許さぬ!」」
純粋をはき違えた変人共だと怜華は言うが、あのウルウルとした目をする龍の法被は普通に可愛いかった。それだけでピュアと言っても、間違ってはないだろうに。
「いざ! 武力100の真髄、今こそ見せてやる! うおりゃぁー!!」
迫り来る賊兵共に真っ向から突撃。熱き拳を握り締め、一気に突き出した。
「奥義! 幼き日の買い物の思い出!」
突如、カラカラカラカラ……と、映写機がセピヤの光景を写し出す。
……それは、十年も前の出来事だった。スーパーに買い物へ向かった俺は、選んだ菓子を片手に母親を捜し回っていた。
(お母さーん。僕このお菓子がいいー!)
(ゴリ?)
俺が叩いた背中は……何と4メートルは優に越える巨大オランウータンの尻の穴だった。
そう、オランウータンの尻の穴に、塩味ポテチを突っ込んでしまったのだ。
(あっ……お……お母さ……ん……?)
(ゴリゴリ(訳:誰だ貴様)! ゴリラゴリラゴリラ(訳:気安く触るんじゃねぇよ俺の一張羅体毛に)!!)
オランウータンは天井を突き抜け、空高くに舞い上がり……
(ゴッゴゴリゴリラー(訳:貴様を産んだ覚えはねぇー)!! ゴラァァーー(訳:死ねェェーー)!!)
「スーパーボディプレス!!!」
「うわぁぁーー!?」
そして現在、俺の呪文と同時に群がる賊兵共の頭上へ落下。下敷きになった多くの者達を一撃で気絶させた。
「何その思い出ぇーー!? っていうか武力関係ねぇーー!?」
「ふふふ、これが殿路流奥義・秋渓劇場というもの」
「…………さっきあんた、幼き日の思い出だとかって言ってなかった?」
「………………知らん!!」
クワワッ! と強めた表情は歌舞伎俳優を夢見た次の日にやっぱり俺は海賊王になると言った友達から教わったもの。
一方で怜華に至ってはお笑い芸人でも夢見ているのかツッコミでしか返さない。
「取り敢えず…………「いくらか賊兵を捕まえたな。まだまだ残っているが、ひとまず引き上げよう」……よし、決まった!」
(一字一句覚えてやがるわぁー。その記憶力を学期試験に使えっての)
『殿路秋渓の活躍により、880人の賊を捕らえ、彼等は殿路放浪軍の下に身を寄せることになりました』
『討伐隊は賊が備蓄していたと思われる金7と兵糧25を発見しました!』
『呉の治安が79(+3)になりました』
『殿路秋渓の名声が10上がりました』
俺は金7を手に入れた事で所持金が27となり、放浪軍の兵糧が25増えた。
「じゃあ怜華、後は頼んだぞ。俺は陳留に戻って募兵をしてくるから」
「あっ……ぅん……。お疲れ様、後は任せといて!」
怜華は一瞬だけ心細そうな表情を作った。
だがそれも次の瞬間には打って変わった笑顔となり、俺を見送って手を振ってくれる。
(思えば……女の子一人で変な男共と行動するのは危ないよな。……よしよし!)
捕縛されて放浪軍の兵士となったものの、正常な精神ではない事が予想できる元賊兵。
そんな者達の中に一人取り残されるのは恐い筈だ。
俺は、劇場セットを片付け終えて帰ろうとする役者・オランウータンと、怠け者ディレクターことナマケモノにもう一つの協力を要請。
心の会話が成功し、二人は怜華の護衛を快諾してくれた。
「安心するんだ怜華! このゴ……オラタさん達が一緒に居てくれるぞ!」
「ゴリゴリゴンゴ(訳:女の子の護衛は任せろ)!」
「ナッマナマナマ(訳:おじさんがばっちり守ってあげるよ)……ハァハァ(はぁはぁ)!」
「どっちも要るかっ! これ以上面倒な奴を増やすな! さっさと帰れ! あとお前ハァハァすんな気持ち悪いぃ!」
オランウータンとナマケモノと俺は、一同揃って追い返された。
おかしいぞ、怜華は一人が心配ではなかったのか?
とは言え、彼女の怒りを買って負傷もといターン終了はしたくないので、俺は役者及びディレクターと別れて陳留へ戻ろうとする。
「おぉ! そこに居られるは殿路殿ではありませんか! 今日も来ておられましたか!」
門を潜ろうとした所で、背後から聞き覚えのある熱気声が掛かった。
振り返って見てみれば、そこには弓矢を持ったリョウトウが立っていた。
俺は行動力を消費して、彼と深く語り合う。
「俺はこれから狩りをしようと思っています。殿路殿も如何か?」
弓と矢束を示し、爽やかな笑みを見せるリョウトウ。白い歯が、眩しいぜ!
「狩りかぁー。うん、そうだな! でっかい獲物を獲って、皆と一緒にジビエパーティーだ!」
狩りは武力型武将が特に好む行動であり、同行すれば様々なイベントや恩恵がある。
それを敢えて断る必要もなく、リョウトウとの親睦を深めるついでとご馳走確保を兼ねて、俺は彼の狩りへ同行した。
案の定、狩りに出た収穫はあったが、それは獣ではなく人であった。
「殿路殿、あそこにいるのはゼンイ殿ではないか?」
「ゼンイ殿? 彼は確か全琮の孫だったような……」
「名前は知っておられても、面識はありませんでしょう! 俺が紹介致します!」
リョウトウはゼンイと知己である様子。
彼は大声でゼンイの注意を引き、俺を引き合わせてくれた。
「殿路秋渓殿ですね。私は全琮の孫のゼンイと申します。祖父から話を聞いております」
「殿路秋渓と申します! 以後お見知りおきを!」
こういった出会いでも登用を持ち掛けられれば良いのに、生憎と仕様上不可。
今はただ、ゼンイ及びリョウトウとの親睦を深めるだけだった。
その後、二人と別れた俺は陳留に戻って募兵。
672人を新たな仲間に加え、名声を25上昇させた所で、残り行動力が8となって終了した。




