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全琮


280年3月 陳留の酒家


 放浪軍開始から三日目の俺のターン。行動力は158だ。


「賊だ……賊が居やがる。それも呉の都市に賊が居やがる! 狩りの時間じゃあー!! 行くぞ怜華、賊討伐伝説の幕開けじゃあー!!」


 全都市災害情報を確認すると、朱桓やゼンソウ、リョウトウ、リョウソウ達が居た呉の都市に賊が出現していた。

俺と怜華は互いに行動力を20ずつ消費して呉を訪問する。


「ところで……行動力20の消費で訪問できるのは分かるけど、所在都市に戻る時には消費しない謎仕様。怜華はこれをどう思う?」


「要は行き帰りで20って事じゃないの?」


「だったらおかしくないか? 陳留から呉への移動に20を前払いしといて、呉から他の都市へ行くには呉へ戻るつもりがないのにまた20消費するんだぜ? しかもやっぱり呉へ戻ろうとすれば、そこでも行動力20を払う必要がある」


「……ならこう解釈したらどう? 大陸の端から端まで何処でも一定額で移動させてくれる旅行会社がいたとして……帰宅用旅費はサービスでそれ以外で利益を得ている……って」


「近場移動を繰り返す老人からめっちゃくちゃ取り立てる会社だな……それ」


「遠出する若者に安月給で酷使されるドライバーが想像できるよね」


 怜華が打ち立てたブラック旅行会社説。

もしそれが本当にあったなら、それを利用して大陸中央から南東端まで格安移動している現状が少々申し訳なく思えてくる。


「まぁ、そんなこと言ってる内に呉に着くんだがな! 大体何だよ、この移動時間。何処から何処までも大概20分近くで移動できるぞ。大陸の距離関係どうなってんの!?」


「目的地方面の門を出てテクテクしてたら簡単に着くもんね」


 役立たず門番を一瞥して外出し、別の都市の役立たず門番を無視して城内に侵入。

もはやこの行動にも慣れたもの……否、慣れるというより門番が職務放棄を立派な職務と判断していると言うべきか。


「今日の目的は賊の討伐とゼンソウの登用! 朱桓曰く、現状ではリョウトウとリョウソウは首を縦には振らん! ならば朱桓の推すゼンソウだ! さぁ、ゼンソウはいずこに!」


「儂ならここに! とおっ!!」


「きゃわぁっ!?」


 俺の求める声に応え、ゼンソウは城壁の上から勢い良く降臨した。

回転を加えた着地で大地を震わし、それによって怜華は悲鳴を上げる。

これならば流石の門番も、何事かと現れて仕事を果たすだろう。

俺は期待の眼差しでゼンソウと、彼の背後で地面魚釣り(魚どころか水気すらない地面に釣糸を垂らし、鳴かず飛ばずの自分を推挙してくれる賢人を待つ行為)をしている門番を見る。


「アァーくそったれ糞々。どこかに、何もしなくて高給な仕事ねぇーかなー」


「俺達って四六時中、門を見張ってるってのに……報われねぇよな」


「おっ、ダンゴムシ釣れたぞ。可愛いなぁ……まるで俺の娘みてぇだ」


「おいおい、お前には娘どころか彼女すらいねぇだろ。ってかお前、男好きってホント?」


「妊娠5ヶ月後から死後4日目までの男が守備範囲! 彼氏募集中!」


 駄目だった。門番は己の職務態度を改めるどころか、自己の正当化に勤しみ、人として無念な事を大声で公表する。というかそこのお前、その守備範囲は色々とヤバイぞ。


「彼等は放っておいて、殿路殿、儂にご用ですかな?」


 相変わらず素敵な笑みを見せる初老将軍だ。複雑な家庭環境に翻弄されたが故に、知るものを知っている余裕すら感じられる。

俺は拳を突き出し、彼への熱き想いを全力でぶつける。


「あぁ、大有りだ! 是非とも俺の仲間になってほしい! 貴殿の堅実堅固な戦ぶりと、温厚謙虚な人柄が俺達には必要なんだ! 呉国を支えた才覚を、次は俺達の為に使ってほしい!」


「殿路殿、お誘いいただける事は嬉しく思います。されど……」


 ゼンソウは俺の熱意を聞いて純粋に嬉しがる反面、何処と無く悲しげな表情を浮かべた。


「儂は見ての通りの老体。更には朱桓殿に比べて武力も知力も戦法も劣る。そんな儂では力不足に他なりますまい。居ても却って足を――」


「朱桓はこう言っていた。ゼンソウ殿は戦法と武力が心許ないながら、余りある確かな働きを示す人物だと。ゼンソウ殿は朱桓と違って温厚かつ連携力に長けていると。……こう言うのは二人に対して失礼だけど、実力はあるのに性格に若干の難を持つ朱桓が、敢えて自分より実力に劣るゼンソウを怜華や俺に勧めた事は、朱桓がゼンソウを一目も二目も置いた上で自分と肩を並べる逸材だと見ている筈だと思うんだ。何も目に見える能力だけが、能力じゃない」


 定められた能力値だけで足手まといとは言わせない。

仮にゼンソウ程の経験者が足手まといとなるようなら、それは彼を用いる者に過ちがあり、俺も怜華もそうさせない自信がある。


(見える能力だけが能力だけではない……か。戦乱に於いて力のみを重視しない彼ならば、人の幸せを願う事のできる人格者足り得るかも知れん。……あの愚息にも彼の様な幅広い視野があれば、あんな骨肉の争いを助長させる真似はしなかっただろうなぁ……)


 熱意の程を続けて聞いたゼンソウは、俺の目を見詰めた状態で押し黙り、暫くしてから目元を緩めて見せる。

歳によって出来た皺が寄せられた表情は、何とも言えない物悲しさを思わせた。


「……ほほっ! 殿路殿と朱桓殿が、かくも私を評価してくれるとは嬉しい限り」


 だが暫くして、ゼンソウは何かに吹っ切れた様子で笑った。

憂い顔を一変させて浮かべた笑みは、何時も見る穏やかな表情そのもの。


「承知しましたぞ。この老体が如何ほどの役に立つかは知れませんが、果たせるべき務めを全力で果たすと致しましょう」


「おぅ! それでは全琮! 改めて宜しく頼む!」


『全琮は殿路秋渓の配下となりました』


『殿路秋渓の名声が200上がりました』


 俺が突き出した拳に応え、全琮もゆっくりとした動作で拳を突き出す。

互いの拳をぶつけ合う事で、俺は彼の手が丁奉と同様のものだと体感した。


全琮(字:子璜(シコウ))

呉の武将。全一族を栄えさせた人物。初めは父に従って孫策に仕え、彼の没後は孫権に仕えた。

若い頃には困窮した民に米を分け与えるなどの善行を以て名声を集め、その一方で騒乱が発生した土地の統治にも優れており、孫権からの信頼は厚かったという。

温厚な人柄や謙虚な言動を武器に、朱桓を含む同僚と良く連携して安定感のある働きを示す。

然し、後年になって孫権の後継者争いに半ば巻き込まれる形となり、悪人として評価される事も多々ある。


ゲーム内では202年に孫権軍所属で呉に登場。以降は各地を転戦し、263年シナリオの前まで活躍します。

彼の能力は以下に示す通りで、戦法の火力不足が否めないものの、バランスの取れた能力値と多彩なスキルを持っていますので、通常プレイでは本当に堅実な働きを見せてくれます。

武力74 知力65 政治63 魅力73

所持スキル……築城技術、反計、槍兵指揮、弓兵指揮、水軍指揮

戦法……乱撃Lv1 火矢Lv3 放射Lv2 矢嵐Lv1 水禍Lv1

因みに、ゲーム内での彼の生年は183年となっており、一般的に言われている生年とは異なって早く生まれておりますので、あしからずご了承ください。

最後に、横○三国志の彼はどう見ても朱桓より年上に見える……。朱桓が演義準拠で若いと言っても、全琮はそれよりも若い筈。

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