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宛攻略戦① 幻の恐怖

 判官贔屓。平家追討を成した英雄 源義経の非を棚に置き、彼の栄転を同情してしまうといったような、結果には何かしらの理由があるにも関わらず悲劇のヒーローを応援したくなる微笑ましい心理条件。

「いつの時代もどの作品も、滅亡する側には独特の浪漫がある」という言葉に似たものを感じてしまう今日この頃。


 現在の大陸情勢に置き換えれば、それはカシン精肉店に通じるものがあるだろう。

曹操軍の捕虜を大量楽屋裏送りに処して、悪名という名の反感を大量に買った挙げ句、連合を組まれて追い詰められて従業員から本店まで没収されて今となっては支店のみになってしまったカシン精肉店は、まさに判官贔屓の鑑と言えるのでは……


「ハアァァァーーー!! 唸れっ!! 筋肉神(ポセイドン)!!」


 宛攻略戦1ターン目。天候は曇。絶好の《幻術》日和だ。

判官贔屓なんのその。俺は開戦早々に策略の《幻術》を発動し、カシン軍を混乱のドン底に叩き込む。感動的だな。


「ブゥギャァァァーー!?(訳:わしの腹に血塗れの曹操の顔がぁぁーー!?)」


 ……わりと洒落にならない幻覚を見ていた。幻覚といえばわりとマジな話、キョンシーってパリピらしいよ。


 気を取り直して記念すべき2ターン目。

何が記念なのかはわからないが取り敢えず《幻術》。引き続きの幻術日和につき、大好評混乱祭りでお送りします。せっかくロショクさんが大半の混乱を《鎮静》で回復してあげたのにまた混乱。


「ブゥギャァァァーー!?(訳:ブゥギャァァァーー!?)」


 混乱の極地に至ったのか、カシンは和訳さえも自分の鳴き声に変えてしまったぁ。


 さぁ、開戦当初41,100だったカシン軍。1回目の幻術で38,912へ。2回目の幻術で35,225まで減少。

6,000近くの兵士達が筋肉神(ポセイドン)の降臨に感極まって昇天もとい帰宅からの筋トレにハマって戻らなくなってしまったぁ! この世は正に大筋肉時代! 俺の筋肉か? 欲しくてもくれてやらん。作れぇっ! 己の肉体を!!

かの有名なプロレスラー、ゴール・キンニ・クロジャーもそう言っていた。


 どんどん張り切って3ターン目。魏延が無人の砦を占領する。補給限界線が無くなり、いよいよ放浪軍は宛城に迫る。


 対するカシン軍は再びロショクの《鎮静》で態勢を立て直し、策略の《鼓舞》で下がった士気を上昇させた。さすがは後漢の大将軍・カシンだ。名声値の高さゆえに、低脳であっても兵士達はやる気を取り戻す。


「悪くない檄だ。店頭販売する元気なパートのおばちゃんを思い出す。……だが! 勝つのは俺達だ! 勝った戦利品で腹一杯焼肉を楽しむのは俺達だ!!」


 カシン軍の士気がどれだけあろうと関係ない。俺達は敵の罠を回避できる戦場の端をひたすら突き進む。これは侵攻側の常道戦術なのだ。


「前方に山があります! これでは進めませんが、どうしますか!」


「直進! 直進あるのみ! 俺達放浪軍には直進あるのみ!」


 山が遮ろうが大河が立ちはだかろうが、直進行軍あるのみ。高機動力の《疾風戦術》が全てを補ってくれる。


「見えたぞ! 敵軍が! 宛城が! 全軍、攻撃開始だぁーー!!」


「「「うおおぉぉぉーーー!!!」」」


 山越え谷越え森越えて。5ターン目に俺の部隊がシュシュン隊3,523、リゲン隊4,500、シバユウ隊2,755を発見した。

どうやらリゲン隊は、2回の《幻術》を見切っていたようだ。さすがは双璧の片割れ。


「それではこの陳めが、恐縮ながら一番手をいただきまする」


「陳宮か! おぅ、派手にやれ!」


 一番手は影となり。普段は連携攻撃を主とする陳宮が、今戦では珍しく先駆け務めた。

彼は十八番戦法の《撹乱》でシバユウ隊を攻撃。891のダメージを与え、混乱させる事に成功した。


「朱桓隊前進。波状攻撃をもってシバユウ隊を撃沈させるぞ」


 二番手の朱桓先生も十八番戦法の《乱撃》を発動。早くもシバユウ隊は壊滅の危機に曝された。


シバユウ「礼を以て難を退く。神よ、我に力を」


肉球の神「力を授けよう。キラキラ!」朱桓隊の乱撃を回避した! ダメージ202


牛蒡の神「根塊の恵みを与えん。キラキラ!」朱桓隊の乱撃を回避した! ダメージ204


文通の神「夏目漱石って鼻毛を抜いて並べる趣味があったみたいね。そんな訳で百年分の鼻毛ね。でも私は鼻毛の神じゃない……だから鼻毛の神じゃねぇって言ってんだろが。うるせぇブッコロスゾ!!」鼻毛の壁が朱桓隊の乱撃を防いだ!!! ダメージ201


「…………未知なる存在に阻まれたようだな。殿路殿に任せるか」


 なんと、シバユウは礼節と仁愛の情を以て朱桓の《乱撃》を防いだ。さすがは司馬一派の中にあって最高の仁者。司馬昭が司馬炎を差し置いて後継者にしようとしただけは……


「へっへへへ! ブッかませーー!!」


シバユウ「礼を以て難を退く。神よ、我に――無慈悲ィッ!?」


 ま、次いで突撃した甘寧の兄貴には、神頼みは効かねぇんだなこれが。

なにせ失敗・成功の関係ない通常攻撃が1,410ダメージである時点で、混乱中のシバユウには為す術がなく、そのまま呆気ない壊滅となった。よく耐えた方だとは思うぞ。


 その後は魏延隊が敵中深くに前進し、オウイン隊3,485、ロシュク隊4,600、トウショウ隊3,640、カシン隊6,432(重装騎兵)を発見。

更にはカシン軍の番になったところで、索敵範囲の奥からもチョウバク、チョウリョウ隊が姿を現し、俺を含む放浪軍の先陣部隊は、これら敵諸隊と本格的な交戦状態となった。


「地力で押し勝つぞ! 怯まず迎撃だぁぁーー!!」


 頭領である俺が先頭に立って奮戦し、敵の攻撃を撥ね返す。

陳宮、朱桓、甘寧、魏延の士気も高く、被害は最小限に抑えられた。


 6ターン目。天候は雨。雨ならばこの間考案した奥義を試す事ができそうだ。


「行くぞ! 新殿路家奥義・沼住宅!!」


 ガチャ課金に沼った者達によるシェアハウス。それが “沼住宅”。

一度ハマればサンクコスト効果によって中々抜け出せない、業の深い魔宅だ。

そこから日夜響き渡る歓喜・悲鳴を源とし、嬉し涙と悔し涙をまぜた漆黒の雨粒を鎧に纏い、天運に見放され或いは幸運の女神に微笑まれた者達の感情を爆発させるべく…………何を言っているのかよく分からなくなったので、取り敢えず勢いでカシン隊を奇襲する。


「ブギャァァァーー!!?(訳:か、金がー! 雨の様に消えていくーー!?)」


 住宅の基礎となった先人達の思い。沼課金の恐ろしさ、とくと見たかカシン。

彼は自分の所持金が一瞬にして消えた錯覚に襲われて混乱し、それは部隊の状態異常にも反映された。みんなも課金は計画的にね。趣味として思い切れる範疇で楽しもう。






《武将列伝》司馬一派随一の仁者・司馬攸

 司馬昭の三男。初代晋帝 司馬炎の弟。

穏和な性格をしており、多くの者から人望を集めていた。また、学問も深くおさめて聡明であり、政治的手腕にも優れていた。

祖父の司馬懿も司馬攸の事を良く評価しており、実の父親である司馬昭からは特に可愛がられていたという。


ゲーム内の能力値はバランス良く高く、

武力66 知力75 政治72 魅力80 総合ランキング58位。内政能力に長けた万能型といえる。

所持スキルは《仁徳者》《職人の知恵》《弁舌》《混乱》の4つ。


《仁徳者》は魅力の成長最大値を+10するというものだが、司馬攸本人の成長タイプが魅力型で成長幅が20なので、スキルが無くとも魅力100まで上げられる為、実質的に不要スキルである。

戦法はこれといって特筆すべきものがないので割愛。一応《乱撃L3》の乱撃要員。戦功をあげたとかいう逸話がないので何とも言えないが、穏和な性格に反して戦場では派手に暴れるのだろうか。それとも彼を慕う兵士達が修羅となって戦うのかもしれない。


 そして彼を紹介する上で、最も特徴的な能力はマスクデータの野望値。なんと野望0なのである。義理10の野望0なので、忠誠が低くても基本的に裏切らない。

他の野望0武将は、蜀皇帝劉禅とか、孫堅の弟の孫静とか、“竹林の七賢” の王戎(オウジュウ)とか。


因みに、冒頭で「司馬一派随一の仁者」と紹介しているものの、能力値=仁徳という見方で言えば、司馬懿の弟で魏王朝に尽くした司馬孚(シバフ)の方が魅力84だったりする。尚、司馬懿の魅力は87……。

司馬孚は義理14の野望2なので、実は司馬攸以上に裏切りにくい。


他の義理14武将は、関羽の文武を司る王甫と周倉、曹操を逃がす為に戦死した子の曹昂の3名である。この辺りは本当に寝返らないので、亡国の時まで徹底抗戦してくる。ゲーム後半だと周倉の武力が100近くになっていたりするので非常に鬱陶……華々しい。

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