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カシン軍の双璧


7月 個人ターン


 壷関の戦いに敗れた丁原(テイゲン)軍は滅亡し、陥落した上党には放浪軍が入った。

丁原、呂布、穆順(ボクジュン)、魏続、呼厨泉(コチュウセン)、高順、張楊、宋憲という旧丁原軍の武将は全員登用し、新種のUMAことリョフを得た怜華はホクホク顔だった。


 放浪軍は次の目標をカシン軍の洛陽に定め、敵軍の陣容について軍議を開く。


「洛陽軍は22,000。南の宛軍は47,000だ。カシンはおそらく、全軍を城の前に布陣させる戦術を採り、宛軍の増援を待つだろう」


 主将達を前に、今日も今日とて朱桓が軍議を仕切る。もはや恒例である。顔に似合わぬ高齢者なわけでもある。


「我々は今回も《疾風戦術》を採り、敵の態勢が整わぬところを一気呵成に突き崩す。……諸将よ、何か質問はあるか?」


「異議なし」「ファーング」


 全ての将がこの作戦に賛同する。

敵の援軍が多少多くとも、高い機動力を駆使して敵陣に攻め込めば勝機は充分にある事を、今までの戦いを通して理解しているのだ。


「へっへへ、単純でわかりやすいじゃねぇか。関門攻めでもねぇし、籠城される訳でもねぇなら、下手な小細工なんか弄さずに攻めるべきだぜ」


「如何にも甘寧殿の言う通り。この状況を鑑みても、カシン軍に反撃できる策はない。我々は勢いを武器に攻め込むのみだ!」


 甘寧のニヒルな笑みに乗った丁奉に続き、他の将も思い思いに士気を上げる。

凌親子は愛の殴り合いに発展し、諸葛誕は早くも戦勝の餅を焼き始め、顧雍は服を仕立て始める。

なんというか、みんな相当に余裕な感じだった。


「怜華はどう思う? 別段気にするところはないだろうけどさ」


「……強いて言えば、洛陽軍の中にカシン軍の双璧が居る事かな」


「あぁ、チョウリョウとリゲンか。……確かに居るな、洛陽に」


 泣く子も黙る張遼(チョウリョウ)。本来なら丁原軍にいる筈の彼は、このシナリオでは何故か最初からカシン軍に所属している。

その優れた能力値はカシン以上に大将軍という地位が似合い、各国の君主からすれば、喉から手が出る程に欲しい人材だ。


「殿路殿、餅が焼けましたぞ。さぁどうぞ!」


「ありがとう諸葛誕。あーん」


 俺は喉から手を出して、諸葛誕からもらった餅を口の中にしまう。

そして暗闇の中、喉の奥に向けて更にあーん。「殿路式2重あーん」とはこの技を言う。


「気持ち悪っ!? なんで口から手が出てくるのよ! その手は誰のよ!」


「殿路三刀流奥義! 八咫烏(ヤタガラス)!!」


「だからキモイって!? 近寄らないで!それと八咫烏は足! 腕じゃなくて足だから!」


「足だから明日からデーイヂィー!! 武井ティーチャーもびっくり仰天な三点倒立を見ろやぁぁーー!!」


「もう……わけ分かんない。好きにすればいいよ」


 3本腕の化物となった俺は、「斜め45°の視線」という異名で有名な現国教師・武井ティーチャーをして、「なぜメロスは常人離れした精神力で走れたのか」の問いに対して「単純に足が増えたから」という答えを返し、「想像力は認めますが単純に気持ち悪いです」と言われた事を思い出す。


あの時の武井ティーチャーは、仰天の余り両目の焦点が合っておらず、グルグルと逆方向に渦を巻いていた。どう考えてもあんたの方が気持ち悪いとか思ったり思わなかったり。


 話を戻して、双璧のもう片方である李厳(リゲン)(字:正方)。

コードネームを「リゲイン」だったり「リゲン香りのヘアカラー」、「リゲンカラートリートメント」。またの名を「評価を事実に変えた漢」。

かの大軍師・諸葛亮をして、「陸遜(リクソン)に匹敵するデスクリムゾン」。「せっかくだから、俺はこの永安を守るぜ」とは、間違いなく彼の台詞である。


 俺の記憶に刻まれている彼は、280年シナリオの劉備プレイの時だ。

宛で在野の李厳は、開始してすぐに、自ら劉備軍に仕官してきた。

次の月には、同じく宛で在野の息子・李豊を推挙する。

とは言え、劉備軍には彼等以上の化物が多くいる為、さりとて用いる事はなく、李厳は史実同様に永安(劉備軍スタート地点)の守備を任された。


劉備軍はまず、劉焉の治める益州を攻め取り、次に南蛮、次に漢中といった流れで領土を広げていき、東で勢力を伸ばす孫堅軍とは同盟を結ぶ事で安全を確保していた。

やがて劉備軍主力は長安を落とし、西涼の馬騰まで下して、本腰を入れた中原入りを計画するまで至る。 


そんな劉備軍の急成長を危ぶんだのか、突如として孫堅軍が同盟を破棄して攻め込んできたのだ。

決戦の地は、劉備軍の根拠地・永安。図らずしも太守は李厳、攻め手の総大将は陸遜。

永安軍4万に対し、孫堅軍は10万を超える大軍。両軍とも後続の援軍が到着する予定であり、それを含めれば戦力差は五分という状況だった。


だが、運悪く永安は《洪水》(都市災害)の被害に見舞われていた為、援軍の到着は大いに遅れていた。

それはつまり、4万対10万の初戦が長引くという事だ。

この状況を前にして我が軍の李厳は《迎撃戦術》を採用し、最前線に布陣。副将を務める李豊、阿会喃(アカイナン)に向けてこう言った。


「東から来るぞ、気を付けろぉ」


 お前が東に向かっていったんだよ(笑)。普通なら城の前で時間稼ぐとこなのに。


「なんだこの大雨わぁ!?」


 都市災害の《洪水》です。援軍の到着が遅れています。


「李豊、阿会喃。生きてるか!?」


 孫堅軍の猛攻に、なんとか耐え凌いでいます。


「せっかくだから、俺はこの永安を守るぜ」


 こうして李厳正方は、永安を守りきった。

2.5倍の兵力差で援軍到着まで耐え凌ぎ、図らずしも諸葛亮に下された評価の通り、陸遜に匹敵したのだ。

永安の人々はその奮戦を讃えて、親指を立てながら笑みを浮かべる李厳をこう呼んだ。

「評価を事実に変えた漢」と。


「成程な。怜華の懸念、至極尤もである。あの伝説の男がいるんだ。倍の兵力を持っているからって、俺達も油断しないようにしなくちゃな!!」


「「「おおおぉぉぉっ!!!」」」


(……いや、たぶん普通に勝てると思うよ)


 秋渓の部隊操作がそうさせたのであって、CPUにはそんな奇跡起こせないだろうと分かりつつも、せっかくだから上がった士気を萎えさせるような事は言わない怜華であった。







おまけ

《同盟破棄に於ける悪名の上昇値と、町娘(キチガイ)の頼み》


 同盟破棄を行った君主は、悪名が100上昇する。これは連合を脱退した場合も同じで、同盟もしくは停戦関係にあった勢力との友好が著しく低下する。

しかも配下武将の忠誠が1〜5低下するので、よほどの事がない限りは実行しない。


 敢えて実行するパターンを挙げるなら、190年シナリオの華北勢力プレイ。

開始時点で反董卓連合が結成されている為、勢力密集地の華北では自勢力の周囲が殆ど連合加盟国=味方。なので勢力を拡大できず、暫くしたら曹操軍を早々に吸収した董卓が華北まで出張して来て圧倒的な戦力差でケッチョンケッチョンにしてくる。うわ~ん٩(๑´0`๑)۶


というか袁紹軍に至っては、支配都市が1つにもかかわらず、その都市の生産量を遥かに上回る兵力(96,000)を持っている為、9月になると兵糧切れで大抵自滅する。おい連合の盟主! しっかりしろ!

生き残る方法は一つ。自勢力と相性の良い在野武将を大陸中から登用して回り、戦力を整えた後に連合を脱退。かつての味方を裏切り、攻め滅ぼして吸収し、董卓に対抗できる大勢力を築くこと。…………果たして連合を成した意味とは……。


劉備の場合だと東西南北が連合加盟勢力なので、座して死を待つ状態。配下は関羽と張飛のみで、みんな大好き簡雍(カンヨウ)さんは未発見の在野武将扱い。

なので先ずは、人材を集めます。襄陽(ジョウヨウ)には黄忠と向朗が、北海には孫乾が、薊(ケイ)には簡雍が。翌191年には趙雲と龐徳まで登場。これだけ集まれば無問題(モウマンタイガー)。

あとは仁君・劉備の名に傷が付くことを恐れず、兵力が整うと同時に連合を脱退。お隣の弱小勢力をアッーーー♂した後に、市場に現れる自称乞食なVIP爺に金1,000を寄付すれば悪名はチャラです。



 ちなみに同盟破棄で上昇する悪名値100は、仕事中に邪魔してくる町娘(キチガイ)の頼みを断るのと同じ。

治安MAXであろうがお構いないし「町が物騒なんでぇー、ちょっと家まで護衛してくれませんかぁー、クスクス。あっ、仕事は当然できませんしぃー、発生した金も戻りませんからー。それで上司に叱られても私は知りませーーーん( ՞ਊ ՞)。私の護衛メリットわぁ、名声と民心がチリ紙程度に上がるだけでーす。……断った時のデメリットォォォ!!! 貴ィ様はァ! 大陸中から嫌われる極悪人に、なーりはーてるぅぅぅぅーーー!!!!! 登用しようとしても断られ、同盟はおろか友好関係すら拒まれてボッチボッチボッチ!! 民心もめっちゃ下ってヒャッハー!! 仕事効率も大幅低下ザマァ!! ……という訳ですので劉備様。国の行く末を支える内政よりも、私を護衛した方がヒャッハー!!」


…………という事である。悪名値を大きく下げてくれる自称乞食なVIP爺の方がまだ可愛いと思えるほど、町娘は害悪キャラなのだ。


 悪名値で物事を判断すれば、町娘の一存=勢力の外交という図式が成り立つ為、彼女の言う「内政? そんな事よりオレの護衛だ! さっさとしろっ!」は半ば嘘ではない。っていうか董卓よりもコイツに対する連合を成した方が良いだろ絶対。

放浪軍プレイの良いところは、都市内政をする必要がない為、町娘(キチガイ)に遭遇しなくてすむことだったりする。

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