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壺関突破作戦① 司馬一族の放火魔式鍛練


282年7月 軍議ターン。


 このターンで発生した各勢力の動向は以下の通り。

『寿春のソンサクが広陵へ侵攻。広陵がソンケン軍の領土となる』

『弘農のトウタクが連合軍を率いて洛陽へ侵攻。連合軍は敗北し、カシン軍の防衛勝利』


 怜華や朱桓の読み通り、反カシン連合軍は弘農からの洛陽攻めで勢いが停滞した。

攻城兵器も無ければ、統率の取れた城攻めができる訳もない彼等には、鉄壁の函谷関(カンコクカン)を抜くことは不可能に近いのだ。


 さて、次いで俺達のターンになり、放浪軍はいつも通りのプレゼント外交を行う。

楼玄・橋瑁・顧雍・王匡の4名をエンショウの許へ派遣し、兵糧40,000を贈呈する事で友好を88まで回復させる。

やっぱり周到な根回しって大事だよね。どーせ後で滅ぼして贈呈品を回収するんだから、どんどんプレゼントしよう。どんどん友好を高めよう。高めた次のターンにでも攻め落とそう! 攻め落として燃やし尽くそう! ジュラル星人「これから毎日家を焼こうぜ!」

――――――

――――

――


師・昭「「ひゃっはーー。放火魔式鍛練だーー。これからずっと草原を燃やそうぜーー」」


 怜華主導の策の下、上党攻めの第一軍が壺関(コカン)へ向けて出陣した。

陣容は司馬懿・司馬師・司馬昭・司馬望ら司馬一族。各隊2,500の4部隊から成る一万の軍勢だ。総大将は司馬懿、参謀は司馬師である。


 彼等の役目は主に三つ。敵の戦力を偵察する事・《幻術》でテイゲン軍に被害を与える事・放火魔式鍛練で知力を底上げする事。

形だけ上党に侵入するだけで、テイゲン軍とまともに戦うつもりは毛頭なかった。


 尚、「放火魔式鍛練」の詳細は、第52話「燃ゆる戦場、荒ぶる肉体、入り乱れる老若男…………女はないな」を参照してくだされぃ。


「さぁさ皆の衆! 存分に燃やしてくれ! そして消してくれっ! 燃えた面積が餌場となり、消した量だけ経験値となる!! イッツァ・火葬パーティィーー!! イヤァァーー!!」


師「燃えろもエロ萌えろーー」


昭「消えろキェロピエローー」


望「イィィヤァァーーー!! アイィイエエェーーー!? ニンジャ、ニンジャナンデ!?」


懿「……なぜ殿路がおるんじゃ。お主は第二陣じゃろうに」


 お目付け役として参陣する忍者(俺)に、司馬懿は暑苦しさ満点の熱視線を向けてくる。


 一方で彼が大切にする機械人形(オートマタ)姉妹は、戦法の《火殺》によって火の海となった草原を前にして無邪気かつ無機質にはしゃぎ、計略の《消火》を行って大量の知力経験値を獲得。

姉妹の従兄弟、または司馬懿の甥に当たる司馬望は、自慢のカイゼル髭をカイゼル髭る。


「やれやれ、此方はそれどころじゃないというに……。

――あぁーあぁー、師・昭。危ないからもう少し離れて消火せぃ。せっかくの純白ドレスが焼けてしまうぞぃ。子初(司馬望の字)、お主は炎の中に突っ込んでも構わんぞ」


「アヒィィーー!? 相変わらずの甥苛めでビックリマンボウ!?」


「そんな事より司馬懿。“それどころじゃない” ってどういう意味だ?」


「アヒィィーー!? “そんな事より” ってアヒィィーー!? 戦士生命に関わる大事なので――」


「あぁ、子初。お主はちょっと髭でもいじっておれ。……儂はなぁ、殿路。もう少しばかり減るもんじゃと思っておった」


「……21,300だったテイゲン軍が、《幻術》一発で20,431か。確かにもう一声欲しいな」


 幻術!! それは《神算(シンザン)》というチートスキルを所持している武将が大将か参謀の時に、軍議で選択可能となるチート級 策略(アイテム)だ。

天候が曇りの時にだけ発動可能であり、すべての敵部隊を惑わして、混乱や恐慌状態に陥った部隊にはダメージを与える。発動した側の参謀の知力が高く、知力が低い敵武将ほど状態異常にかかりやすい。

戦場にいるすべての敵部隊が攻撃範囲なので、兵力差があっても逆転を狙える上、大乱戦となっている時には戦略的効果が殊更大きいのだ。


欠点といえる欠点は、やはり曇りのターンにしか発動できないという前提条件ぐらい。

ただそれさえも、《天文》というスキルを所持していれば、策略の《天変》でどうにかできたりする。要は天候を変えられるのだ。

尚、司馬懿は最初からどちらのスキルも習得しているので、今回はその《天変》も《幻術》とコンビで選択している。


「開戦早々に曇ってたから、これはいけると思ったんだがなぁ……」


 そして1ターン目から曇りだった為、司馬懿は自慢の360°首回転を見せて幻術を発動。

テイゲン軍は2~3部隊が混乱状態に陥ったらしく、全体で869ダメージを与えた。


 然し、数多の戦場を体験してきた俺や司馬懿からすれば、これは明らかに少なかった。

ダメージの計算方法は不明だが、今までの戦例から考察すると……

①敵部隊の兵数、強いては敵軍の総兵数によってダメージが変動している事から、知力差以外にも、割合ダメージのようなものが働いていると思われる。

↓

②敵軍の総兵数が少ないと、全体に与えるダメージが抑々少なく、敵が大軍であればあるほど効果が大きくなる。

↓

③結果、幻術が最も真価を発揮する状況は、『状態異常にかかった敵部隊を追撃するという戦い方が活きる大軍との戦闘中』という事になり、比較的少数の敵軍が籠る関門攻めは、攻城兵器を用いたゴリラ戦法でウホウホした方が断然早いという事。

↓

④攻城兵器なんてゴリラがないから幻術に頼ってんだよゴリゴリ!! とか言ってはダメ。


「……ともかく、結果を求めるには時期尚早かもしれん。まだ三発は残っておる。腰を落ち着けて……ゆっくり駄弁るとするかぃ」


「それもそうだな。……おっと、これは見事なアンティークチェア。英国紳士が座って紅茶を嗜むような芸術品だ。流石は名軍師・司馬懿。一つ一つの家具から溢れ出る知性。まこと称賛に値するぜ」


 俺と司馬懿は、司馬懿が持参した英国風チェアに腰掛ける。


「首領(ドン)・殿路。それにお父様。紅茶の用意ができました。どうぞ」


「焼菓子も出来上がりました。どうぞお召し上がり下さい」


 すかさず機械人形(オートマタ)姉妹が、紅茶とクッキーを運んでくれた。

どうやら目の前に広がる火炎地獄で、司馬師がお湯を沸かし、司馬昭がクッキーを焼いたらしい。よくやれたな、そんな火事場で。普通黒焦げになるだろ。

そして司馬望は、やはり自慢のカイゼル髭をカイゼル髭っていた。


「さぁてと……二発目の幻術といくかぃ。…………ふぅぅ……ハァァッ!!」


 9ターン目となり、自然に曇った事で司馬懿が立ち上がる。

気合いを込めて自慢の首をグルングルン!! グルングルン!! グルコサミン・コンドロイチン・ヒアルロン酸!! つーか自慢の首って何だよ。ただ単純に怖ェよ。


「「「ヒェェェーー!? 悪魔じゃあーー!?」」」


 遠く離れた壺関(コカン)のテイゲン軍にも、その恐怖は伝わった。

悪魔というか妖力というか、幻術(チートアイテム)。されど “迷信深かった当時のことである。この効果は大きかった” ……とは横○三国志のある戦いに於ける、魏の郭淮(カクワイ)軍を蜀の張嶷(チョウギョク)隊が魔神の姿で惑わした話。


 要は幻術って多分、こんなような事なんだと思う。親愛武将に《妖術》って戦法を伝授する時も、何か新手の邪教集団の儀式みたいなやり方を教えてるし。


「ふぅぅ……。うむ……まぁまぁ削れたわ。一方的に損害を与えられるのは、やはり気持ちが良いのぉ。低脳どもが揃いも揃って右往左往しておるわ」


「テイゲン軍って基本脳筋だしな。テイゲン軍の後も上党に出る武将は皆、武闘派だ」


 知力50の(怜華曰く本当はもっと低い)俺が言うのも何だが、テイゲン軍に知恵者はいない。

いや、本当はいる。後に魏国の五虎将軍となる名将チョウリョウが。


 ただし悲しいかな、演義準拠のこのゲームでは、チョウリョウはテイゲン軍に一度も所属していない。以前にも述べたように、280年シナリオであってもカシン精肉店の店員なのだ。

もし、彼がテイゲン軍に所属し、この壺関に籠っていたとしたら、今回の作戦も上手くいかなかったかもしれないな。


 結局、26ターン目に最後の幻術を発動した時、テイゲン軍は17,259まで減っていた。

その後も士気の低下による脱走兵が出現し、最終的には15,849まで減少する。


 そして30ターン経過後、司馬懿率いる一万の侵攻軍は無事に撤退した。

テイゲン軍21,300 対 司馬一族10,000で始まった一次戦は、テイゲン軍が5,000以上もの損害を一方的に被る形で幕を閉じたのだ。


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