はじまり Ⅲ
翌日、俺は起きてすぐ魔力を消費し、朝食を食べ、いつものように畑の手伝いをしていた。
昨日は洗礼の儀を終えてから5人を送り出した後、ずっと家に居たから気付かなかったが、俺の恩恵のことはすでに村中に伝わっていたらしい。
誰かとすれ違う度に「辛いだろうががんばれよ」と優しく声をかけてもらった。
急いで今日の畑仕事終わらせると、俺は親父の手を引いて畑としてウチに分譲されたが畑にはまるで使えない荒地のスペースにやってきた。
「確かにこの栄養もねぇ固いだけの地面を畑に使えるようにできたらすごいことだが……」
「それが出来るのが俺の魔法だよ。まぁ親父、騙されたと思って木の枝とか雑草とか腐った野菜とかここに集めてきてくれよ」
俺は不安そうにする親父にそう言って、ここに来るまでに拾ってきた木の枝や草をその場にばら撒いて、収穫用のかごを背負い森の方へと走り出した。
森の入り口で木の枝や葉っぱ、草などをかごにいっぱいになるまで詰め込んだ俺が元の場所に戻るとすでに親父が戻ってきていた。
「種にしようとしたが湿気で腐っちまった野菜だが。本当にこんなんでいいのか」
「大丈夫、大丈夫」
かごをその場にひっくり返して、親父に離れてみてるように指示を出す。
イメージは昨日眠りに落ちる瞬間まで考え、今日もさっきまでずっとしていた。
固まった大地をほぐし、拾い集めたものから栄養を貰い、畑としてよみがえらせる。
俺が大地に手を当ててから数分の時間が過ぎた。何も起こらないまま過ぎる時間に耐えかねて親父が声をかけようとする。
「おい――」
その瞬間、俺の手を当てている場所から前方の大地が波打つように揺れ始め、拾い集めて山となっていた草や木などは炎をあげて燃え上がり始めた。
燃えて灰になったものが波打つ大地に飲み込まれていく。そうしてしばらくすると突然大地が波打つのを止める。
その大地は畑として現在使っている場所よりも良い黒くさらさらした立派な土壌に変わっていた。
「ふぅー、思ったより広がらなかったなー。この広さだとさっきの2倍は集めてこないと全部畑にできないな。なぁ親父?」
ひとまずの成功に喜びながら俺は振り返りながら親父にそう言うと、驚いた表情のままで固まっていた親父がゆっくりと俺に近づいてくる。
「すげぇじゃねぇかマホーの恩恵!」
親父は興奮しながら俺の頭を乱暴に撫でる。
「いてぇよ親父。それより次の分集めてくるぞ」
「おう、俺に任せろ。今度はオズの分も集めてきてやる、お前はここで休んでろ」
そう言うと上機嫌な親父は慌しくその場からいなくなった。
◇◇◇
俺が村所有の荒地を栄養ある土壌に変え始めて1ヵ月がたった。
村には荒地がなくなり豊かな畑が広がっている。そして畑の脇には水路ができて、絶えず水が流れている。
水路は俺が魔法で作った。水は魔法で見つけた地下水脈を魔法で吹き出すようにして、そこにできた池から流れてくるようになっている。
村に住む人はみんな、俺が未知の恩恵を使えるようになったこと知っている。
神父様も興奮気味に俺を訪ねてきて俺から聞いた話をまとめて神聖国の聖地に手紙を送ったらしい。面倒なことにならなきゃいいけど。
けどまぁ神聖国まで手紙送ったとしても最短で半年かかる。そこですぐ使者が送られれば1年だが、おそらく話し合いの後手紙もしくは神父様を呼んでの詳細確認の後になるだろうからきっと何かあっても数年先の話になるだろう。
俺の村改造計画にはなんの支障もない。
俺は今、村長と二人で話をしている。
内容は外壁と門を作ることと、洗脳した魔物を飼い、繁殖させて狩り以外で肉を得てはどうだろうかという話だ。
外壁と門の話は村長はすぐに許可をくれた。村全体を囲み、畑なども外壁の中に納めて安全に作業ができ、作物も魔物に荒らされないようにするのは村長としても理想だったようだ。
しかし洗脳した魔物を飼育する話は、まだ俺の魔法に対して「そんなことまで本当にできるのか?」という気持ちが強く、村の長としては許可できないとのことだった。
なので俺は外壁、門を作った後で外壁の外で試しに数頭洗脳してみせ、それが大丈夫だったら村に魔物の牧場を作ることを許可して欲しいとお願いして、なんとか村長の許可を貰った。
外壁を作るのは今の俺には簡単な話だ。許可をもらった翌日には村全体を厚く高い壁が囲んでいた。
門は村の鍛冶職人、トマの父親のゴルマと相談しながら作ることになった。いつも門の開閉に俺が立ち会うことは出来ない。中にいる誰にでも開閉ができ、しかし外からでは簡単に開けれない。
そんな門をゴルマと一緒に考えたが結局思いつかず、片側だけで大人5人の力でようやく動く扉が2つで両開き門ということにした。
すぐに村長に外壁と門を確認してもらい、許可を貰ってから外壁の外に簡易な柵を作って、狩人の大人達にお願いして捕獲してもらっていたウシ型の魔物モームをその中に入れた。
傷ついた状態で捕獲された3匹のモームを魔法で治したあと洗脳の魔法をかける。洗脳にかかったら右前脚を上げて首を縦に何度も振る様に指示すると3匹ともすぐに言った通り行動した。
1匹1匹魔法をつかって調べると予想外のことが起きていた。洗脳するつもりがモームは改造されてしまったのだ。食肉にもなり牛乳もとれる、温厚で暴れることはなく、仔を増やしやすい新種の魔物モーム改が出来てしまった。
当然、長い時間を必要としないで村長は村の中に牧場を作ることを許可してくれた。牧場は怪我で狩りのできなくなった狩人だった人達を中心に運営されることになった。
元狩人仲間の働き先になると知った狩人達は、モームを次々に捕獲してくるようになった。
ただでさえ増えやすく改造しているモーム改がどんどん増えていくのを見ながら、俺は少し不安を覚えつつも、牧場事業を受け入れられたことに一安心するのだった。




