第13話 「暗殺者、採用」
「……話がある」
夜。
静かな路地。
暗殺者が、いつものように“殺気なし”で立っている。
「今日は投げてこないんだな」
「……やめた」
「そうか」
(成長したな……方向性はともかく)
■ 本題
「なぜだ」
「何が」
「なぜ、殺さない」
一拍。
「コスパ悪い」
「……は?」
「お前、何回も来てるだろ」
「……」
「そのたびに失敗してる」
「……」
「時間も労力も無駄だ」
「やめろ現実を突きつけるな」
■ さらに追撃
「で、今はどうだ」
「パン食って、酒飲んで」
「……」
「ちょっと働こうか悩んでる」
「見てたのか」
「そりゃな」
「……」
■ 選択
「で」
「続けるか? 暗殺」
「……」
「それとも」
「働くか?」
沈黙。
■ 過去
「……私は」
「幼い頃に売られた」
レオ、息をのむ。
「暗殺者として育てられた」
「それしか知らない」
「他の生き方を知らない」
一拍。
「じゃあ覚えればいい」
「……簡単に言うな」
「簡単だ」
「まず朝起きる」
「当たり前だ!」
「次に働く」
「雑だな!」
「給料もらう」
「……」
「パン食う」
「そこ重要なのか」
「重要だ。人は食うために仕事をする。
しかし、その仕事は安全で楽しい方がよいに決まっている。」
■ 名前
「名前は?」
「……ない」
「コードネームはある」
「なんだ」
「“ナイン”」
「番号かよ」
「じゃあそれでいい」
「いいのか」
「管理しやすい」
「やめろその理由」
■ 採用
「じゃあナイン」
「今日から――」
「うちの人間だ」
「……」
「仮採用な」
「それ気に入ってるのか」
■ 翌日
「支店長!」
「だからやめろ!」
「問題です!」
「なんだ」
「暗殺者、普通にいます!」
「知ってる」
ナイン、窓口に立っている。
「いらっしゃいませ」
「接客してる!?」
「慣れた」
「適応力高すぎる!」
■ 新役割
「ナイン」
「はい」
「今日から護衛だ」
「護衛……」
「殺す側から守る側へ」
「逆だな」
「慣れろ」
■ 能力
「試すぞ」
レオが木の棒で突く。
スッ。
ナイン、完全回避。
「速っ!」
「……遅い」
「今の速い方なんだが!?」
「使えるな」
(これは当たり人材だ)
■ 不穏の核心
「で」
「誰に雇われてた」
ナイン、少しだけ間を置く。
「……複数」
「だろうな」
「だが」
「最近は一つに絞られていた」
「どこだ」
一拍。
「……貴族派」
「やっぱりか」
■ 引き
その夜。
「……裏切り者め」
暗い部屋。
「始末する」
複数の影が動く。
■ 翌日
「支店長!」
「だからやめろ!」
「新しいあだ名です!」
「もう聞かない!」
一拍。
「人も金も回す勇者」
「やめてくれ……」
(でも)
(間違ってはいないな)




