2.学園にて①
「幼馴染の所に向かおうとしたのを、精霊術で無理矢理押さえつけたらしいわよ」
「なんて野蛮なの、お気の毒なキャフル様」
「幼馴染を愛されてる方を、家の都合を盾にして婚約で縛るなんて」
「いい加減、解放して差し上げたら良いのに」
王立学園のカフェテリアで友人を探す私の耳にちゃんと入るように、タイミングと音量を調整して話しているであろう声が聞こえる。
現在のヒースは、艶やかで長い水色の髪に琥珀色の瞳をした美青年であり、精霊術科の成績上位クラスに名を連ねる人気者。
対して私は深みのあるオリーブ色でゆるく波打つ髪に栗色の瞳をしており、やや埋没気味の色味に埋没気味の可もなく不可もなくの面相。
私も精霊術科の上位クラスには名を連ねているけれども、それ以外のクラスや他学年の華やかな色味や容姿のお嬢さん方からすれば、彼の隣に立つには相応しくないと見えるらしい。
今更持ち上げた所で、ヒースが彼女達を見る事はないから、私がそれを気に掛ける事もないのだけど。
そもそも、彼女達が『ヒースの幼馴染』に対してどれほどの事を知っているのかも疑わしいんだよね。
なんかヒースと幼馴染が恋仲であるという設定のようなんだけど、へぇ…恋仲…。
そんな事にはならないと断言するつもりはないけど、ヒースと幼馴染が恋仲になった場合には速やかに教えて欲しい気持ちはある。興味があるので。
「サフィこっち~」
窓際の良い席をちゃっかり確保した友人が手を振っている。
丸テーブルの上にはまだ何の料理も置かれていないので、注文を待ってくれているらしい。
最短距離を移動して、友人の向かいに座る。
「お待たせレティ、今日のおススメメニューは?」
「今日はねえ、海ランチの白身魚が肉厚でおすすめってきいた」
テーブルに表示されているメニューを選んで、テーブル下に取り付けられている決済箱に食券または現金を入れると注文完了。
メニューの上に転送陣が展開され、注文した料理がすぐ転送される仕組みになっている。
魔術と精霊術の複合技術が素晴らしい、と以前にレイナが言っていたが、説明されても全くわからなかったなあ……。
「そういえば、レイナの具合はどう?」
「大丈夫だよありがと~、ほとんど外出しないのに、外出すると変な病をひっかけてくるのはあれもう才能だと思うんだよね…」
レティはレイナの双子の妹だ。二卵性なのに容姿はそっくりで、真っ直ぐで長い金髪に、ややつり上がった目は鮮やかな緑色をしている。
尚、この国で双子の扱いは『先に生まれた方が二人目、後から生まれた方が一人目』となっているが、レティは「先に生まれたのは私なんだから、私が姉だと思うんだよね」とレイナの面倒を見るのに余念がない。レティが変わってるんだろうなあとは思っている。
昔は二人共病弱だったのだが、レティは病気の快癒と共に健康体になった。レイナの方も病気は快癒したが、他の病に罹患しがちな体質であったようで、現在は基本的に敷地内でのみ生活している。
必要があって敷地外に出ると、高確率で今回のように病を拾ってきてしまう。どうにかその点を改善できると良いのだけれど。
「まあ…ヒースにとっては称賛すべき才、でしょうねえ」
「サフィも大変だね」
「お互い様よ、それに誰も悪くないからしょうがないわ」
二人して苦笑しながら息を吐く。仕方ない事ではあるし、悪い事ばかりではないのも確かなので。




