9 八方ふさがりとはまさにこのことだ
「なんだ、今回の勇者はやけに弱そうだな」
ハッと我に返ると、僕は謁見の間にいた。目の前には王様がいて、そのよこに宰相コワルスキーが立っている。
前回のタイムループを反芻する。僕はライミと共にお城から出て、街を歩いていた。そして、ライミが話している途中で僕は走り出した。ライミは悲しそうな目で謎のスイッチを押した。耳元で警告音が鳴ると、僕の頭が爆発した。
僕は両手で自分の頭を触る。そこには爆発していない僕の頭がちゃんとあった。ライミのスイッチは僕の頭を爆破する起爆装置だったのだ。僕の頭に爆弾が仕掛けられているのだろうか?
王様と宰相の話はほとんど僕の耳には入ってこなかった。
謁見の間を出ると可愛い白うさぎのライミが直立して僕を待ち構えていた。
「あたしはうさぎのライミ、よろしくね」
こんなかわいい見た目をしているのに、前回は容赦なく僕の頭を爆破しやがったのだ。きれいな花にはとげがあるとはよく言うが、可愛いうさぎには起爆スイッチがあるとは思いもよらなかった。
「ぼ、僕はマサル。よろしく」
引きつった笑顔で自己紹介する。
「緊張しているのね。あたしがあなたの案内役よ」
城を出て、ライミと共に街の中を歩く。
「まず、あなたの適性を見るわ」
「ねえライミ、ちょっと質問があるんだけど……」
「なに? なんでも答えるわ」
「もし、これはあくまで仮の話だけど、もし僕がいまこの場から駆け出して逃げたとしたら、どうなるんだろう?」
「そんなことは絶対にしないで!」
悲しそうな目でライミは叫んだ。
「いや、そんなことは絶対にしないけど、もしもの話だよ。僕が魔王討伐を拒否して逃げだしたら……」
「その時はこのスイッチを押すわ」
ライミはポケットからスイッチを取り出して僕に見せた。前回僕の頭を爆発させたやつだ。
「まさか、そのスイッチを押すと僕の頭が爆発するとか?」
「なぜそれを知っているの!?」
ライミが赤い目を見開いて僕の顔を見る。
「あてずっぽうで言っただけだよ」
「そうよ、このボタンを押すとあなたは死ぬわ。だから逃げないでね」
「もしも僕がそのスイッチを強引に奪ったら?」
「それは無駄。スイッチがあたしから一定の距離離れたら、自動的に起爆される。あたしが死んでも同じよ」
ライミから逃げたらスイッチを押されて起爆。ライミからスイッチを奪ったとしても、ライミから一定の距離離れたら起爆。ライミを殺しても起爆。
はあとため息をついてその場にうずくまりたい気持ちになった。魔王討伐をする以外に僕には生き延びる道はない。しかし魔王は強すぎて絶対に勝てない。八方ふさがりとはまさにこのことだ。




