6 地下牢の謎の人物
「ひょっひょっひょ、ルームメイトができただわさ」
僕が地下牢にぶち込まれると、そこには先客がいた。見た目は中学生ぐらいの美少女だった。長い黒髪で丸メガネをかけ、黒いローブを着ている。
「君は?」
僕は尋ねる。
「あちきは大魔法使いゲルニカだわさ」
丸眼鏡の美少女はそう言ってほとんど膨らみのない胸を張った。
「大魔法使い? その年で?」
「年は関係ないだわさ。お前は何をしてぶち込まれただわさ? 盗みか?」
「僕は勇者としてこの世界に召喚されたマサルだよ。魔王討伐に行きたくないから逃げようとしたら近衛兵につかまってここにぶち込まれたんだ」
「ひょっひょっひょ、勇者が逃げ出すなんて、これは傑作だわさ」
「笑い事じゃないよ。魔王はめちゃくちゃ怖くて、めちゃくちゃ強いんだぞ」
「ん? お前、まるで見たことがあるみたいな言い方だわさ」
「そうさ、僕は一回魔王討伐に行ってぶち殺されたんだ」
「一回ぶち殺された? じゃああちきの目のマイにいるお前は幽霊か?」
「そうじゃないよ。僕はこの世界に召喚されたことによって、ユニークスキルの『タイムループ』を獲得したんだ。このスキルは、殺されると時間が巻き戻って、もう一回同じ時間を繰り返すことができるんだよ」
「なかなかすごいスキルみたいだわさ」
「時間が巻き戻ったところで、僕自身が強くなるわけじゃないからどうにもならないよ。もう一回挑んだって殺されるのは火を見るよりも確かなんだ。だから僕は魔王討伐を拒否したんだ」
「理にかなってるようだわさ」
「ゲルニカは何でここにいるの?」
「あちきは王宮に泥棒に入ってつかまっただわさ」
「大魔法使いなのに泥棒? お金を盗もうとしたの?」
「お金を盗もうとしたんじゃないだわさ。あちきが盗もうとしたのは、王宮の宝物庫にある魔導書だわさ。その魔導書を手に入れたら、すごい魔法を使えるようになるだわさ」
「へえ」
「まあ、そのついでに金目のものもちょっとだけもらおうとはしてたんだわさ。ひょっひょっひょ」
「僕はこれからどうなるんだろう?」
「まあたいてい死刑だわさ」
「死刑?! そんな……まさか……」
「あの国王ダニングクルーガーならやり金んだわさ。そもそもお前はこの国の人間じゃないだわさ。魔王討伐を拒否したお前を生かしておく理由がないだわさ」
「裁判とかはないの? そうだ、敏腕弁護士を雇えばいいんだ!」
「ここでは国王の言うことは絶対だわさ。人権なんてないだわさ」
僕はその日の真夜中に地下牢から連れ出され、満月の下の処刑場で、人知れずギロチンで首を落とされた。自分の首が胴体から切り離されて地面を転がる感覚を感じた直後に意識を失った。




