5 タイムループする
「なんだ、今回の勇者はやけに弱そうだな」
謁見の間の豪華な椅子に座る小柄な老人が僕をしげしげと眺めながらそう言った。頭の上にちょこんと王冠が乗っている、僕に魔王討伐を命じた王様だ。
「あれ? 僕は難でここにいるんだ? 死んだはずなのに……」
学生服を着た僕は自分の体を点検する。さっき魔王に一瞬で肉塊にされたはずなのに、五体満足で傷ひとつなく、自分の足で立っている。ただ、さっきまではピエロの格好をしていたのに、いまは学生服になっている。
「王様、こやつは一見弱そうに見えますが、必ずや魔王を倒しこの王国に平和をもたらす者です。間違いありません。この宰相コワルスキーが保証しますぞ」
王様の隣に立つ、やたらと背が高くて頭が禿げた男がうやうやしく言った。宰相のコワルスキーだ。
王様は疑り深そうに横目で宰相を睨む。
「毎回同じことを言って、こいつでもう5人目だぞ。これまでの4人は魔王城にたどり着く前に死んでしまったではないか」
「いや、今回こそ間違いありません。こやつこそが真の勇者でございます」
「あのう……僕はさっき魔王討伐に出かけて、魔王に一瞬で殺されたんですけど……」
「ああ、君、君は何という名だね?」
宰相が僕に尋ねる。
「僕は山本マサルだよ。前にも自己紹介したでしょ」
「そうか、勇者マサル殿。突然こんなところに召喚されて混乱しているのだろう」
「混乱しているのは混乱しているんだけど……あれ? なんか同じことを繰り返しているような……」
「君は勇者に選ばれたんだよ。光栄なことだぞ。魔王を倒した暁には、巨万の富と名声が君の物になる」
「やっぱりそうだ! もしかして僕だけ時間が巻き戻ってる?」
宰相コワルスキーは僕の混乱などお構いなしに一方的に説明をした。ここは僕がいた世界とは別の世界であり、僕はこの世界のモンスターたちの王である魔王を倒すために、この世界に召喚されたのだと。以前もうすでに聞いて知っている話だ。
そういえば僕のユニークスキルは『タイムループ』だった。これはきっと死んだら時間が巻き戻って、やり直しができる能力なのだろう。……ちょっと待てよ。このままだと僕はまた魔王討伐に行かされて、さっきと同じように魔王に瞬殺されるだけだぞ。
「僕に魔王討伐なんて無理だよ。一瞬で殺されて肉片にされてしまうよ」
「大丈夫、勇者として召喚された君には、特典として特殊能力が発動するのだ。その能力を使って魔王を倒せばいい」
「時間をまき戻して何度挑んだって同じだよ! 僕は絶対に魔王討伐になんて行かないぞ!」
僕は回れ右をしてドアに向かって走った。殺されるとわかっていて魔王討伐なんて行くものか。逃げ出してやる。
「や、勇者が逃げたぞ!」
王様が叫ぶ。
「兵たちよ、勇者をとらえろ!」
宰相の命令で槍を持った近衛兵が素早く僕を取り囲んだ。僕はあっけなくつかまって地下牢にぶち込まれた。




