3 装備をそろえる
鍛冶屋には小柄で筋肉質な男のドワーフだった。白いひげを長く伸ばしているが、顔にしわは少なく、年齢がわかりにくい。そもそもドワーフだから、人間とは年の取り方が違うのかもしれない。
「わしは鍛冶屋ヘパイストス。お前、新しい勇者か?」
「僕は勇者マサルだよ」
「わしがお前のために武器をこしらえてやる。これまでの勇者にもそうしてきたからな」
「ありがとう」
「それで、お前の適性はなんだ? それによって作る武器が変わる」
僕は両手の人差し指の先を合わせて内またになり、もじもじした。
「どうした? おしっこでもしたいのか? それともうんこか?」
「ちがうよ。実は、ちょっと言いにくいんだけど……」
僕が言いにくそうにしているのを察して、ライミが横から答えた。
「マサルの適性は遊び人よ」
「なんだと! 遊び人? 今度の勇者は遊び人なのか?!」
「そうよ」
ヘパイストスの顔が赤くなった。僕はてっきり怒られるのかと思って肩をすくめた。しかし次の瞬間、彼は大声で笑いだした。
「がっはっはっはっは! 勇者が遊び人とは傑作じゃ!」
「あはは……実はそうなんだ」
「遊び人でもマサルはれっきとした勇者よ。ヘパイストス、マサルのために武器を作って」
「もちろん作ることは作る。勇者に協力するというのは王の命令だからな。だが遊び人用の武器となると……まあ出来たら届けてやるから宿屋で待っておれ」
僕たちは鍛冶屋を後にした。
「次はどこへ行くの?」
僕が尋ねるとライミは答えた。
「防具屋よ。あなた用の防具を作ってもらうの」
「なんだか嫌な予感がするよ」
僕の予感は的中した。防具屋の店主は太った中年女性だったが、僕が遊び人と知ると、爆笑した。僕は、穴があったら入りたいようないたたまれない気持ちになった。
店主は僕の体のサイズを測り、出来上がったら届けるからと、鍛冶屋と同じことを言った。
食堂で食事を済ませてから宿屋にチェックインした。装備が届くまで特にすることもないから、ベッドに寝転がってライミと話をした。この世界のことを色々教えてもらった。
僕が質問をすると、彼女は何でも饒舌に答えてくれた。しかし、僕の前に召喚された4人の勇者の話になると、天岩戸に閉じこもった天照大御神のごとく、ライミはぴたりと口を閉ざしてしまった。
「ごめんなさい、そのことはあまりしゃべりたくないの」
前の四人の勇者もライミが案内をしたのだろうか? その時に彼女は何を見たのか? 気にはなったけど、それ以上僕は質問をしなかった。
夕方になってから僕の装備が届けられた。
包み紙を開けて、それを見た僕は、頓狂な声をあげてしまった。
「な、なんだこりゃ!」
防具屋から届いたのは、サーカスのピエロが着るみたいな赤と白のストライプのだぼだぼのつなぎと、てっぺんにボンボンが付いた三角の帽子で、鍛冶屋から届いたのはピコピコハンマーだった。
「こんなのでどうやって魔王を倒せっていうんだ!」




