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プラトニック ラブ  作者: 伊咲 汐恩
第八章
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警報が出るほどの大雪




ーーKGKがメディアから姿を消した2年後の、2月中旬。

冷凍庫の中にいるような冷たい風が、大学に向かう私の鼻の奥をツンと刺激した。


今日は昼から大雪警報が発令されている。

外気で身体を冷やさぬようにとマフラーと手袋を装着して暖かい服装をして玄関を出た。



大学の最寄駅に到着すると、空から舞い降りてきた小さな粉雪が黒いコートに付着した。

頬に触れた雪はあっという間に雫に変身。


大学で講義を聴きながら窓の外に目を向けると、雪の粒は更に大きくなっていた。

景色が徐々に銀世界に染まっていくと、小学5年生の時の声楽教室の最終日の帰り道で、彼がお別れの時に言っていた言葉を思い出した。




『足首が浸かるくらい大雪が降ったら、俺達はまた会おう』




それを伝えられてから、約6年後の大雪の日に、通っていた高校の保健室で偶然彼と再会。

あの時彼に会う事が出来たから、雪が降ってるだけでもまた彼に会えるんじゃないかと期待してしまっている自分がいる。


もう二度と会えないのに……。



ーーここは、大学構内にある学食。

今は友人の 由莉(ゆり)と一緒に学食でランチをしている。

向かいに座る由莉は、料理に箸を突っつきながら窓際の席から外の景色を眺めた。




「久しぶりの大雪だねぇ。景色が一気に銀世界に変わったね」


「朝はそんなに降っていなかったのにね。こんなに寒い日は、熱々のおでんが一番!」



「わかる〜。フーフーしながらね。……あれ、でもいつ以来の大雪だっけ? 去年? 一昨年?」


「2年ぶりかな。あっ、それより電車が動いてるか、スマホで電車の運行状況を検索してみるね」




紗南はテーブルに置いているスマホで検索を始めた。




「検索しなくていいよ。テレビでワイドショーが放送されているから、テロップで流れている交通情報を確認してみようよ」




由莉はそう言うと、左方向にあるテレビ画面の方へ指を向けた。

紗南は言われた通りに目を向けると、現在放送中のワイドショーの画面下には交通情報のテロップが流れていた。




「本当だ。交通情報のテロップが流れて………る………」




……と、紗南がテレビ画面に目を向けた瞬間、衝撃的な映像が目に飛び込んだ。


現在放送中のワイドショーに映し出されていた映像。

そこには、アメリカから帰国したばかりのKGKの姿があったから。


黒いキャップを目深く被ったセイは、空港の動く歩道で報道陣からのインタビューに答えている。

2年前に茶髪だった髪は金髪になって、今も2年の時を感じさせないほどの輝かしいオーラを放っている。


留学は2年間と聞いていただけに、予定より少し早めの帰国に正直戸惑った。

久々に彼の姿を瞳に映すと、信じられない気持ちでいっぱいに。




「う……そ……」




高2の3月初旬に出発したから、帰国するのは3月だと思っていた。

帰国までのカウントダウンは始まっていたけど、まさか2年経たないうちに戻ってくるなんて。


すると、由莉は頬杖をつきながら関心を寄せた。




「へぇ〜、KGKが帰国したんだ。何年振りだっけ。デビュー当初からヒット曲を連発してたよね。今でもカラオケで歌ったりするよ」




紗南は話が耳に入ってこないほどモニタ一1点に目線が集中していた。

しかし、座席が遠いせいか、インタビューで何を喋っているかわからない。


画面右上には午前11時頃と白文字で表示されているので、いま流れてる映像は1時間半近く前のビデオと判明。

今はもう別の場所に移動している可能性がある。

一体何処へ……。



インタビューは終盤に差し掛かると、動く歩道で移動中のセイの後ろ姿はテレビ画面の右側へと流れて行った。


……が、次の瞬間。

セイは振り返ってカメラに目線を合わせると、まるでいま紗南がテレビを観ている事を知っているかのように、指先を象って2年ぶりのエスマークを見せた。

それは、1〜2秒程度の短い出来事だった。



紗南は2年ぶりのエスマークを見た瞬間、固い殻を身にまとい続けていた気持ちに追い風が吹いた。


トクン…… トクン……


恋が順調だったあの時と同じく胸の鼓動が高鳴る。



私……、行かなきゃ。

セイくんが日本に戻って来たから会いに行かなきゃ。


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