第7章 ヴェンビック山
第7章 ヴェンビック山
カ・リューは満腹になった腹をポンポンと叩いて「腹八分目にしとこうと」呟いていた。
御馳走してやると言ってしまった女店主は山になった空皿の束をポカンと見つめて呆気にに取られていた。喫茶店の食材全部を食べてしまったのではと、リューを中心にケントらはおろか他の客からも視線が集まっていた。
「・・・・・・あ、あの、本当にお代払わなくてもいいの?」ミカが肩をすくめて恐る恐る聞いた。
「え・・・?あ、あぁ・・・いいよ―――これでライヤードが元通りになるんだったら安いもんさ」
ミカの声にリューに意識を向けっぱなしだった女店主が、少々遅れて返答すると「やれやれ」とわずかながらに息をついた。
「・・・・・・・おい、なんか完全にドラゴンのこと託されてるぞ?」ケントがひそひそとストログに聞いてみた。
「俺は知らんぞ――やるんならお前らだけでやるんだな」しかし最強の傭兵からは冷たい返しがあるあだけであった。
そんなストログに「いーッ!」と威嚇の顔を見せるケント。と、ちょうどそこへ「ごちそうさま」と丁寧に挨拶を終えたリューが椅子を降りて、ケントへと近寄ってきた。
「ケント!腹いっぱいで準備万端だ!さぁ!ドラゴン退治いくぞ!!」
カリューがパスタソースを口元に付けた顔で、自慢のブーメランを掲げて言った。
その声にケント、ミカ、ストログ、シャシャリと、ドラゴン住まう危険な山を超える覚悟を改めて決めるのだった。
「・・・リュー・・・退治するんじゃないぞ?できるだけ穏便にだな・・・」ケントがリューの言葉を訂正した。
「うん!わかった!オンビンにぶっ倒す!!」リューは、ニッコリ笑って答えた。
周りからは乾いた笑いが聞こえた気がした。
※
一行は女店主に感謝の言葉を繰り返して、ようやく町を発つ準備を整えた。
ストログを先頭に町の出口の方へとズンズンと進んでいき、同時に越えるべき山がどんどんと近づいて見えてくるのにケントはゲンナリした顔を見せていた。
「ドラゴンは・・・いまのところは・・・見えないな――」
キョロキョロと山のあたりを見渡しては警戒心を最大限にケントが呟く。
流れ的にドラゴン討伐の雰囲気になっているが、目的は山を越えターミナルを目指すことだ。女店主や町の人々には悪いが、ライヤードなる凶暴なドラゴンの対処は二の次になってしまうことは心もとないことであり、少々の罪悪感が生まれていた。
「・・・とはいえ、あれはさすがに倒せんよなぁ」
遂には町を抜け、再び野原の道を往くかたちなったぐらいでケントはため息をついた。
また一段と山は近づいている。少し目を凝らせば山道の入り口部分にあたる看板だって見えている。
野原に吹く荒い風が時折、唸り声のように聞こえては気持ちをまた一段とざわつかせた。
と、そこへ。
「ちょっとケント、さっきからビビり過ぎよ」ミカが声をかけてきた。
それに振り向いては渋い顔をして返すケント。
リューは臆することなく狩猟する気満々で笑顔さえ作っている。ストログは「相手にする気などない」と言った感じでドラゴンなど眼中になく突き進んでいる。
唯一、シャシャリは恐れのせいか、パーティーの少し上空を飛んでついてきており、すぐにでも逃げ果せる位置を保っているは確認できた。
「・・・お、おまえはビビッてないってのかよ?」反対にケントがミカに聞いた。
「当然でしょ。あんなのでっかいトカゲよ。それにこっちにはナンバー1傭兵だっているんだし、どこにビビる必要が」
ゴアアアアアア!!
瞬間、唸り声のようなものが響き渡って、ミカが肩をすくめた。
「ヒィイイイ!!」
およそお嬢様とは正反対な悲鳴をあげてミカが飛び上がると、そのまま恐れのあまりにケントに抱きついたのだった。
「・・・ど、どど、ドラゴッ!!」
「落ち着け、ただの風だ――お前こそビビりすぎだぞ?」
抱きついて目も瞑ったままのミカに今の唸り声が、ただの荒々しい風の音だと報せたケント。ミカは「へ?」と気を落ち着かせると同時に、なんどか目をパチクリしては現状を確認した。
「・・・ッ!?なに抱きついてんのよ!変態!離れなさいよ!!」
ドゴスッ!
瞬間、ケントの鳩尾をミカの拳がコークスクリューとなって襲い、彼の呼吸器へのダメージを与えた。
「・・・――抱きついた・・・・の・・・そっち・・・ガハッ!ゲホ!」絞り出した声が限界を迎えてむせ返した咳の連続に変わってしまう。
「そんなわけないでしょ!・・・まったく私が可愛いからって隙あらばセクハラしようとするのはサイテーよ!」
「・・・サイテー?」
と、そんな理不尽な言葉を並べるミカにリューが食いついた。
「ケントはまたサイテーなのか?」「そうよリューちゃん、だからこんなやつのお嫁さんはやめときなさい」「ふーん」
女子間でケントの評価がだだ下がる中、前の方からはストログの「遊んでるんじゃない」と静かな叱咤がとんで、進むべき山道へと改めて進みだすのだった。
※
標高にすればどれくらいだろう。改まって山の高さなど測ったことなんどないなと、ケントは山の麓までやってきては呟いやいた。
近づいてわかる険しい山の顔。無論、ここらに住まう人々の山岳通路もあるのだが、ライヤードの徘徊によってしばらくは使われておらず、通路は整備の行き届いていない粗々としたものになっていた。
「こ、これを昇るの・・・」ミカが思わずつぶやいた。
よもや本格的な山登りになるとはと、一気に元気がなくなってはため息が漏れるミカは「うへ~」と言っては肩を落とした。
と、そんなミカを他所に山を睨んでいたストログは一歩踏み出たかと思うと、突然にリューの襟元を掴んではそのまま持ち上げて己の肩に担ぎあげたのだった。
「ほえ?」驚いて目をパチパチさせるリュー。
「まともに登るつもりはない」
瞬間、ストログが足元に薄っすらと青いオーラを纏わせたかと思うと、そのまま超人的なジャンプを行って一気に山の3分の1ほどを駆け上がってしまったのだった。
慌ててシャシャリも飛行速度を最高にしてストログを追いかけては山の斜面を飛び上がっていく。
「ははーん、なるほど・・・ストログめ利口なやつだな」
既に点のような小さになって斜面に立つストログを見上げてケントはポンと手を打つと、ミカに振り返って「俺たちも行くぞ」と促した。
「・・・なんだよ、さっさとしろよ?ストログみたいに肩に乗せるのは無理だけど、背負って行ってやるからさ」
が、なぜだかミカは非協力的であった。
「だ・・・だって・・・おんぶだと・・・その・・・当たっちゃうじゃない・・・」
「・・・・・・?なにがだよ?当たるもんなんてないだろ?」
バキィッ!!
銃の柄による渾身の一撃がケントの後頭部を襲い、彼を涙目にした。
「何すんだ!!ドラゴンに会う前に殺す気か!?」
「あんたがサイテーなこと言うからでしょ!!」
いがみ合う二人の声が上で待つストログ達にまで届く。
「じゃあどうすんだよ!まともに歩く気か!それともオーラで固めてぶん投げればいいのか!?」
「なんでそんな乱暴なやりかたしか出てこないのよ!」
「だったらなんかあるのかよ!」
「え!・・う・・・うーん―――そ、そうね・・・」
ケントに言われて言葉が詰まってしまったミカだったが、少しだけ頭を捻ったかと思うとすぐに手を叩いて「そうだ」と呟いた。
※
険しい山の表面を赤と青の靄がピョンピョンと跳ねていく。
ケントとストログである。お互いにオーラを足に集めて脚力を上昇させては、岩場を蹴って蹴っては移動していく。もちろんシャシャリも遅れまいとテントウムシ型の羽を全開に羽ばたかせては、高速飛行で追従している。
そうして先行していたストログが山の岩肌の一部に洞穴があるのを見つけて、そちらに足を進めた。下から駆け上がってくるケントらと一度合流するためでもあり、担いでいたリューをそっと降ろすと洞穴から下を確認した。
「よっ・・・と!」
同時に、赤のオーラを足から発したケントがスタッ!と軽やかにストログの目の前に着地した。
そしてその両腕にはミカがお姫様抱っこで収まっていた。
「・・・こ、こんな感じなのね・・・でも、景色が山肌ばっかりで全然ロマンチックじゃないというか・・」
「おい、早く降りろよ」
何かを呟くミカに呆れ声で促すケント。それに「う!うるさいわね!」と怒り顔で言っては飛び降りたミカは洞穴を見やるのだった。
「・・・ヤ、ヤット追イツイタッス!」
遅れてシャシャリがやってきて疲れ顔で言うのだった。
「なー、これなんだ?」
と、全員合流も束の間、リューの声が飛んで皆の視線を集めた。
リューは、洞穴の少し奥の方に看板らしきものを見つけて指さしていたのだった。当然、全員気になってそちらへ足を進めてズイっと覗き込むのだった。
そこにあったのは一つの立て看板であった。ちょうどリューと同じくらいの大きさで、看板には大きく『↑ドラゴンいます』と書かれていた。
一同は顔を見合わせて首を傾げた。
そうして、その視線は看板に書かれていた矢印を追いかける形になった。
「なんかあるな・・・」
「扉のようだな」
ケントとストログを呟いた。視線の先には岩肌をくり抜いて作ったような鋼鉄製の扉があったのだった。色黒いのそれはどうやら施錠式のようだが、そのロックは外れているようで中央部に左右の扉の隙間が生じていた。
「・・・・・・ま、まさか扉を開けたらライヤードが待ち受けてるとかじゃないわよね?」
「ンナアホナ」
ミカの推測にシャシャリが思わず声を漏らす。
だがしかし『ドラゴン』と言われれば、ここではライヤードにしか繋がらず、そんな可能性はないと思ってみても、どういうことだか理解できないままでモヤモヤする始末だった。
「入ってみるか?」ケントが問うた。
「余計な事をする時間はない、とっとと」「どーん!!」
拒否するはずだったストログの言葉は、リューが力任せにブーメランを扉に当てて全開にした音によってかき消されてしまった。
「入るぞー!」
「リューちゃん!そんなことしなくても開いてたんだから!」
先頭を切って中に入っていくリューと、慌てて追いかけるミカ。ケント、ストログ、シャシャリは一度顔を見合わせて少しの沈黙と溜息を漏らしてから扉の奥へと進んでいくのだった。
※
扉を抜けた先は小部屋であった。と、いってもその内装はこのゴツゴツとしたこの山岳とは対照的なものであった。
大小いくつかのモニターに、充分に寝転がれる大きなソファー。岩壁をくり抜いたであろう壁には、グラマーな女性のポスターや、どこかのメタル系バンドか悪魔的衣装を着たビーバーたちの白黒ポスターが飾られている。
「まるで男の一人暮らしだな」
グラマーなポスターの前で真剣な眼差しでケントが言った。
だが、瞬間的にミカがそのポスター引っぺがしてグチャグチャに丸めると、テキトーに放り棄ててしまった。
「・・・たしかにそうみたいだけど――なんでこんな部屋があるのかしら?」
散らかった服や、小物の類、ところどころに飾られたキャラクターフィギュア。その中にサンボルバード関連のもあって少し興味を引かれていた。
「探るだけの時間の無駄だな・・・さっさと山を越えるぞ」と、低い声で告げたストログがケントとミカに寄ってきた。
彼の背後ではゲーム機を見つけたリューとシャシャリが、思いっきりはしゃぎ回っている。
その意見にケントらも納得で、特に小部屋の意味を解明するでもなく後にしようと入口扉のほうへと足を向けた。
その時。
「あっれー?」
と、扉から一人の『トカゲ男』が現れたのだった。
トカゲ男は、ダボダボのTシャツにカーゴパンツ、それに首からはヘッドフォンをしている。なんというか典型的なだらしない格好である。
「開けっ放しだっけ?というかあんたら誰?人の部屋勝手に触らないでよ」
と、呆然とするケントらに、ベラベラと流れるように言葉を飛ばすトカゲ男はズンズンと部屋の中へと入ってくる。するとトカゲ男はミカの前に来たところでピタリと止まった。
「わかった!!イベントの参加者でしょ!」パチンと指を鳴らしてトカゲ男の小さな瞳が輝く。
同時に置いてけぼりのケントらに、なんどもしがたい雰囲気が圧し掛かる。
「だったらここじゃなくて山頂に行かなきゃ!あ、でも、もう会っちゃったから別にいいか?」
そこまで話した時、ミカ、ケント、ストログはピンときて眉を潜めた。
「・・・ちょっと待って、もしかしてあんたがここで会えるっていう『ドラゴン』なの?」ミカが代表して聞いた。
「その通り!僕が『会えるドラゴン』!ドラゴン族のヴィレッテさ!」ドン!と胸を叩いて口から小さな炎を吐いて見せた。
その解答にミカたちに疑問が幾つか沸いて首を傾げるのだった。
「トカゲじゃなかったのか・・・というか、ミカ、お前『人型のドラゴン族』はいないとか言ってなかったか?」
「言ったけどさ・・・」ミカが困った顔を見せる。
「――会えるドラゴンとはライヤードのことではなかったのか?」ストログもまた呟いた。
しかし、そんな険しい表情をみせるケントらに見ながらにヴィレッテが一度フン!と鼻を鳴らして視線を合わせた。
「なるほどなるほど!引っかかってるのはやっぱりそこだね!」ピンと指を立てて、さぁ謎ときだと言わんばかりに自慢げな顔を見せている。
「ライヤードはダミーさ!代わりに僕に会えるっていうサプライズの踏台的なものかな!」
「・・・生贄ってのは?」ケントが聞いた。
「お約束さ!ドラゴンと美女の生贄ってのは昔からのセットだからさ、イベント考えた時に町長にもそう伝えたんだけどな・・・」
なにか、謎が明かされていくうちに、脱力が増えていく気がするケント。
「・・・・―――すると、なにか・・・このイベントとやらは山登りしてお前に会うだけのものなのか?」ストログが身も蓋もない言い方で聞いた。
「そうさ!簡単に言えばだけどね!だけど、僕と会えるんだ!それだけで価値はあるものだと思うよ!それに僕のお嫁さんになれる可能性もあるんだ!」
その言葉でケントとストログは完全に脱力を果たして溜息を吐いた。
しかし、一方でミカは眼光鋭くヴィレッテを睨んでいた。
「もうひとつ聞くわ・・・あそこのコレクションってあなたの?」ミカは先ほどのフィギュアが飾られていたあたりを指さした。
「あぁ、そうだけど、もとは博士の・・・――あッ!」「・・・博士?」
ミカはヴィレッテが思わず漏らした単語を聞き逃さなかった。
「なななんでもない!そそそそれより君が参加者なんだろ?!よく見れば綺麗じゃないか!」
「よく見なくてもそうなのよ。それより博士ってだれのことよ?」ミカの声のトーンが低くなっていき、ケントらにも事態が展開しそうなことを報せる。
「はは博士?そ、そんなこと言ったかな?!」ヴィレッテの目が泳いでいる。
「・・・あそこにあるサンボルバードのフィギュア、あれは機械惑星の遺跡にあったのものと同タイプのものでしょ?それがなぜここにあるの?あんた、あの遺跡にいたってこと?」
「な、なにを言っているのか・・・!」しだいにトカゲ顔の顔色が悪くなっていく。
「言いなさい!あれは相当旧いタイプのものでツールでもあるのよ!しかもそれを新しく弄った跡があるわ!そんなことメガット先生にだってできないかもしれないのよ!」
遂にはヒィアートガンを構えて、銃口をヴィレッテに突き付けた。
「珍しくまともなこと言ってるなミカのやつ」
「・・・また殴られるぞ」
後方でボソリというケントにストログが呆れ声で告げる。
だが、そうやって睨みあってる間にもミカがじりじりとヴィレッテとの間を詰めていた。
「答えなさい!その博士ってのは誰!?もしかしてザヴィエラと関係あるの?!」
「あー・・・いやー・・・そのー・・・」両手を前に突き出して『近寄るな』『ちょっと待て』のポーズと共にドラゴン族の男はしどろもどろの極みの顔を見せていた。
そして。
「退散!!」
遂には背を見せて、入口扉を吹き飛ばさん勢いで逃げだしたのだった。
「あっ!!待ちなさい!!」
思わず追いかけてミカもまた部屋を飛び出していく。
「追うなミカフェリア!放っておけ!」珍しくストログが叫んだ。
もちろん彼にとって、ここからいち早く帰ることが優先で、なおかつミカからの借金返済が目的である。よくわからないドラゴン族になど構う必要はないと考えていた。
「・・・しかたない!俺たちも追うぞストログ!お前だってミカがいないと都合が悪いだろ?」
「・・・チッ」
ケントが急ぎ入口扉の方へと駆けて二人の走り去った位置を確認する。
そんな彼からの言葉に「それはそうだが」と内心で無理やりに納得して舌打ちが漏れるストログ。彼の後ろではリューが張り切ってブーメランを掲げており。反対にシャシャリは面倒くさそうに機械の肩を落としていた。
※
「・・・こんの!どこまで行くのよ!」
銃を構えつつ駆けるミカ。ヴィレッテの跡を追いかけては「止まれ」と叫び続けていた。しかし、もちろんそれで相手が止まるはずもなく、二人は山の中を進み続けていた。
「・・・これって登ってる?」走りながらにミカは感づいた。
やはり、ここを住処にしているようなヴィレッテに地の利があるようで足取りは実にスムーズで山中に掘られたトンネル通路をあっちこっちへ逃げ回っている。そしておまけに幾度か階段や坂道を登らされていた。
と、いうことは、最終的には・・・。そんな考えをよぎらせながらにミカは、先に光が差しこむ細い通路を駆け抜けた。
「やっぱり」
通路を抜けた先でミカは呟いた。差していた光はやはり日光であり、今はそれを全身に浴びる形になっていた。そう、通路の先は山頂である外に繋がっていたのである。
脇には『ドラゴンと記念撮影』なんて立て看板もあるが、無視して先に佇んでいるヴィレッテに銃口を向けてにじり寄った。
「観念しなさい!ここまでよ!・・・まさかドラゴン族本来の姿に戻って飛んで逃げるつもり?」
声を強めにして言うが、当の本人はミカに背を向けたままで何か忙しそうに手元を動かしているだけだった。
「ちょっと!聞いてるの!?」怒声で言うミカ。
「ミカ!」
と、そこへケントらが追いついてミカと一緒にヴィレッテを追い詰めた形になったのであった。
「おい!あんた!あきらめた方がいいぞ!こっちには傭兵ナンバー1もいるんだぞ!」
「・・・俺は放っておけと言ったはずだ」
声を張るケントの横でストログ呆れ声で呟く。
ヴェンビック山の頂上は風が強く、皆の髪も勢いよく靡いている。狙いを定めるミカも少々、体がふらつくのかしっかりと踏ん張ってはヴィレッテを逃さまいと銃を構える続けている。
「さぁ!早く」
「悪いけど」
と、ミカの声を割ってヴィレッテが囁くとくるりと振り向いた。すると彼には先ほどまでとは違う部分が増えていた。左腕部分半分を覆うような機械の腕輪と、その手にラジコンのコントローラーのようなつまみのついたパッドを持っている。
「・・・これ以上、詮索されるわけにはいかないんだ。僕のせいになっちゃうし、それに結構バレてそうだし」
これまでと打って変わって、余裕の笑みさえ見せて話すヴィレッテは、銃を構えるミカを睨みながらもすかさずコントローラーらしきものの摘みを力強くひねった。
「来ぉおおいッ!!ライヤァァァァァアアアドッ!!」
「え!?」「おい?!」「なんだと!」「もしかして・・・」「ライヤード!」
同時に全員が、叫ばれた名前に驚いてドキリとした。
そして、次の瞬間。
グォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!
天を割って、轟音の叫びと共に赤錆色の巨竜ライヤードが姿を現したのだった。




