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第12章 終息

第12章 終息




 首都星は騒ぎの渦中にあった。


無論、危機があろうがなかろうが興味のないものは、その場を去ったり。仕事に忙しい者は、気にはなるものの、その場を離れるしかないと移動したりと、十人十色の動きを見せている。


 だがしかし、やはり圧倒的に事態解明の意思があるものが多く、首都の中心では説明を求めて大きな騒ぎが起こっていた。


空を覆ったワープゲートの現象は消え、物々しかった飛行軍艦は引き上げて、残っているのは最後にやってきた大統領がのる専用軍艦のみである。


そして今はその大統領機を取り囲むように、大小さまざまななメディア勢のフライングマシンが大統領からの説明があるのだろうと、待ち構えている。


「ケント達大丈夫かな・・・」


そんな空を見上げてドリューは心配そうな声を上げていた。


ラージとスタアとの再会も束の間、こんなことになって困惑しっぱなしなのである。


周りが何もわからないと、騒ぐ中、多少は事情は理解できているとはいえドリューもまたちゃんとした説明が欲しいのは当然であった。


 そうして皆が騒ぐ中、同じように空に浮く大統領機を見上げて心配な顔を見せるのだった。


「おい!あんたあいつらより野蛮じゃないだろ?俺を解放してくれないか?」


が、そんな脇では忘れられていたぐらい




  ※




 首都星の上空。


空に浮く大統領機には巨大なドラゴンが羽を休めていた。本来、戦闘機が離着する専用デッキに無理やり場所を作って巨竜ライヤードは、ただ静かに佇んでいた。


 そうしてそんな静かな瞳のままでデッキに集まる、人間たちを眺めていた。


「まったく・・・ミカ、なにをやっているのだ?」


人々の中央で、ブロンドの髪を揺らして壮年の男が溜息交じりの声を上げていた。


周りにたくさんの護衛を付けて、ビシッと決まったスーツに身を包み、更には何かの証か豪華絢爛なバッヂが胸に光っている。


「はぁ、お父さんが理解早くて助かったわ・・・」


そんな彼の対面ではミカがほっと胸を撫でおろしていた。




 「なぁ、あれがミカの親父さん・・・オッド大統領か?」


そんな光景を他の皆と一緒になって遠巻きに見ていたケントが呟いた。


「そうだ。テレビや新聞で見たことぐらいあるだろう?」それにストログが、今にも軍艦探検にでもいきそうなリューを抑えながらに応えた。


「そりゃまぁ、あるけど・・・生で見られるなんてことあると思ってないからなぁ・・・」


目の前で行われているのが大統領親子のやりとりなのだろうが、別段格式の高いものでは無く、ただただ普通の親子の会話をしているように見えて、いまいち実感が薄く感じられていた。


 と、そこで、部下の一人が大統領に何かを耳打ちしたのが見えた。




「・・・む、そうかやはり説明せねば治まりはしなさそうか・・・」大統領は部下からの言葉に腕を組んで、難しい顔で呟いた。


「・・・ミカ、こんな状態でお前が嘘を言っているとは思えんが、さすがに今聞いた出来事の全てを伝えても民衆は納得しないかもしれんぞ」


「・・・それは・・・そうかもだけど」


ううーんと親子そろって悩ましい声を上げる。


魔の宙域より開いたワープゲート、それにその先よりやってきた巨大なドラゴン族、そして更にはザヴィエラの協力者であったという博士や、その部下を捕縛しているという情報。


民衆たちが見えていたのはワープゲートとドラゴンぐらいで、博士徒然の情報は省けるかもしれない。


「ふーむ・・・しかし、どこまで話すべきか・・・マスコミの揚げ足取りになるだけかもしれんし・・・」


まだまだ悩ましい声をあげる大統領。


と、そこへ何か大きなものがグオオと動く音がした。そして。


「私を使えばいい」


誰のものでもない低く深みを帯びた声が響いて、全員の注目を集めた。


「ライヤード!」ケントが叫んだ。


声の主は、巨竜ライヤードであり、その巨体をゆっくりと動かして皆に語り掛けてきたのだった。


無論、何人かは驚きもしたがそれでもドラゴン族が喋れないと思っているものはおらず、その低い独特な声色に皆が耳を傾けた。


「私があの科学者に利用されてしまったの原因の一因でもある・・・私がワープゲートを使い、この地に襲撃をかけた――。お主ら軍はその混乱の鎮圧に出向いたということにすればいい」


ライヤードの提案に場は少しだけ静まり返る。


「し、しかし・・・実質的な害があったわけではない・・・!たしかに都市は混乱気味がだが、それでも麻痺しているというわけでもない。君が責任をとるというのは違うのでは・・・!」


それに大統領が慌てたようにライヤードに歩み寄って、その巨体を見上げて言葉を返した。


「賢族であるドラゴン族に意見するのは間違っているのかもしれんが・・・それでも罪を被らせるなどと私としては・・・」


そこまで言って、大統領は首を横に振ってはライヤードが全責任を負うという形は間違っていると肩を落とした。


「そうよライヤード!悪いのはあのイエンスとかいう科学者なんだから!」


「そうだ、顔も名前もわかってるんだ、すぐに兄ちゃんたちが捕まえてくるはずだぜ?」


ミカとケントも続いて、ライヤードの提案に異を唱えた。


「ふふ、優しいのだなお主らは・・・しかし、仮にイエンスを首謀者として指名手配にでもしたとしよう・・・奴が隠れているのはおそらく魔の宙域だ。情報を聞きつけた者はこぞって魔の宙域にあつまるだろう・・・・・・それは、あまりにも危険で愚かな行為だ。魔の宙域はまだまだ謎であり犠牲者が増えるだけだろう。」


「・・・ふむ。秘密裏に捜査したほうがいいわけか」


ライヤードの意見にラージが呟いた。




 と、あちこちから反対意見があがる中、ライヤードは一度大きく瞬くと太い首を持ち上げて皆をまじまじと眺めた。


「・・・そこまで言うのならいいだろう。私が全責任を負うというのはやめにしよう」


そう言うと周りから「わ!」と嬉々とした声があがった。


「代わりに私とヴィレッテの二人で責任を負うことにしよう・・・・それでどうかな?大統領?」


その言葉に盛り上がっていた場は再び静かになってしまった。


「ヴィレッテ・・・たしかイエンスなる科学者に従っていた者だったか?」


「そう・・・あれもまた私と同じドラゴン族。少々世間知らずなところもあってこのような結果になったのだ・・・同族として共に制裁を受けよう」


そう言ってライヤードは巨大な顔でわかりにくいが笑みを作った。


同時に皆はざわざわと騒めきだして、口々に提案の有りか無しか相談しだした。


と、そこへ。


「どうする?ここらが妥協点だと思うが?」ストログが言った。


「しっかし・・・どうしても責任をとろうとするんだな・・・」ケントが思わず呟いた。


「誠実というか・・・生真面目すぎというか・・・同じドラゴン族なのにヴィレッテとは正反対なのね」


ミカもまた同じような感想を漏らしては、少々息をついて今一度、ライヤードを見上げた。


巨竜は笑み混じりの表情で大統領を見つめており、大統領もまたライヤードを見やっては「まいったな」と頭を掻いていた。




 「よ・・・よし、わかった!君の意見を取り入れよう!」と大統領が人差し指を立て言った。


「ワープゲート自体はツールの誤作動!そしてその『事故』で君らがやってきた!つまりはこれはテロとかではなく、大きな事故ということだ!これでどうだ!?」


その意見に周囲が様々声をあげるが、大方は納得したように頷いていた。


「ま・・・まぁ、嘘ではないかな・・・一部だけど」ケントが聞こえないぐらいの声で呟いた。


「事を荒立てさせないなら・・・妥当だと思うが・・・」続いてラージも同じように呟いた。


「そうなの?私あんまりまだ飲み込めていないんだけど」スタアも続いたが、そのすぐ後に再び大統領が口を開いて意識をそちらへと向けることになった。


「ラージャック!君がいてくれたことで説得力が増す!君が先頭に立って事態鎮圧に動いた遊撃隊、それが君たちだ!いいね!」


「お父さん、それって私も入ってるの?」ミカが反射的に問いかけた。


「・・・~ぁぁ!そうだった・・・ミカ、何故お前がいるんだ・・・そこをつっこまれたらどう答えればいい・・・」


指をパチンと鳴らして悔しそうな顔を見せる大統領。それにミカは「娘を邪魔者みたいに言わないでよ」と愚痴っぽく言い返していた。


「ミカちゃんは私たちの結婚式の下見を手伝ってくれていたところを巻き込まれたってことにすればいいじゃない?」


そこへ、スタアがちょぴり手を上げ発言した。


「なるほど。それにメガット博士の生徒だ、ワープゲートの処理に手伝ってもらったとすれば無理がない」


更にラージが手を叩いて「それだ」という顔をしてスタアをみやった。


「おぉ!行けるぞ!それで行こう!」


と、大統領は息を吹き返したように叫んだガッツポーズを作った。が。


「・・・ん?下見?ラージャック、君、結婚するのかい?」目をパチクリとして大統領が思わず尋ねた。


「は、はい・・・。こっちのスタアと・・・、本来今日は式場の下見に来ていたんですが」


簡潔に説明するラージと、合わせて丁寧にお辞儀するスタア。


その光景に「ほほぉ」とニヤついた顔を見せた大統領。


「なんだ言ってくれれば祝いの品ぐらい送ったのに、私は君がザヴィエラの親衛隊が解体されてからどうしているのか気にかけていたんだよ?」


「そ、それは・・・もったいないお言葉で・・・」


「今度は大統領直属に転職すればいいんじゃない?」


困り顔のラージとどこか意地悪く茶化すスタア。


すると、少々話に華が咲いたところで、またしても大統領が「ん?」と動きを止めた。


「待てよ・・・ちょっと待てよ・・・君らの結婚のことに何故ミカが関わって違和感がないとなるんだ?ミカと君らの関係は・・・?」


「なんだミカ、言ってないのか?」それにケントがぼそっとミカに問いかけた。


「・・・う、ストログの借金も含めて、あんまり詳しくは話してないのよ・・・言うと外出禁止ぐらいくらいそうだし・・・」それに、バツの悪そうな顔を見せてはケントの問いに答えるミカ。


と、ミカ本人がいいわけをするよりも先にスタアが一歩踏み出て口を開いた。




「ケント・・・弟とお付き合いしてるんです。ね?ミカちゃん?」


ニッコリと笑ってスタアが言った。


「はぁ!!??」


「んななななななななな!!!!!!!」


ケントとミカが顔を真っ赤にしてスタアに振り返った。


「な!なんと!!ハルから最近様子が変だと聞いていたがそういうことだったか!!」


そうして誰よりも大きな声で大統領が叫んだ。


「スススススススタアさん!ななななに言って・・・・!?!!」


「そうだよ姉ちゃん!!」


「あら?違ったの?私てっきり・・・」


二人から一斉に怒号のような訂正の言葉が飛ぶが、スタアは笑ったままで受け応えるだけであった。


「ミカ!いったいどういうことかお父さんに説明しなさい!」


と、そんな大騒動なケントとミカの元に混ざろうとした大統領だったが、また一人の部下が駆け寄ってきて制止されてしまうのだった。


「大統領!限界です!今すぐ事態説明の会見をお願いします!」


「・・・む!むぅ・・・そうか・・・この一大事に・・・しかたない!」


もはやどっちが本来の得たかった情報なのか、まるであべこべの状態のままオッド大統領は渋々踵を返して、皆より背を向け歩き出すのだった。


だが。


「ケント君と言ったか!あとでじっくりと話し合おうじゃないか!」


それだけ言い残すために、一瞬立ち止まると、すぐ様に皆の前から歩き去っていき、会見の場へと向かっていくのだった。




 同時に、多くの部下たちも大統領の跡についていく、残されたのは多少の警備とケントら一行だけ。


そしてケントとミカは顔を赤くしたまま唖然と動きを止めていた。


「ど・・どーしよー・・・いろいろ説明しないといけないのに・・・余計なこと増えちゃった・・・」


「余計とはなんだ!」


「本当のことでしょう!」


すぐさまに言い合いになる二人。


スタアにはただの痴話げんかに見えて「はいはい」となだめるだけであった。


そこへ。


「よしよしその話は後で二人してなんとかしてくれ」とラージが割って入った。


「とりあえず下に降りて、ドリュー君に預けたヴィレッテとやらを連れてきておこう」


そうして随分とまともなことを言うと皆の納得を集めてラージはあたりを見渡した。横ではケントとミカが「なんとかしろと言われても」と困った表情を見せている。


「すまない、小型のフライング機を貸してくれないか?出来れば目立たないのがいいが」


「は、はぁ・・・」


と、近くにいた警備兵に問いかけると元親衛隊長の権限で少しだけ要求を告げるラージ。


するとあたりを見渡した警備兵がとあるデッキの片隅に駆け寄って、そちらに来るよう合図するのだった。


「あ、あのこちらに、あるにはあるのですが・・・」


言われてラージはそちらへ歩み寄っていく。


「・・・これは?」思わずラージは尋ねた。


と、そこにあったのは小型のフライバイクだったのだが、軍事用ではなくあきらかに市販の物であったのだ。


「こちら大統領の私物でして・・・」言いにくそうな顔を見せる警備兵に理解を示してラージは、そっとフライバイクに手をかけた。


「なるほど、『お遊び用』か・・・ま、それぐらいは・・・」


「ラージャック殿!」


その時、ラージを呼ぶ兵の声が飛んで彼を振り返らさせた。


「すみません!大統領がお呼びです!一緒に会見に立ち会ってくれと!」


「・・・・・・やれやれ口裏合わせだな」


それまでフライバイクに向けていた意識を呼びに来た兵に向けて、ラージはそちらへと歩き出したのだった。


「すまない、代わりに誰か迎えに行ってくれないか?」


皆の前を通り過ぎるとさいに、そう言い残すとラージは大統領と同じ会見の場へと消えていくのだった。




 「よ、よーし!私が行ってくるわ!」


すると開口一番、ミカが飛び出してバイクへと駆け寄った。


というのもケントと顔を合わせづらく、少しでもこの場を離れる理由が欲しくての行動だった。


「え、と・・・キーは付きっぱなしね!お父さんも不用心ね・・・まぁ戦艦の中なら盗まれる可能性もないだろうけど」言いながらにフライバイクに跨るミカ。


「ッ!!お嬢様!それは通常のフライツールです!魔法族専用では・・・!!」


「あ」


既にアクセルを開けた状態でミカは「そうだった」と感づいて冷や汗を流した。


瞬間、ミカを乗せたフライバイクは一直線に真上に上昇するのだった。


「・・・わ、忘れてたぁぁぁぁ」


スタアの妙な煽りのせいから心の動揺が大きく、そのせいでヒィアートの反発作用が頭から抜けていた。


魔法族のヒィアートにより暴走気味のフライバイクはジグザグに動いてみたり、宙がえりを繰り返したりと絶叫マシンさながらなであった。


「どわわわわわわ!!」


空にミカの悲鳴が木霊する。




 「ケント!ほらミカちゃん助けないと!」ここぞとばかりにスタアがケントを背を押す。


「べ、別に俺じゃなくてもストログでも・・・」顔を赤らめながらもチラリとストログを確認するが。


「俺に頼むつもりなら、仕事ととしてみなすぞ?」


あきらかNOを突き付けられてケントはため息を漏らした。


「わ・・・わかったよ、行けばいいんだろ!」


そう意気込むとケントは足に赤のオーラを現して大きく膝を曲げた。


瞬間


デッキを蹴り、航空機を蹴り、屋根を蹴って、赤の弾丸となったケントは一気に空の上まで跳躍した。




「あわわわわわ!誰かたすけ――ッ!」


バイクに振り回されるミカは、空の上にて遂にはその反動に耐えられずハンドルから手を離してしまった。


このままでは地上まで落下してしまう。ヒィアートガンも自身のヒィアートを使い切ってしまっているため使えない。


一瞬の絶望が彼女を襲った。


その時――。


「なにやってんだミカ!」


ガシッ!!とミカの腕をケントが掴んだのだった。


「・・・ケ、ケント・・・」思わず声を漏らすミカ。


ケントは片手でバイクのハンドルを、もう片方の手でミカの手を掴んでおり、ちょうど二つをつなぐ橋の役割を果たしていた。


「こっちこい!」


「ひゃ」


と、ミカを引き寄せてバイクの後部座席に乗せると自分はハンドルを強く握りしめて運転席に座るのだった。


「・・・よし!やっぱり運転手が魔法族以外なら動作も落ち着いてきたな」


「・・・わ、悪かったわね」


後ろに座ったままで顔を赤くしながらミカが呟く。


「別に今更なんとも思わないさ、慣れたっての」


「・・・そ、そう」だんだんと声が小さくなるミカ。


「うっし!このままドリューのところに向かうぞ!掴まってろ!」


「え!ど、どこに!」


と、ミカの言葉の最期までを聞かずケントは改めてアクセルを解放。そのまま地上目がけて降下を始めるだった。


「おおー!やっぱいいな!もう少し貯金が溜まったら買おうかな!」


「ちょ、ちょっと!あんま飛ばさないでよ!」


日の暮れかけた首都星の空を二人を乗せたフライバイクが往く。


掴まっていないと振りおとされそうだと、思わずケントの腰を掴んで背中に顔をうずめるミカ。


その表情は照れくさいのと嬉しいのとで半々のものになっていた。


「・・・なんか、思ってたやつかも・・・」


そして自然と呟いた。


ほんのりと口角を上げて。




「あ?なんだ?思ってたのって」


しかしそこへケントの空気の読めない発言が返ってきてミカの表情をムッとさせた。


「う!うっさいわね前見て運転しなさい!それにあんた今、ノーヘル無免許運転なんだからね!」


「それはお前もだろ!?」


「私は大統領の娘特権で許されるのよ!」


「そんなわけないだろう!」


「いいから!私を乗せてるんだからしっかり運転しなさい!」


ガン!とヒィアートガンでケントの後頭部が殴られた音が響いた。


「いちいち殴るな!それも運転中に!」


涙目になりながら運転を続けるケント。


そうしてやがてフライバイクは、首都を飛び交うフライマシンの群れに混じり、更にはドリューの待つ位置にまで下降するのだった。





 「おおい!あんた今回のこと無関係なんだろ?別に逃げやしないからさ、この縄ほどいてくてよ」


「え~、絶対逃げるよねそれ?それに僕、ケントみたいにミカに銃で殴られるの嫌だし」


縛り上げられたままで、ひょこひょこと器用に動いてはヴィレッテはドリューに懇願していた。


しかし、まったくもって首を縦に降らないドリューは、ほぼほぼヴィレッテの言葉など無視して彼が逃げないように睨みを聞かせていた。


そこへ。


「おーい、ドリュー!」


空より小型のフライバイクが降下してきて二人の目の前に着地した。


「ケント、ミカ!あっちはもう終わったの?」


バイクから降りてきた友に喜びの声を上げて一歩踏みよった。


「あぁ、まぁな・・・あとはそのひねくれたドラゴン族を連行するだけだ」


「な!なな!連行だと!」


「当たり前でしょ、というかあんたにはイエンスの情報を吐いてもらうんだからね」ミカがずいっと踏み込んで睨んらだ。


「あっちで言ったのと同じだ!俺だってあんまりしらないんだって!」


喚いて唾までとばすヴィレッテに3人は呆れた視線を向ける。


「まぁ、お前の処分は大統領と兄ちゃんが決めるよ・・・あとライヤードもお前と一緒に罰を受けるってさ」


「ら、ライヤードが・・・」思わず声を詰まらせるヴィレッテ。


「ライヤードこそ賢族そのものよ。あんたね、そんなライヤードの申し出を断れば、本当にドラゴン族としてはお終いよ!」


ビシッと告げてミカが腕を組んだ。


その言葉に「うう・・・」と唸って静まり返るヴィレッテ。よくわからないが涙を浮かべているようにも見える。


「やれやれ・・・まぁそこまで悪いようにはしないだろうさ」


息を付いて言うケントだったが、そこへドリューの「あれ見て!大統領の会見だよ!」という声にヴィレッテに向けていた視線は、首都星の空・大統領専用機が浮かぶ中空へと向けられた。


 大統領専用機の下部から特殊な照射装置が伸びると、そこから眩しい光が照射された。それは空中で四角に拡がり、例えるなら超巨大なスクリーンと化したのだった。


そうしてそのスクリーンにはオッド大統領が映し出され、隣にはラージも一緒に立っていたのだった。


「大統領専用のスクランブル放送だよ!僕、トキエイドに来て初めて見たよ!」


「・・・ん~、まぁスクランブルはない方がいいんじゃないか?」


「あたらね、お父さんが喋るんだからちゃんと聞いてなさいよね」


妙なところではしゃぐドリューらを叱って、ミカが会見を見るように告げる。


そうして首都にいる全員の注目を集めて大統領の説明会見が始まるのだった。




                        ※


 「トキエイドの皆さん。ミータッツ太陽系大統領オッドです」


そう切り出して大統領の声は首都中に響き渡った。


「まだまだ混乱や動揺が治まっていない方や、充分な説明を求めている方もいるだろうと思い、今しがた起こった出来事について現時点で解明できている事をお話しします」


と、真面目な顔をしてしっかりと言葉のひとつひとつを噛み締めたように言うオッド。その仕草や声の調子から、それが真剣に民衆の事を思っているのだと伝わってくるようであった。


が。


画面の上端をテントウムシのような何が通ったのがわかった。


「ん?なんか通らなかった?」


「・・・さ、さぁ」


ドリューは首を傾げたがケントはそれあ何かわかって顔を引き攣らせていた。


「えー・・・」


と、大統領が再び口を開こうとしたその瞬間、今度は画面の下端を小さな女の子が通ったのだった。見切れて頭半分しか見えなかったが、ケントらにはそれが誰か十二分にわかって困り果てた顔を見せた。


そして更には『リューちゃん、探検はあとにしときなさいって・・・』とよく知った姉の声が入ってきて、ますます会見が台無しになりそうで冷や汗が止まらなかった。


「ねぇなんか今の声、スタアさんっぽくない?」


「そ、そうか?兄ちゃんがあっちにいるからな・・・もしかしたら近くにいるのかもなぁ・・・ははは」


実際、その通りなのだがとりあえずは笑ってごまかすケント。


それに「ふぅん」とだけ特にそこまで興味がなかったのか、ドリューは会見の続きを見やった。




 「え・・・おほん・・・今回の事態の説明を、緊急事態にも関わらず駆けつけてくれた元親衛隊の・・・いや、調査隊のラージャック君に説明をお願いする。いいかい?ラージャック君?」


「はい」


大統領の問いに短く応えたラージは、大統領に代わって中央に立つと一度小さく咳ばらいをした。


「え・・・今回の事態・・・原因は古いワープゲートの誤作動によるものです。空に広がった光の膜はそのゲートの一部であります」


説明を始めたラージから民衆に伝わり、ざわめきが拡がっていく。


「そして現れた巨大なドラゴンですが、あれは事故によって発動したゲートに巻き込まれたドラゴン族です。突然のことに混乱をきたしたようですが、今は沈静化して軍で保護しています」


都市中から「へぇー」や「ふーん」、「そうだったんだ」などの声が聞こえてくる。


「えー、ドラゴンの背に誰か乗っていたという意見もあると思いますが、あれは我々です。私の人選で集めた遊撃隊であり、無事ドラゴン鎮圧を務めあげました」


そうして、事態の説明をまとめ終えたラージは一度、お辞儀をするとそのまま大統領へと中央を返した。


「・・・ありがとうラージャック君。」再び発言を始めて、大統領が頷く。


「今、説明した通り、今回の出来事は不慮の事故が重なって起こったことであり、決して首都を脅かすような事態ではありません・・・皆さんどうか心配なさらずに・・・それでは、これで会見を終わります。失礼」


そうして大統領とラージャックが深くお辞儀をしたところでスクリーンは消滅し、言葉通り会見は完全に終了したのだった。




「へぇ、ゲートの故障か、古いタイプなのかな?古代ツールとか?」


と、会見から得た情報を嬉しそうに言ってドリューがケントの方へと向き直った。


「ま、ドリューにはちゃんと説明するよ」


するとそこにはヴィレッテを担いだケントがいて、この場から移動を促していた。


「お、おい、本当にライヤードが・・・」


「だからそう言ってるだろ、静かにしてろ」


担いだヴィレッテがうるさいことにケントが叱咤する。


「う・・うぅ・・・戻るったら絶対にお父さんに質問攻めされる・・・」


そんな横ではミカが一人、悩み切った顔で愚痴をこぼしていた。


「うじうじ言っててもしかたないだろ?もうこのさい全部白状しちまえよ?」


「う!うるさいわね!私なりにいろいろ考えてるのよ!」


困った顔から一転、一気に怒り顔を見せたミカがかみついた。


「特にあんたとストログ!絶対にお父さんに近づいちゃダメだからね!私がなんとかするんだから!」

指さして声を荒げるミカ。

「・・・・・・ミカはなんで怒ってるの?」

「自業自得だ、気にするな」

ドリューの問いかけに、呆れ気味に笑って返すとケントは「いくぞ」と足を進めた。


 そうして改めて平穏が戻った首都星の中をケント達は、あれこれと言い合いながらに大統領の所にまで戻っていくのだった。



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