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26話 上陸、バランディア島

「あー!島が見えた!レイ、見て見てー!」


 俺の評価が著しく低下した、船での一泊を終え、リゾートツアー一行は、ついにマキシマ家所有の島に上陸することとなった。

 絶海の孤島、この『バランディア島』は、完全な無人島で、古代から続く歴史を持つ、大自然の宝庫らしい。


 一説によれば、はるか昔、この世界を支配しようとした魔王が、この地を拠点としていて、その魔王の宝が眠っているとかなんとか。


 透明度の極めて高い海に囲まれ、ジャングルの鎧を纏った島は、魔王の拠点といった雰囲気ではなく、野生の王国と呼ぶに相応しい。


「すごいな、これが一個人のモノだなんて」


「ふっふっふ、そうだろそうだろ?」


「あんたのモノじゃないでしょ」


 

 俺たちは執事さんの案内で、海上コテージへと向かった。

 一人一人に部屋が与えられるほどの数、まるでホテルのようだが、特にそういった使い方はしてなく、あくまで友人知人を招待したときだけ使うそうだ。

 ここだけでまた一稼ぎできそうだが、金持ちのことはわからない。


「海めっちゃ綺麗!準備して早く泳ごうよ!」


「ウルもー!」


 リリアさんとウルが姉妹のように仲良くはしゃいでいてとても微笑ましい光景だ。

 俺は姉さんの水着が見たい一心だが、汚い心が洗われる。


「じゃあ着替えたら向こうの砂浜に集合しよっか。女の子は時間かかるから、男の子たちは先に行っててね」


 いよいよか⋯⋯。ここまでくると、あんなに焦ってポーカーまでする必要が全くなかったなと、ひしひし感じる。


「アサギリ、俺は今日、死んでもいいかもしれねぇ」


「えぇ⋯⋯」


 ソウタは普通にしていれば普通に彼女の一人や二人できそうなのに、自制心が効かないんだろうか。



 そして、待つこと数分、浜辺には俺とソウタの力作である、立派な城が出来上がっていた。

 女子って着替えるのに時間かかるんだな。と思っていた矢先、照りつける太陽の陽炎の奥に、歩く人影が見えた。


「きたぞアサギリ!」


 俺はポーカー同様、視力に全力を込めたが、目が血走っててキモい、と言われたらまた評価が下がってしまうため、我慢することにした。


「おっまたー、喜べ男子!君たちの見たがっていた水着姿だ!」


 一番手は流石のノリを見せるリリアさん。そのポーズには自信があるのか、そしてそれを裏付けるナイスバディだ。

 出るとこはしっかり出て、引っ込むとこは引っ込んでいる、まるでグラビアアイドルかのよう。

 露出度も高いビキニで俺が普通の男子高校生であったなら、フィーバー待った無し。


「98点!」


「え、採点すんの!?やめてよ!」


 とりあえずソウタの頭をぱしっと軽く引っ叩き、俺はしれっと心の中で評価をする。


「あ、あのあんまりじろじろ見られると恥ずかしいんですが⋯⋯」


 続く二番手はユバシリさん。

 着痩せする彼女のソレは、服越しでも大迫力のダイナマイトであったが、生で見えようものならそれはそれは⋯⋯。小柄な体躯に不釣り合いなワガママボディーで、ソウタの視線を磔にしている。

 あれで迫られたときは頭がおかしくなりそうだった。いや、なっていたか。


「見て見てレイ!セクシー?」


「やめろ!!」


 三番手はウル。

 水着を買いに行った際に、超きわどい水着を買おうとしたらしいが、姉さんにストップをかけられ、露出を控えた水着に変更したらしい。

 リリアさんやユバシリさんと同じ歳には見えない小ぶりな胸だが、その2名の育ちが良すぎるのだろう。

 すでに向こうで日焼けした肌と焼けてない部分のコントラストが非常に⋯⋯。でもウルだしなぁ。


「お待たせー、日焼け対策に時間かかっちゃった」


「う、うおおおお!」


「おおおおおお!」


「男ども気持ち悪!」


 俺の大本命、姉さんが四番手。

 太陽光すらも恐れをなして避けそうな白い肌に、リリアさんユバシリさんを超えるグラマラスなボディ。露出は控えたセパレートタイプの清楚な水着だが、その中身は隠しきれないほどだ。

 俺は昨日あの太ももで膝枕したんだぞ!と、世界中に叫びたい。


「さーてあと一人だが?」


「スゥさんいないね」


「あれ?どこ行ったんだろ⋯⋯あ、いたいた、おーい」


 

 トリを務めるのは我がクラスきっての秀才、スゥさんだ。

 スゥさんは白いパーカーを上に羽織っていて⋯⋯、は?


「おい!なに上着なんか着てんだよ!」


「はぁ!?うっさい!日焼けしないようにしてんのよ!」


「はぁ、スゥさんにはがっかりだよ⋯⋯」


「な、なによ。別に何着ようが勝手でしょ!」


 確かに、これだけの豪華メンバーの中で身体を晒すのは勇気がいることだろう。上着を羽織っていても、水着を着てきた彼女に拍手を贈ろうじゃないか。


「がんばった」パチパチパチ


「はぁ!?あんたってホント失礼よね!脱げばいいんでしょ脱げば!」

 

 上着を脱ぐと、良く言えばスレンダーな体型が姿を現した。

 運動神経も抜群な彼女の、鍛錬の成果が出ていると言うべきか、しかし、意外にも脚は少しむっちりとしていて、フェチにはたまらないかもしれない。


「あんたがなにかすごく私をバカにしている気がしてならないんだけど」


「いや、気のせいだよ気のせい」


「好きなだけ大きい胸でも見てればいいじゃないバカ!変態!スケベ!」


 クズではなくなったようだな。代わりにスケベがイン。

 俺に思いの丈を吐き出したスゥさんは、一人でどこかへと歩いて行ってしまった。



「ちょっとアサギリくん!スゥが怒っちゃったじゃん!」


 お、俺のせいか⋯⋯?せいだな⋯⋯。多分。


「アサギリは女心がわかってないな〜。いいか?スゥを誘う時にお前の名前を出したらな⋯⋯」


「ちょっとソウタ!それは言っちゃダメでしょ!」


 目の前でリリアさんとソウタの夫婦漫才のようなドタバタが始まった。

 俺の名前で何があったんだろうか。


「まぁ⋯⋯、責任は俺にあるみたいだしちょいちょいっとテレポートして連れてくるよ」


「アサギリくんってホントデリカシーないよね。こういうのはムードが重要なのよ」


 テレポートとデリカシーとムードになんの因果関係が⋯⋯。

 話が高度すぎて俺にはついていけそうにない。要は徒歩で連れてこいってことだろうか。


「いいか、優しくするんだぞ」


 アドバイスありがとう。ちょっとよくわからないからさっさと行ってこようか。






 浜辺から少し離れたところにあるジャングルの手前、その木陰にシートをしいてスゥさんは座っていた。

 体育座りをして不貞腐れた顔をしているのが遠くから見てもわかる。これは反省案件だな……。


「ス、スゥさん」


「……なにしにきたのよ。死体蹴りかしら」


 これはかなり怒っていらっしゃる。誠意を見せて全力の謝罪をするしかない。

 俺は砂の上に膝をつき、頭を伏せ土下座した。


「すみませんでした」


「……別に怒ってないわ。ちょっと悔しいだけ」


 あぁそうか、負けず嫌いの彼女のことだから、周りと比較されるのが嫌だったというわけか。


「いや、よく聞いてほしいスゥさん。必ず需要はある」


「はぁ!?あんたはこれ以上口開かないほうがいいわよ。しゃべるたびに好感度下がるから」


 フォローをするのも難しいな。


「……あんたはどっちが好きなわけ?」


「どっちと言われますと……」


「いえ、いいわ。ちょっと私も今のはどうかしてた。あんたに聞くようなことじゃない」


 スゥさんとの会話がインフェルノモードに格上げされた。ウルみたいに直球で気持ちを伝えられるタイプとの会話はすごく楽なんだが、繊細な女の子はなにかと気を使う。使えてない……?



「あぁちょうどいいわ、せっかくだから罰ゲームでもしましょうか」


 このタイミングでの罰ゲームって不安しかないのだが。まぁユバシリさんを超える罰ゲームはなかなかないとは思う。


「あんた見てるとすごくイライラするのよ」


 やはり俺はスゥさんにだいぶ嫌われているようだ。心当たりがありすぎて否定できない。


「だからこれからお昼までの間、私と一緒にいなさい。他の子のことは視界に入れるのも禁止」


「え?なんでイライラする相手と……。それってスゥさんの罰ゲームになってない?」


「いいのよ。やられっぱなしは性に合わないから」


 誰になにをやられたのかさっぱりだ。端から見たら、俺たちの会話はちぐはぐに聞こえるよな。当事者も理解できてないというのに。

 そんなわけで、スゥさんの隣に何気なしに座った俺は、ジト目で睨まれ、蛇の目の前に出てきてしまったカエルのごとし。こんな空気で昼まで仲良くやれるのだろうか。

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