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22話 カジノDEポーカー

ソウタの奴隷権か、はたまた女子の水着姿か。お互いの命運を賭けた闇のポーカーゲーム。会場をカジノに移し、幕を開ける。

 と、一人余裕な俺は脳内でナレーションを繰り広げる。神様って楽しそうだよな。こんな感じなんだろう。


「せっかくカジノにいるしフォーマルな格好でやろうよ。貸し出し用の衣装があるみたいよ」


 姉さんの提案によって、全員が黒いスーツと、煌びやかなドレスに身を包んだ。なんというか、大人っぽい服装で少し緊張する。

 これ、もしかして姉さんが能力で作ったんじゃないか。本来こんな豪華客船に乗る客だったら自前の衣装をすでに用意しているだろう。創造能力は人前で使ってないということか。



「で、ポーカーってどうやるの?」


「えっと、簡単に言えば5枚のカードで役を作って、その役の強さで勝負するんだ。例えばA~10の数字と同じマークが揃えば一番強いロイヤルストレートフラッシュって役が完成する。お互いにカードが配られたらそのカードの強さを見て賭け額を決めるんだ。」



「一回ならカードを好きな枚数変更してよし。もし勝負したくなかったら降りてもいい。負けたら相手の賭け額と自分の賭け額を合わせた額が勝利側に、降りたら自分の賭け分だけが相手側に行くってことにしようか。相手が賭けられなくなったら勝利で。」


「へーそれ面白いな、親父にここのカジノに入れたらどうかって提案しとくよ」


 この世界にはポーカーはないってことか?なら余計にやりやすいかもしれないな。

 ここから先は一番手の人選が重要になる。勝負順は俺が決めさせてもらおう。


「役を書いた表はテーブルに置いておくね。じゃあ勝負する順番を決めようか。どうせ5人抜きしないといけないから誰でもいいよね、スゥさん、ウル、ユバシリさん、リリアさん、姉さんの順でいい?」


「いいよー、早くやろやろ!」


 よし、リリアさんはワクワクしているし、特にツッコミも入らずスムーズに事を進められる。言ってしまえば最初がスゥさんなら後は誰でもいいのだ。

 ソウタとスゥさんの二人を席に着かせ、ゲームスタート。


「カードを配ったらそのカードを見て賭ける数字を決めてね」


「賭けるって⋯⋯何を賭けたらいいのよ」


「⋯⋯そうだね、女子側にデメリットがなさすぎて安易に勝負されても困るからなぁ~、『今着てる物』なんてどうかな」


「はぁ!?何言ってんの!?」


「アサギリくん⋯⋯それはちょっと⋯⋯」


「アサギリくんにソウタの変態が移った!」


 そりゃそういう反応になるよな。だがしかし、こうでもしないと女子側は、適当に勝負して負けたとしても痛手がなく、ゲームとしてつまらないうえに、ソウタが不利すぎるからだ。

 5人抜きするには心理的な勝負にしていかないと相手を降ろすことによる勝利をもぎ取れない。

 俺がディーラーをすれば必勝できる方法はあるのだけど。


「バカバカしい。そんなルールであるんなら私はこんなゲーム参加しないわ」


「え~?ルール説明は後でするねって言ったんだけどな~、席に着いてから止めるだなんて、ずるいと思わない?怖気づいちゃったのかな」


「⋯⋯はぁ?あんた誰に向かって言ってるかわかってんの?いいわ、受けて立つわよ」


「ちょ、ちょっとスゥ!いいの!?」


「言われっぱなしは癪なのよ」


 ははは、ちょろいちょろい。一見とんでもない条件を叩きつけられても、負けず嫌いのスゥさんを一番手に持ってきて参加するように誘導すれば、引けなくなる空気を出せる。女子側の勝率はソウタより圧倒的に高い分、効果はあるだろう。

 

「なぁアサギリ、それだと俺も脱がなきゃいけないんじゃないのか」


「女子の裸、見たくはないのか⋯⋯?」


「⋯⋯やってやるぜ!!」


 こうまで簡単だと笑いが止まらないな。心の中だけに留めておくが。


「レイくん、ちょっとやりすぎじゃないかな?」


 姉さんの表情は笑顔だが、背後に影を感じる。これは怒っていらっしゃるのか⋯⋯?もちろん姉さんを脱がす気はないし、ソウタが勝利を決めた時点で「冗談だよー」でチャラにして済まそうとは思っているが、今だけはみんなに本気になっていただかないと、ゲームにならないんです。


 「ごめん姉さん、俺も男なんです」


 涙を拭いながらの覚悟の嘘。今のうちに弁明と謝罪の言葉を考えておくか。



「さっさと配りなさい。ここでゲーム終了にしてあんたたちをこき使ってやるわよ」


 いや、俺は含まれていないんですがスゥさん。ちょっと不穏な空気が漂ってきたぞ。あくまで俺はゲームマスターであって、賭けるのはソウタの奴隷権だ。再確認。

 俺は手際よく、二人の下へ5枚ずつカードを配る。まずは様子見だ。どっちが勝っても構わないから、仮にここでソウタが負けたとしても、それが天命だっただけのこと。


「⋯⋯上着とシュシュを賭けるわ」


「おい!髪留めとかありかよ!」


 強きな台詞を吐いた割りにはセコい賭け方してきたな⋯⋯。それでも構わんが。

 彼女は冷静沈着のようで意外と直情的だ。賭け方にはそれなりの理由が現れているのかもしれない。そこにソウタが気づけるかどうかと、手札次第だ。

 俺はなんとなく、ソウタに向かってあごをくいっと上に傾けた。公平なゲームマスターであるため、あくまでなんとなくである。


「俺は⋯⋯今着ているもの全てを賭ける!」


「なっ!?」


 対照的にめちゃくちゃ強気で出てきたソウタ。それが本気なのかブラフなのかは知る由もないが、彼なりに勝算を見出した、ということだろうか。


「脱ぐのは⋯⋯ゲームが終わってからかしら」


「うん、勝敗が全て決したらね」


 さすがに本当に脱がすわけにはいかないので適当な事を言っておく。


「いいわ、勝負よ」


「じゃあカードオープン」


「俺はスリーカードだ!!」


「ぐっ⋯⋯!」


 スゥさんの手札は7のワンペア。これにより、スリーカードのソウタの勝利が決まった。スゥさんの反応の微妙さから勝ちを確信しての全賭けだったのかもしれないが、スリーカードでここまで強気なのもすごい。彼は勝負師なのか、あるいはアホなのか。賭け事とは恐ろしい、俺はやらないようにしよう。


「よっしゃああああああまずは一人!」


「ソウタが着ているものはジャケット、シャツ、ズボン、パンツ、靴下2枚の6枚。スゥさんの2枚と合わせて合計8枚脱衣で全裸確定かな」


「言わなくていいわよバカ!変態!クズ!」


 なぜ俺がそこまで罵られなければならないのか⋯⋯。と思いつつも、顔真っ赤にしたスゥさんを見てほくそ笑んでる俺がいる。確かにクズで変態かもしれない。

 次はウルが相手か⋯⋯、ルールをわかっているかどうかも不安だ。


「よーしウルの番!ウルはブラジャーを賭ける!」


「いや、カードを配られてからでいいんだよ賭けるのは」


「えー、だってブラジャー邪魔なんだもん」


 負けるのが前提のような不思議な会話だ。こういう奴に限って物凄く運がいいってことがありえそうなのが恐い。

 気を取り直してカードを配る。俺から見ると、ソウタの顔色がイマイチ優れていない。あまりいいカードを引けていないようだな。

 ウルは⋯⋯なぜか自信満々の顔をしているが、多分どんな役でもこんな顔をしているだろう。ある意味完璧なポーカーフェイスである。

 ソウタは服を3枚賭け、準備が整ったようなので、ゲームを進行させる。


「カードオープン」


「お、俺はノーペアだ⋯⋯」


「ウルはこれ!」


 自信に満ち溢れたウルの手札はノーペアだった。やはりルールを理解していなかったか?ノーペア同士なら判定勝負になる。手札の中で一番大きい数字同士を比べて、上回っているほうの勝ちだ


「俺は10だ」


「ん~ウルは7!」


「よっしゃあああああああああああああ!!」


 ソウタの悪運の強さが見事、勝利を勝ち取った。下手したらここで終わっていた可能性もあったが、水着と裸を見たい執念が運を呼び寄せたのか、ギリギリでゲームを繋ぎ止める。


「じゃあウルは後で脱いでね」


「え⋯⋯、恥ずかしい」


「(ブラは恥ずかしくないのか)そういうルールだから」


「レイの部屋で脱いでいい?」


 俺は沖縄武術のような足運びで彼女に急接近し、口を塞ぎ、それ以上の発言をしないよう防いだ。なんとか全員に聞こえずに済んだようだ。

 気を取り直して次はユバシリさんのターン。


「あ、あの、賭けないで降りてもいいですか」


「え、まぁいいけどそれだと勝つ確率下がって、仮に全員が負けると、賭けて負けた人だけ全裸でプールを泳ぐことになるよ」


「あ!そっか⋯⋯、自分だけ逃げようだなんて卑怯だもんね⋯⋯」


 うっ、ここにきて罪悪感が湧いてきたぞ⋯⋯。何度も言うが、本気で脱衣なぞさせるわけではない、が、今はネタばらしできない、できないのだ。

 心苦しいが、修羅と化すしかないのだ。後でいくらでも謝るから許してくれ。


「じゃあカードを確認して、賭け数を決めるか引きなおすか選んでね」


「あ、じゃあ私2枚交換で⋯⋯」


 2枚交換。つまり3枚はいいカードがきているということか?2枚を引き直せばさらにいい役ができる可能性を秘めているわけでもなければ、少数のカードを引きなおす理由はないだろう。これは少し陰りが見えるな。

 そろそろやるか。俺はソウタにアイコンタクトと肩をぐるぐるまわすジェスチャーを送った。特に合図は決めていないため、彼次第になる。


「俺は全部チェンジで」


 こいつ、できる。俺の適当なジェスチャーを難なく理解して行動に移すことができる。紛れも無い、勝負師の才能がある⋯⋯!か、どうかはさておき、俺の特技を魅せる時がきた。

 ずばり、カードシャッフルによるイカサマである。


 生前からカード配りのイカサマは妹相手に練習していたが、この世界においては動体視力が上昇しているため、カード捌きが容易になったのだ。

 無駄な動きと派手なシャッフルで、自慢気に披露し、カードを把握。ソウタに一番強いストレートフラッシュの役を配る。


 ユバシリさんには適当な数字をバラバラに配ったため、ロイヤルストレートフラッシュはない。これでソウタの勝ちが確定した。ごめんよユバシリさん。


「はい、じゃあ賭ける枚数を決めてね」


「私は⋯⋯全部賭けます!」


「え、いいの?」


「はい、さっきちょっとでも逃げようとしたことが恥ずかしくて⋯⋯。ここで報いたいと思って」


 良い子だ⋯⋯。俺はこんな良い子をゲスな罠にかけて奈落に落とそうとしているんだ。死んだら地獄行き確定だ⋯⋯。

 済まない、これは勝負の世界なんだ。勝った方が正義なのだ。


「カードオープン」


「私はフォーカードです!」


 危ない、適当に配ったらまさかフォーカードが完成したとは。つまり3枚同じ数字が揃っていてのチェンジだったということか。

 しかし、ソウタの役は俺が配ったストレートフラッシュ。その強さの前にあっけなく敗れ去ってしまった。


「ユ、ユバシリさん⋯⋯」


「⋯⋯タオルで隠してもいいですか」


 今にも泣き出しそうな顔をする彼女に対する返答は、YESしかない。

 もうすぐ終わるから、それまで待っててくれないか。


 残すところあと二人。おそらく女子チームはここまでもつれ込むことはないだろうと、高を括っていたに違いない。

 三回戦は神の手で盤をひっくり返したものの、その他二回はソウタ自身の運が掴んだ勝利だ。



「次は私!みんな、必ず勝ってくるから!」


「へっへっへ、もうすぐ全裸祭りの開催だぜぇ?」


「私が勝ったらあんたたち二人には全裸で船を一周してもらうからね!」


 なにやら自信がある様子のリリアさん、そしてなぜかまた含まれている俺。一応ゲームマスターとしての仕事しかしてないことになってるはずだが、なぜなのか⋯⋯。

 そして、ゲームはいよいよ終盤戦へ。

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