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18話 異世界サマーバケーション

 暑い⋯⋯。暑すぎる⋯⋯。


 俺たちが転生してから約二か月が経過していた。今は夏真っ盛りと言ったところか、日中は暑さでたまったもんじゃない。もちろん学校は長期休暇の真っ最中である。


 例の魔力の暴走、あの事件によって、俺の魔力に気づいたセンティネルは、俺を拉致、監禁した。

 およそ一か月はモードプールのセンティネル駐屯所にいただろう。貴重な青春時代の数ページを千切られた気分だ。

 俺はもちろん能力をオフにした。切り替えた瞬間にとてつもない重力を感じ、地面に這いつくばった。

 

 肉体を強化していたことによって、自分の筋力の何倍もの力を得ていたのだから当然と言えば当然である。

 いくら調査しても、元は普通の学生だった俺には、大層な魔力などあるはずもなく、晴れて釈放となったわけだ。


 相手が相手なだけに、どこに訴えるわけにもいかず、泣き寝入りするしかない現状だが、はっきり言って俺はどうでもいい。

 俺は世直しのために転生したんじゃない。守るものは、俺の周りだけでいいんだ。



 もちろん、姉さんもウルも、学校の友人たちも、俺のことを助けようとして、何度も足を運んでくれた。

 それでいいじゃないか。前世にはいなかった、かけがえのないものを、俺は手に入れたのだから。


「姉さん、大丈夫?」


「暑い〜⋯⋯。私こんなに暑いの初めて⋯⋯」


「ウルももうダメ〜」


 この世界の夏は日本より遥かに暑いな⋯⋯。

姉さんにはあえて現代チックなものを創ってもらわず、この季節を楽しもう、ということにしたが、いくらなんでも考えが甘かった。


「ギブアップ。氷魔法で部屋を涼しくしよう」


「ダメ!レイくんは魔法禁止です」


 監禁から帰ってきてからは魔法を使おうとすると姉さんとウルにストップをかけられるようになった。

 模擬試験で使用したレベルの魔法でなければ大丈夫だと説明はしたが、涙ながらにお願いされてしまえば、なにも反論はできない。


「あ!どうせなら家の横にプール創って水浴びしない?」


「ウルは賛成〜〜⋯⋯」


「水浴び⋯⋯だと⋯⋯?」


 つまりそれが何を意味するかと言えば、健全な男子諸君ならこれしかないだろう。

 そう、「水着」である。そういえば、姉さんはあまり露出がない服装を好むせいか、その、いわゆる「胸の部分」を見たことがない。


 服越しに見ればかなり大きいのはわかっている。って俺は何を考えているんだ、暑さで頭がやられたか。

 愛してはいるが、身内に欲情するのは倫理的におかしいだろう。いや、俺も16の男子だ。多少はしょうがないんじゃないか?世間の姉弟連中はどうなんだ?


 なんて悩んでるうちにプールが完成していた。もうどうでもいい、早く飛び込みたい。そして水着が見たい。


「ん〜どうせなら水着買ってこよっか。私が創ってもいいんだけど、センスが私次第になっちゃうしね。海とか行きたいしせっかくだから、ね」


「ウルはもう裸で泳ぐ〜⋯⋯」


「それはやめろ」


 こいつなら本気でやりかねん。止めたことは男として後悔したが、レイ・アサギリとしては止めないわけにはいかない。


 水着を買いに行く、という案はいいな。試着で色々見ることができるかもしれない。だが、移動するのは辛い、せめてこの時だけでもテレポートの解禁を⋯⋯。


「しょうがないな〜、あんまり魔力込めちゃダメだよ?気をつけてね」


 俺の祈りは天へ通じたのだ⋯⋯。






 なにかと因縁のある街、モードプール。この辺で買い物をするならこの街にこないと大した物がない、という点で行かざるを得ない街だ。

 念のため、帽子を深く被って歩くか⋯⋯。


「あれ?アサギリくん一家じゃん、やっほー」


「お、奇遇だな」


 リリアさんとソウタに出くわした。二人はなんだ?デートか?まさかそういう関係だったとは気づかなかったな。


「やぁ二人とも、デート?」


「んーん、違うよ」


 キッパリと否定するリリアさんに、心なしか、ソウタががっくりしているようにも見える。


「俺んちがリゾート地持っててさ、そこ貸し切ってみんなで遊ばねぇかってな、それで最初にリリアに相談したってわけ。アサギリたちもくるか?」


「え、いいんですか?私たちも⋯⋯」


「ウルも涼しいとこいきた〜い⋯⋯」


 この様子だと俺一人で行くわけにはいかんよな流石に。

 それにしても、サラッと言ったがリゾート地を持ってるって⋯⋯、相当な金持ちだなソウタの家は。

 「俺んちエアコン効いてて冷えてるぞ」ぐらいの感覚で言っただろ。


「どうぞどうぞ、アサギリのお姉さんみたいな美人ならじゃんじゃん歓迎ですよ」


 こいつ、まさか姉さんを狙って!?⋯⋯警戒が必要なようだな。

 ふと、ソウタが手を肩に回し、俺に耳打ちをしてきた。


「他にも誘ってるぜ、もちろん女子だけをな。アサギリ、お前も彼女いないだろ?一夏のアバンチュールしようぜ?」


 ソウタはイケメンなのに、こういうことしてるからあんまりモテないのかな。素材はいいのに勿体無い。

 そもそもアバンチュールってなんだ?俺は姉さんしか見えないんだが、それでもいいのだろうか。


「今のとこ誘ったのはスゥとサユキだな。後はまだ返事がきてないからお楽しみだ」


 スゥさん、身体治ったんだね。こういうイベントに参加しなそうなタイプなのに驚きだ。

 ユバシリさんはユキノメ族だから暑さに耐えられてるんだろうか⋯⋯。


「じゃあそういうことで参加決定な!また連絡すっから」


「アサギリくん、お姉さん、ウルちゃん、ばいばーい」


 夏休みに友人たちと、リゾートで過ごすリア充御用達イベントが、俺の人生で起こるとは。

 しかも、姉さんも一緒に、というのが素晴らしい⋯⋯。ソウタ、この借りは返すからな。





 水着の試着室前で、二人が着替えているのを待ちながら、想いを馳せる。

 姉さんがいて、妹のようなウルがいて、まるで本当の家族と遊びにいけるようだ。

 今はこれが本当の家族なのは当たり前なんだが、前世でもやりたかったことだったんだよなぁ。

 明るい売り場にそぐわないセンチメンタル気分、そうこうしているうちに試着室のカーテンが開いた。



「じゃーん!どう、レイ!セクシー?」


 やけに布面積が少ない、紺色のビキニタイプの水着を着るウル。胸はそこそこのサイズでしかないが、身体能力の高い獣人族なだけあって、非常に引き締まった、健康的な身体をしている。

 普段きているワンピースの痕が、うっすらと日焼けした肌に現れていて扇情性がある。

 低身長も相まって、マニアにはたまらないだろう。


⋯⋯相手はウルなのに、そこまでガン見して的確な表現をしてしまったのは夏のせい、ということにしよう。


「セクシーだけどもうちょっと露出控えろよ」


「やだ!これでレイをノーサツするんだから」


 どこで覚えてきたんだよそんな言葉。お父さんは悲しい。

 さて、お次は姉さんだ。やばい、今からドキドキする。


「レ、レイくん、恥ずかしいからあんまり見ないでね」


 そう言ってカーテンを開く姉さんを、忠告を無視してひたすら見つめる俺。もし、俺がカメラだったら連写撮影モードだ。何を言ってるんだろう自分。



 姉さんはやはり露出を嫌ってか、白と水色のセパレートタイプ、スリット付きのロングスカート。だが胸元は大胆なビキニで、中心に結び目があり、ほどきたくなる。

 ウルとは正反対に位置する大人な体型、中でも目を惹くのは、大きな胸からくびれにかけてのラインだ。

 俺の同級生とは一線を画するそのシルエットは、まさに女神と呼ぶにふさわしい、包容力の高さを表している。

 スリットから覗く、透明感のある白い肌の太ももに、俺の肌は逆に赤くなった。



 おっさんのような解説を脳内で展開した俺は、その巨大な胸から目が離れない。


「ちょ、ちょっとレイくん、目が恐い!」


「シーラずるい!ウルよりセクシーじゃん!その肉寄越せー!」


「ウルちゃん!あ、そこはっ、ダメ!」


 ウルが姉さんのをこれでもかと揉みしだき、その柔らかさが見て取れる。

 あぁ、今日死んでも悔いはないかもしれない。

ウルには後でご褒美を買ってやるからな。






 買い物を全て済ませ帰宅。


 夜になり、涼しい夜風に当たっていると、煩悩まみれだった昼の俺を殴りたくなった。

 姉さんに無言の土下座をし、困惑させ、暑い夏の一日を終えた。

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