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極限のリキシュ  作者: 小村周平
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再開と別れ

マトンはカマキラスっていう怪獣がモデル。なんかカマキリって魅力的な生物ですよね。

 その巨大なカマキリは大きな腕を伸ばすと周りの人間を圧倒するかのように羽を広げた。その体は家1軒分の大きさがあった。逆三角形の顔の半分以上を特徴的な反射をする目が覆い、腹は不気味に波打っていた。


「リキシュか・・・!」

 髭もじゃの大男は舌打ちするとその場から跳躍する。その巨体には似合わない動きだ。それを追うように巨大なカマキリは鎌になっている両腕をふるう。鎌は男をとらえたかとおもいきや、鈍い音がして防がれてしまう。


 男は体を石のように変質させていたのだ。



 カマキリは今度は腕を大きく上に上げると鎌の切っ先で地面に叩きつける。その場に土埃が舞うが髭の男は健在だ。どうやら更に全身を石化させ衝撃を和らげたようである。


 

「お前はなんだ?いきなり現れたと思ったらこんな攻撃をするなんてずいぶんとひどいではないか。」


 髭の男が目の前の巨大な虫に話しかける。まるで話すことができて当然だろうという素振りだ。


「・・・そちらこそ、ここは帝国の領土内だと知っての狼藉か?人買い。」

 驚いたことにカマキリが声を発して応答する。


「はははは。その口ぶりからすると貴様、帝国の犬か。たかが知れているな。俺のように自由に生きるリキシュの敵ではない。」


 カマキリの風貌を持った男、マトンは話をしている間に徐々に小さくなっていき、遂には人型にまで落ち着いた。それでも身長は大人の平均よりずっと高かった。カマキリの持つ特徴的な逆三角形の頭に多少丸みを持たせた独特の顔だった。そして目がキラキラしており、それが複眼であることによく見れば気づけた。


 

「投降しろ。戦いは無意味だ。」


「誰がするか。」


 そういうが早いが髭の男は近くにいたスノウをむんずと掴むと、ばっと身を翻して、逃げ出した。


「親分!まってくだせぇ!」

 その後ろを慌てて手下が追いかけるが、のっぽの男は両手を鋭い鎌に変えて手下の首をすっ飛ばす。それと同時にモビの村人達の首もすっ飛ばす。皆、自分の身に何が起きたかわからないといった表情で首が落ちていく。


「逃がさん。」


 そう言うと、大きく跳躍して追いかける。





 風のように走る髭の男はスノウを肩に担ぎ更に加速した。スノウは逃れようと身を捩ったが全く力が効かない。


 周囲が開けた場所に出た。そのすぐ後をマトンもものすごい速度で追い上げてくる。

「くそ。」


 髭の男は脂汗をかきながら、後ろからやってくる刺客に振り向く。速度を緩めないで突っ込んでくる。


 直後に二人は衝突する。マトンの手は再び大きな鎌となり髭の男の首を切り落とした。

 その有り様を直接見ていたスノウはその戦いの凄まじさに呆気に取られてしまった。ようやく体を開放されて地面に足をつけると、首を落とされた髭の男から素早く離れる。

「・・・。おい、人買いはこれで全員か?」


 おもっているよりずっと低い声でマトンは話しかけてきた。スノウが恐怖を感じながらコクリと頷く。


「よし。なら、これから皆を集めて旅支度をしろ。これから俺がバルダンに連れてってやる。」


 

 

 スノウはリキシュ同士の戦いを間近に見てその凄まじさを肌で感じていた。しかし、それでも、ユキよりは『弱い』と感じた。



 一方その頃、ユキはスノウを求めてさまよっていた。もう2日も周囲を探しているが、なにも手がかりがない。


 苛立ちは募るばかりだったが、それでも何かしらの情報を得るべくして動いた。


 そうやって探索を進めるうちに遂にモビの村にたどり着くことができた。村に入ってすぐに異変に気づく。村人たちが一人もいないのである。血の跡もある。


「これは・・・血、虐殺の跡じゃな・・・。」


 もっと調べると、そこには足あとがあった。それは裸足で、固まって踏み荒らされている。足の大きさから全員子供だということがわかった。


 そこまでわかった時ユキはすでに走りだしていた。もうすぐスノウと再開できる。そう考えるといてもたってもいられなかった。



 ユキとはすれ違いでスノウ達は村を出ていた。子どもたちを引率して行くといったカマキリの男はマトンと名乗った。


 マトンは風体から恐ろしい人物だと思ったが、話せる人物だった。自分が帝都でリキシュとして皇帝に仕えていることや、バルダンに着いたら皆を元の暮らしている場所に戻すなど約束してくれた。


「そういえば、そこの黒髪の子供はさっき怖い目にあったのに悲鳴一つあげなかったな。」


 スノウは突然話をふられて驚く。最近よく死体を見続けたおかげとは言えなかった。


「・・・ああ、こんな時代だ。お前さんは死体に慣れちまったのかね。」


 マトンはなんとなく察したようでこれ以上の話を続けなかった。


 しばらく沈黙が続く中で進んでいると、突然、上からがさりと音がして、なにやら白いものが落ちてきた。

 

 それはなんとユキだった。木々の上を走ってきたのだろうか?頭に何枚か葉っぱをつけている。

 



 ユキは周囲の驚きを無視して、周りを見渡す。そしてスノウを発見すると目を輝かせて抱きしめる。

「ようやく会えたのぉ!お前様!」


 久しぶりに再開したユキさんは普段通り泣きそうになる。

「ユキさん!大丈夫だった?!」


 両腕でお互いに抱きしめると、ユキの髪の毛が肌に当たる。そこに頬ずりをすると、ユキが嬉しそうにする。周りの子供達はあっけにとられているが、マトンだけは違った。


「あんたは誰だ?」


 マトンは突然の訪問者に警戒をする。


「お主に名乗る名前などないわ。」


 それを無視して抱擁を続けるのでスノウがユキをたしなめる。


「ユキさん。この人は僕を救ってくれたんだ。そんなにつっけんどんにならないで。」

 

「むー。お前様がそう言うならわしの名はユキ。この子とは将来を約束しているものじゃ。」


「・・・・・。」

 マトンは睨みつけるようにユキを見ている。

「あや、その、あ、あのマトンさん。ありがとうございました。僕ユキさんと一緒に行きますからここでお別れします。」

 

 すると、それに反応してスパークが声をだす。

「そうか。スノウを待っている人ってこの人か。俺はスパークっていうんだ。スノウには世話になっちまった。ここにいる全員の代表として礼を言わせてくれ。」

 しげしげとユキを見ながら握手を差し出す。


「うむ。」


 ユキはスパークと握手するとマトンにも手を差し出すが、マトンは身じろぎひとつしない。代わりに口を開く。

「・・・あんたに一つ聞きたいんだが、メルル村って知ってるか?ちょいと前に村人が全滅した村だ。」


 突然自分の村の名前が出てきて、スノウの心臓が凍りつく。


「いや、知らぬな。」


 ユキは平然とした口調で答える。それに構わずマトンは続ける。

「そうか。出身は?」


「それをなぜお主に言わねばならぬ?」


 スノウはユキが苛立つのを感じた。ユキは子供っぽいところがある。差し出した手が拳に変わるのが見えた。


「あ、あの、マトンさん。もう僕たちは行きます。ありがとうございました。」


 ぴょこんとお辞儀すると急かすようにユキをせっつく。


「待て。俺の話はまだ終わっていないぞ。お前最近人殺したな?血の匂いがプンプンするぜ。」


「それはお互い様じゃろう。お主も血の臭がするわ。」


 二人の間に緊張が高まっていく。


「とりあえず、あんた首都バルダンに来てもらう。」


「断る。」


「なら、力づくだ。」


 言うが早いかマトンは両手を鎌に変えてユキに襲いかかってくる。ユキも拳を握り直すと、手から炎が沸き立つ。


「ユキさんダメだ。逃げよう!」


 スノウは声を上げるが、その声は届いていない。激しい音がしてマトンの鎌がユキに迫るが、ユキはそれを難なく受け止める。どうやら、あの炎が一種の頑丈な手袋となって保護しているらしい。


 その瞬間、マトンの顔面にユキのパンチが飛んできて、凄まじい轟音とともに周囲の木々をなぎ倒すしながらぶっ飛んでいく。


 そこから追撃しようと足に力を込めるのを見て、スノウが縋りつくようにユキの腰にひっつく。


「危ないぞスノウ。下がっておれ。」


 ユキが怒りに満ちた声でスノウに言う。


「やめてユキさん!やめて下さい・・・!」


 その剣幕に押されながらもスノウはユキを押しとどめる。その必死さを見て段々とユキの怒りが収まっていくのをスノウは感じた。

 それと同時に周囲にいた子供たちも泣き始める。すすり泣く声の中でもう嫌だという声も聞こえた。


「・・・もう良いわ。勝負はすでに決した。」

 ユキはそんな声を聞いて白けたのか戦闘態勢を解く。


「行きましょう。ユキさん。」

 そう言ってユキの手をとるとその後ろからスパークの声が突き刺さった。


「お、おいそんな・・・そんな化け物と一緒に行くのか・・・?」

 スパークがしまったという顔をするがユキはそれよりもそばにいるスノウが手をつないでくれた事のほうが関心があるようだった。嬉しそうに尻尾を振っている。


「僕には、ユキさんしかいないから。」

 スノウはスパークに少し微笑んで、そのままユキと一緒に去っていった。

ユキさんと再開。ユキのリキシュとしての実力は遥か上を行っているようです。


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