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極限のリキシュ  作者: 小村周平
2/4

人買いたちとの戦い

人買いたちとの戦いです。

 ユキは目を覚ます。寝ぼけながら周りをぺたぺたと触るが、いるはずのスノウの姿がない。起き上がり周囲の異変に気づき、険しい顔をする。


「どこにいったのじゃ・・・?」


 すると部屋のドアが開く。


「お、起きてるじゃねーか。へへ、ちょうどいいか。」


 宿屋の亭主と見知らぬ男が2人おり、皆、いやらしい笑顔をしている。

「お主ら・・・。スノウをどこにやった?」


「げへへ、あんたが俺達と遊んでくれたら教えてやってもいいぜ?」


 そういうと男たちが全員で襲ってくる。しかし、ユキは素早く身を翻してその攻撃をかわす。そして体を取り押さえようと伸ばした男の手を手刀で切り落とす。


 切られた男は驚愕の目を見開き、後ろに下がろうとするが直後に2撃目が首に迫り、真っ赤な血しぶきを上げる。


「なに!?」


 その光景を見て他の二人は動きを止める。目の前の美女の人間離れした動きが全く信じられないという顔だ。


 男達は逃げようとするが、その背中に容赦なくユキは爪を振り下ろす。部屋一面血の池となった。


 ユキは一人だけ残った男の動きを奪うため両足をむんずと掴むと力任せにもぎ取った。


「ぎゃああああ!」


 両足をもがれた男は激痛で悲鳴を上げるがそれに構いはしない。


「もう一度聞くぞ。我が主、スノウをどこにやった?」


「痛いぃっ・・・!」


 男の弱音を上げるが、それに構わず手刀を縦に振ると男の右耳が切断される。


「早く答えろ。次は左だぞ。」


「うあ・・・。うっあ、あの・・・知らないんです。ガキ・・・子供、を気絶させた後は別のやつに渡すようにいわれてるんですぅぅ。お願いです殺さないでく」


 そこまで聞くとユキは男の首に手刀を振るい男を殺す。

 

 そのまま急いで宿を出る。だが宿の外にはもう誰か居る気配がない。


「スノウ・・・!スノウ・・・!」


 泣きそうな顔で一心不乱に走りだし、闇夜の中にユキは消えていった。





「うおおおお!」

 人買いの連中が飲んで騒いでいるところに躍り出る。スノウ達の出現に驚いている連中を数で押していく。人数だけで言えばこちらのほうが十分多い。全員で奇襲することであっという間に人買いたちを降参させることができた。


 

「よし!武器も奪っちまえ!」

 スパークが大声を出して皆に指示を出す。人買い達は銃や短剣を持っていたので、それを奪う。

 スノウはその脇を急いで通り過ぎる。

 

「僕もう行くよ。」


 きっとユキさんが自分のことを探している。心配を掛けたくない。ユキさんと離れたくない・・・。そういう思いが足を動かしていた。


「え、ど、どこに?」

 スパークは驚いて止めようとするが構わず洞窟を出る。


 洞窟の外はもう真っ暗だった。中にいた時は気付かなかったが気絶してからだいぶ時間が立っているようだ。


「やめとけ。もう真っ暗だ。」


「洞窟の中に松明があるはず。それを持っていく。」


 踵を返して洞窟に戻るスノウをみて、スパークは嘘だろと声を上げる。


「やめとけよ。夜の森なんて絶対に迷うぞ。街まで行きたいのなら、朝になってからでもいいだろう。」


 スノウは唇を噛みしめる。


「お前は馬鹿なやつじゃない。無謀なことをするなよ。」

 

「僕、僕ユキさんを一人にしたくない。傍にいなきゃいけないんだ。でなきゃ僕も、ユキさんもだめになる。」


「ユキ?待ってる人がいるのか。・・・ならなおさら準備が整うまでここで待つべきだ。もしお前が死んだら、その人が悲しむぞ。」


 その言葉を聞いてスノウは、はっとした顔をする。


「・・・洞窟に戻ろう。あいつらから奪った食料もあるはずだ。一先ず洞窟に戻ろう。」


「・・・うん。」





 同時刻、この洞窟から森を抜けたところに小さな村があり、その村の酒場に小柄な男と、背の高い男が向かい合っていた。


 背の低い方は土気色で顔のパーツパーツは付いているが非常に覚えにくい顔をしており、まるで作られたような顔をしていた。肩にマントを羽織っている。


 背の高い方も同じようなマントを羽織っており、両目がクリスタルのようにキラキラしている。その背の高さの割に頭の小ささがカマキリのような印象を受ける。二人は酒場の端っこにおりその異形さは人の目を十分惹きつけるはずだが、周りは全く気にしていなかった。


「マトン、シュルクは本当に死んでいたのか?」


 小柄な男が背の高い男に話しかける。マトンと呼ばれた男は目の前のビールをぐいっとあおる。


「間違いない。完全に殺されていた。とても強い衝撃を受けたのだろう。体はバラバラだった。」

 唸るように声を出す。 


「あいつは手練れだった。殺せるとしたら我々と同じリキシュだろう。」


「・・・シュルクは単独でメルル村の森を調べていたな。森にはなにかいたのか?」


「森の中央で巨大な白い石があった。その白い石は不自然に中央から割れていた。そしてその周りには激しい戦いの跡があった。」


「シュルクはそこで?」


「いや、その近くのメルル村の中央で死んでいた。村の人間をリキを使って化け物に『変異』させていたが、それでも敗北した。『変異』のリキをもってしても対峙したリキシュは殺せなかったようだ。」


「なるほど。・・・ではこの事を俺は皇帝に知らせてくる。お前は原因究明を続けろ。」


 背の低い男が音も無く席を立つ。マトンはビールをまたぐびっとやる。

「もう行くのか。通夜振る舞いのビールはどうする?」


 表情を変えずにテーブルを見やる。

「もう飲んだ。」


 そう言うとふっと消えた。マトンはちらりとビールを見る。確かにジョッキは空だ。

 静かに首をふる。

「・・・相変わらずだな。カーレ。」


 寂しそうに、マトンはグビリとビールを流し込んだ。




 夜が明けて洞窟から出たスノウはスパークたちと一緒に洞窟を抜ける。


「自由なんだ!これから自由なんだよ俺たち!」


 みんな晴れ晴れとした顔をしている。スノウはそんな皆を尻目に浮かない顔をする。


「もうちょい元気だせよ。鎖は解かれたんだぜ。どこにでも行けるんだ。」


 スパークが背中をばしっと叩く。


「うん・・・。そうだね。とりあえずスパーク達はどうするの?」


「うーん。考えたけど、とりあえず近くの村に向かおうと思う。この辺の地理には疎いから大変だけど。スノウも途中までついてくるよな?」


「うん。ユキさんと合流しないと行けないから。」



 こうして子どもたちは出発した。道案内に人買いの連中の一人を先頭にする。人買いの男は抵抗する気はなさそうだ。



 一時間もしないで小さな村に辿り着いた。村にぞろぞろと子どもたちが入ってくるので村人が訪ねてくる。


「ど、どうしたんだい?こんな大勢で」

 スパークが答える。

「俺たちこの人さらい共にさらわれてここまで来たんです。」


「え、人さらい?」


「この森の奥の洞窟で捕まっていました。」


 村人たちがぞろぞろと仕事の手を止めてこちらにやってきた。スパークはそんな村人たちに一生懸命説明をすると皆驚いた顔をする。


「・・・というわけで、俺達元の場所に帰りたいんですけど、ここってどこなんでしょうか?」


 村長らしき人に向かってスパークが話しかける。

「あ、ああここは大陸の西でモビという村だよ。」


「モビ・・・。」


「ほらあっちに青色山脈があるだろ?あそこを越えたとこに都がある。」


 見ると確かに青色山脈が見える。あそこからユキさんと離れ離れになってしまったのだ。


「帝国首都バルダン・・・、あそこに行ければ俺たち全員家に帰れるぞ。」

 子どもたちの顔に安堵と喜びの顔が出てくる。


「今日はもう遅いから明日出発すればいい。ああ、あとその人買い共も見つけ出してちゃんと逮捕するから安心してくれ。」



 村長は子どもたちに丁寧に接してくれた。モビの人たちは子どもたちに同情的だった。


 その夜、久しぶりにベッドで眠っていると外でドタドタと音がする。何事だろうと思っていると、バンと荒々しくドアが開かれる。そこには洞窟で捕まえていたはずの人買い達が立っていた。


「な、なんだ!?」


 スノウ達が驚くよりも早く男達は素早く子供たちを捕まえてしまう。


「てめーら!良くもやってくれたなぁ・・・!」

 

 捕まえるときに何発か殴られてしまい体と頭にひどいアザができてしまった。無理やり外に連れだされると外には他の子供達も皆捕まっており、周りには人買い達がいた。さらにその後ろにはモビの村人たちが申し訳無さそうに立っている。


「な、なんで?」


 スパークが困惑して叫ぶ。すると他の人買い達をかき分けてひときわ大きな体を持つ男が出てくる。この男も人買いなのだろうか。他の奴らとは一線を画す雰囲気を持っていた。


「お前ら・・・。こんなガキどもにやられたのか。」


 その男はもじゃもじゃの髭を撫で付けながら太った体を揺らした。ピンっと親指で石を弾くと、石は放物線を描きながら地面に落ちると吸い込まれるように消える。


 すると、その部分の半径1メートルほどの地面が流砂になり渦になる。まるで蟻地獄のようにだった。

 足を取られてスノウや他の子供達をのみ込み始める。

 この異様な力は『リキ』だ。スノウは確信した。大男は『リキシュ』なのだ。

「う、うあああああ!」


 もがいて手足をばたつかせるが砂はますます体を沈ませていく。

「見せしめに何人か生き埋めにする。」

「おまえら!」


 スパークが助けようと駆け出すが人買い達がその体を取り押さえる。


「なんでだ!なんで・・・こいつらが!」


 後ろに控えている村人たちを睨みつける。その目線から避けるようにもぞもぞと動く。

「うるさいぞお前。まだわからないのか?この村の連中も俺等の仲間なんだよ。」


「な、仲間になった覚えはない。」

 村長が声を荒げる。

「お前たちが暴力をふるうから仕方なくっ・・・。」


 そこまで言うと大男が村長に拳を振るって黙らせる。


「いつもご協力ありがとう。後はそのおしゃべりさえやめればなおいいぞ。」


 そうこうしているうちにスノウは砂に飲まれていった。もう首だけしか出ていない。他の何人かは完全に飲み込まれてしまっている。


 もうだめだと思った時、何か巨大な物が地面のそこから湧いてきた。それがスノウや他の子供達を蟻地獄から吐き出させた。


「なんだ?」


 スノウが砂を吐き出しながら仰ぎ見るとそこには巨大なカマキリがいた。 



巨大なカマキリって結構気持ち悪いなー。

ユキさんは今どこにいるのやら。

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