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シゾフレニア  作者: 民音慧可
第二部 原点回帰の物語
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その人生―4

人間として意識を持ち始めたのは15年前

気づけば、大人の男性と女性に微笑みを向けられながら淡々と経過していった。

成すがままに、本能のままに、周りから大事にされながら生きていく

生まれた日を一年ごとに祝われ、聖夜の日には騒ぎ、年末年始は行事に参加する。

ただ、そう…普通に日本の文化と常識と一般通念の元に育てられてきた。

平凡に、通常に、変わりはなく異常もない。

でもそう…ずっと付きまとっていたような…

影のようにピッタリとくっ付いているような…

考えや理解よりも奥深い部分…。


動物的で…しかし人間的な本能に…

何かがずっと引っ掛かっている―――


朝と夜は家で、平日の日中は保育園で生きていくすべを学ぶこと

何も不思議じゃない。現代日本ではありふれた光景だ。

しかし、だ。当時から付きまとう違和感。違和感。違和感―――


友達と遊具で遊ぶこと、家で好きなものを食べながら家族と過ごすこと。

可笑しくない、何も可笑しくない。でも、時間が経つごとにその違和感は増していく


「みなとー、置いてくぞ~」

「・・・あっまって!!」


違和感を気にすると、無意識に呆ける。立ち止まる。

そして毎回のごとく誰かに話しかけられないと戻ってこない

父か母か、はたまた妹、友達、先生、近所のおじさん。

だが24時間365日ずっと絶え間なく一緒に居ることはない

そう…酷いときには夜、真夜中、朝までずっと呆けていたこともある。

ただただ天井を見ながら、横になり寝る準備が出来ていたとしても、眠らずひたすら違和感に捕らわれる。

そんな生活が息苦しかった。


でも――――


「湊、誕生には何が欲しい?」

「・・・おいしいもの、かな」

「じゃあおっきなケーキとお肉を用意しよう!なっ■■■!お前も食べたいだろう~」


・・・今、なんていった?


いや、分かっている。分かっているはず。父は、妹に――――

妹に、確認を――――


「うん!たべたい!!」


―――――いもうとって、だれだ


その瞬間、全ての違和感の正体を露わにした


―――――ははって、だれだ

―――――ちちって、だれだ


違う、違うんだ。この人たちじゃない。この人たちは家族じゃない。

家族のはずなのに…今までずっと一緒に暮らしてきたのに

この人たちは、"肉親"じゃない


いくら家族のように小さい時から親身に育てられても、

一緒に居る時間が長くても

それを覆す確信が、心の底を埋め尽くして


「・・・う・・・あ・・・・ぁ」


・・・・気持ち悪い・・・

解らないことが気持ち悪い

知らないことが気持ち悪い

ただ居間で家族と話しているだけなのに、どうしてこんなにも距離を感じるのだろうか

どうして他人と思えてしまうのだろうか。

最も近くに居る存在が、信用できない、信頼できない。

理屈じゃない、これに科学なんて、今のところ存在しない。

本心と本能、感覚と想像。

・・・そう、根拠なんてないんだ

でも、だったら・・・

根拠を見つければいい



「・・・ねぇ、かいくんのお家ってたしか病院だよね?」

「病院が家じゃないよ、おとおさんもおかあさんも病院で働いてるだけ」

「お医者さんってこと?」

「うん、だからぼくもいつかお医者さんになるんだ~」


とある日の平日、いつものように何事もなく保育園で友達たちの遊ぶ日々

その中でも仲が良かった"かい"という友達と何気ない会話

…向こうはちゃんと自分を信じてくれている。

だからこそ心痛い。でも、確かめないといけない

利用するようで悪いけど、打てる手段は打っておきたかった


「…一つだけ、何も言わないでうなずいてほしいことがあるんだ。」

「めずらしいねー、みなとがたよるなんて・・・・よっぽどのことかな?いいよ、言うだけならタダだ!」


いつもいつも、こいつは能天気に明るく振る舞っている。

誰にでも、何にでも、ブレずに芯を持って生きている。

その姿に、尊敬していた。だから仲良く、近くで接していたいと思ったんだ。

彼を見ていれば、何かが変わるのではないかって。

だからこそ、言える。頼る。知りたくないと投げるのは簡単だ。

だが、知りたいという欲には決して逆らうことなんて出来ない。


「これを…同じものか確認してほしい」

「…ビン?中身はみても?」

「ああ、勿論。みなくても言うつもりだよ」

「…赤黒い…これみっつとも、血?」

「うん、そうなん―――」

「スン…あっ人の血だね、これ」


…そこまで、分かるのか。俺は確かに外からは見えない薄暗い容器に血を入れた。

だが、誰の血かまで分かるものか?見ただけで、嗅いだだけで解るのか?

いや、そんなことはどうでもいい。ようは、かいは見て嗅ぐだけで人の血と判断できる人間だということには変わりないのだから。

直感か、理論か、それとも別の何かか…

今はそれを追求することじゃあない。


「この人の血が同じものか確かめてほしい…つまり、血液型が同じかって意味でいいのかな?」

「あ、ああ。そうだ」

「ふぅん…りょーかい。いいよ明後日までには診断書と一緒にもってくるね」


な、なんだ?急に雰囲気が大人びているというか、賢くみるというか…

普段のかいじゃない。それだけは明らかだ

でも、だからなんだというのだ。

二つ返事で引き受けてくれたんだ。嬉しく思えよ、ぼく


「―――り」

「ん?」

「理由は、聞かないのか?」

「うーん、自分からは聞かないー。みなとがいつか話してくれるのを信じて待つよ」


…人格が出来ているのか、それとも単純に興味がないのか。

意図は、最後まで分からずじまいだった。



―――――――――――――――


…ここまで怖くなるとは思わなかった。

真相を知る事、知ろうとする覚悟、知るための行動

どれを取っても怖くて怖くて仕方がなかった。

でも、ただ戻りたかっただけなんだ。

違和感ばかりで居心地の悪い繋がりは、もう沢山だったから。

自分が何者かを知ることが悪いなんて思わない、むしろ知ってて当然で、普通気にしないものなんだ。

それに自信が持てなかったぼくの心が弱い。ただそれだけのこと

弱いからこそ何かで補う。足りないから付け足す。至っておかしなところはどこにもない、当然の思考だ。

だから迷わない。怖いけど、迷わない。


「いってらっしゃい、湊。怪我のないようにね」

「湊君は危険なことしなくて、周りを見ている子ですから大丈夫ですよ、お母さん。ねぇ、湊君」

「…うん、大丈夫だよ。迷惑掛けることはしないから」

「ふふ、そうね。でも、お母さん的には今のうちにいっぱい無茶や危険なことはしてほしいなぁ。怪我はしちゃだめだけど。心配も迷惑も掛けてほしいわ」

「……むずかしいよ。でも、ありがとう」


こんな会話を続けるために――――


「湊ー、お父さんとゲームしようゲーム。ほら、これ今流行ってるアクションゲームだ」

「…アクションだとお父さんの方が強いじゃん。ボク勝てないじゃん。ぷよぷよやろうよ、それかボンバーマン

「えっ!いや、その手のジャンルはお父さん合わないなぁ…折角買ってきたんだからこっちをだな…」

「…息子負かしてそんなに楽しいのか…」

「ちょっ!いつの間にそんな言葉を…いやそれよりそんなことは決して…」

「お父さん、この間本気でやって負けたから悔しいんですって。たまには付き合ってあげなさい、湊は大人なんだから」

「…はーい」

「ちょっと母さん!?」


こんな日常を味わうために――――


―――――――――――オレは、知る



‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐


思い出す、といより追体験に近いね。

知らない自分を身体で味わうのはどんな気分なんだろうか。

オレには解らないけど、でもまあ良い気分じゃないだろうねぇ

悪趣味だと思うかい?いいや、そうは考えないだろう

だって、君が知りたかったことがここに全て隠されているんだから。

ああ、これを終えたからといって何もかも分かるとは思わないでほしい。

ただ、限りなく答えに近いヒントが手に入るだけだ。

何せ自分自身この時は答えに結びつかなかったのだから。

なんでって思うかい?ここまで見たなら結論は用意に想像つくだろう。

でも、そうは問屋が卸さない。

世の中、自分を中心に周っちゃいないからねぇ。むしろ、有川湊にとって自分に不都合なことばかり起きるっていうのが親しみやすい表現だろうか。

どちらにせよ良くない気分だ。


さて、記憶の整理はできたかな?なあに、この後の事象はそんなに時間はかからないさ。

では続きだ。嬉恥ずかし赤裸々実体験の追体験。終章のエピローグ、そして君のプロローグに至るまでをご覧あれ


‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐

次で主人公の中の人の過去編は終了。

そしてとあるキャラの過去を掘り下げ、終章突入です。


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