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シゾフレニア  作者: 民音慧可
第二部 原点回帰の物語
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その人生―2

次の投稿ははやくしたいなぁ(願望)

夢での邂逅は、俺の自意識を侵していく

失ってたもの、失うように仕向けていたこと、全部が全部ここには存在している。

だからどこにも逃げ場はない。逃げることは許されない。

俺は多分、ようやくここの仕組みを理解したのだろう。


逃げてた自分を追い込み、窮地に立たせた上で、受け入れさせるために。

勿論、色々なものから逃げ続けていた俺はそんなことできやしない

では誰が?・・・なんて愚問も生じない。

今言っただろう、自分だと。

つまりは、俺じゃない他の意識。

自己意識が破綻していた時、生まれてしまった人格たちの仕業。

俺を、おれにするための最後の手段。


・・・さながら、この電車は俺が歩んできた道筋で、霧の世界は俺を逃がさないための壁だ。

もう逃げ場はないぞと、受け入れろと、ここから全てが始まるのだと

アイツは言っている。そんな風に思えた。


ならば答えは簡単だ。至極当然で明瞭な回答だ。


ただ一つ―――みなとを受け入れる。それだけだ。

それだけでこの世界は崩壊し、有川湊は人間になれる。

…言葉にするのは簡単だ。でも、やろうとしていることはそう簡単じゃない。

今まで逃げてきた事象が、一つになって一気にのしかかってくるのだ。

溜まったものじゃない、絶望しかないじゃないか。


「…ミーシェ」


それでもお前はここにいた。

最後の最後で置き土産ってところか…アイツらしい

この世界で初めて会う相手がお前でよかったと心底思うよ。


「てことは、やっぱりお前もいるわけだ。…紗雪」

「…はっ、何?今度はアンタが相手してくれるわけ?」


後ろを振り向くと、向かいの扉に背中を預けている忽那紗雪(推定14歳)がそこにいた。

どこかの制服姿で学生鞄を手に持つ、どこにでもいる中学生

…いや、どこにでもいる中学生なら、左胸にポッカリと穴が空いているはずがないか。


「いいよ、30分5万ね。痴漢プレイなんて初めてだけど出来るだけらしく演じてやるよ」

「・・・・・」


突拍子もない言葉に流石に口が開けなかった。

男女の関係に性的行為が含まれるのは当然だが、まさか援助交際申し出てくるとは…


「そういうこと言うのは、もう少し成長してからにしたほうがいいぞ。胸無い癖に金取れると思ってんのか」

「どこ見て言ってんだよ不能が!Dはあるだろうがよ!!」


…俺が指摘したのは物理的に左胸がないことを指したのだが、盛ってるなぁおい

様子を見る限り、自分じゃ気づいていないのか。

それとも、気づいてないふりをして逃げてるのか…もう少し話してみるか


「そうだな、女だの友人だの…俺は俺以外の人間からは避けて生きてきた。だからまぁ正しい性知識だとか共有できる感情とかは持ち合わせちゃいねぇよ」


これはまるっきり嘘ではない。性知識なんかは本を読んでいれば知らずと入ってくる。本で知ったことは現物がその辺歩いているのだから比べてれば正当性は増す。

でも関わろうとは思えないからそれ以上には踏み出さない。掘り下げない。

共有できる感情についても同じようなことだ。

もしまともな感情、または理念を持っていたら


自分の父親を殺してさも当然の如く家族に対面できるのだろうか?


「――――ちょっと、無視すんなよ」

「あ?」

「何考え込んじゃってるの?笑える。どーせどうやってしてやろうか考えてたんでしょ?」


いやいや、だからそういうわけじゃなく…


「…男が考えることなんて…結局…最後は、そればっかり…家族でも」

「――――」


その言葉は震えていた。

泣いているようにも見えるが、怯えているようにも見える。

その様子とその言葉ですぐわかる。男と何かあったことぐらいは


(聞きたくねぇ…)


しかし聞かなければいけない、知らなければいけないという気持ちが大きい

だがあまりにも直球では気が引ける。少し遠回りな言い回しで尋ねてみよう


「…割り切るしかねえんじゃないかな。多分、心の底じゃみんな分かってることだ。男性は、女性の身体を求めることについては」

「……それが、家族同士でも?」

「家族愛とかについて疎いから何も言えないな。でも想像はできる。余程ゲスでクズな考えを持つ男ならやりかねないだろうな」


実際そういう事件は多く起きている。

だが、その事件後、その家族がどうなっているのかまでは分からない


「…そう、なんだ。」


唇を噛みしめながら彼女は答えた。

彼女がどう思っているかはわからない。

だが、このままだと彼女はずっとその事実を受け止めながら生きていくだろう。

きっと…誰も信用できない、自分の心と感情を殺しながら他人を拒絶して

だってそうだろ?一番信用できる家族が信用できなくなったら、誰を信じればいいんだって話になる。そしてそこで考えは完結する。

だから誰かが言わなければならない。

無責任でも、他人ごとでも。人は一人では生きていくことなんかできないことを

自分にも、言い聞かせるように…


「…だからそん時は他人に助けを求めればいい。そして自分の居場所を作ればいい。家族に居場所が無くても、友人たちに居場所があれば、お前は存在しているってことが知られるんだから」

「…そんなこと」

「まあ最初は無理だろうな。すげぇデリケートな話だ。一歩間違えればいじめにも繋がる。そしてどこにも居場所はなくなって、自殺しようとする。どっかのロシア人みたいにな。だからいろんな奴らと知り合って自分で見極めろ。自分で決めて、自分で責任を持て。じゃないと…生きてる価値なんてない」


我ながら、薄っぺらい言葉だと思う。

だって俺が出来ていないのだから説得力がなさすぎる。

だがそれは俺を知っている奴がこれを聞いたらの話だ。

無関係で、初対面ならその場合ではない。


「何様よ、あんた。分かった風な口聞いて…ホントうざい」


ああ、そうだな。でも今これを言わないと、きっとお前を見る人間は一人もいなくなる

その行きつく先は孤独死以外の何物でもない。

誰にも気づかれず、誰にも気にしてもらえずそのままこの世から消えること。

それを自覚して進むのであれば止めない。でもコイツはそれを自覚していない。

そんな様を見過ごせるほど、まだ俺の性根は腐ってなかったようだ。

…それもきっと、最初にあいつと出会っていたからだろうな

それとも、覚えているからだろうか

居場所がどこにもなくなって、歩道橋から自殺しようとした馬鹿なロシア人を


「ねぇ、聞いてもいい?」


俯きながら彼女は俺に質問を投げようとしてきた

…これが最後の問答になる。

だから…俺はそれに答える


「ああ、なんだ?」

「――――――アンタにとって、家族って何?」


…………

……

――――…長い沈黙の果てに、俺はその答えを出す


「――――…分からない」


ああ、駄目だ、答えが出ない。

具体的にどんな存在なのか、どういった感情を抱いているのか。

恐らくそういったことを聞きたいのだろう。

だが…ああ、何故だ。答えが出てこない。いや、本当に分からない。


「…そっか、まあ別にいいよ。ただ私が思っていることが正常か異常か確かめたかっただけだし。分からないんならきっとそれも答えなんでしょ」

「お前が、家族に思っていることって?」


これは卑怯だ。自分が分からない癖に相手には一方的に聞くなんて

でも知りたいと、知っておきたいと直感した。

どんな人生を歩んできたのかは具体的には知らない。

でも辛く酷い人生だったってことはその胸を見ればわかる。

感情が、心が、壊れてしまったことくらいは


「あ~、あたしはさ。家族って別に大切でも守りたいものでもないんじゃないかなって。結局血は繋がってても自分じゃない、他人なんだからさ。何考えてんのかわからなくて、それでも血は繋がっている気味の悪い動物。そんな印象だよ」

「――――……お前」


言葉が続かない。なんて答えればいいのかわからない

「家族だから」という縛りをコイツは持ち合わせちゃいないんだ。

家族でも、人だ。他人だ。自分以外の人間だ。だから他の人間と平等だと

コイツは言っている。特別でも特殊でも大切でもない。突き詰めれば血が繋がっている赤の他人とは少しだけ濃い関係だけだと。

…ああ、それも一種の答えなんだろうな。

一般通念なんてものはそこにはない。自分が経験した結果その答えなら誰が何と言おうと揺らぐことはないだろう。


「…電車止まるね」


深く考えていたところに、彼女はそう呟いた。

確かに速度がだんだんと落ちている


「ここまで、か。あたし帰るわ」

「どこに?」

「家に、よ。居場所は無いけど、野宿は飽きたし。…ありがとね、見知らぬお兄さん。変な話聞いてくれて」

「いや、貴重な話だったよ」

「そう言ってくれると、嬉しい」


それだけ残して、電車が止まった後無言で降りて行く。

…結局俺自身答えは出せなかった。

だがこれをいつものように先送りには出来ない。逃げることは許されない。

今答えを出す、それかヒントをつかまなければならない。


…しかし、無常にも電車は再び動き出す。


「いや、もういい」


そのまま止まらなくていい、動き続けてほしい

そうだ、もう立ち止まってはいられない

自分で自分のことを知らない、なんてことはもううんざりだッ!

誓ってやるよ、もう逃げないと、振り向かないと


これ以上は時間の無駄だ。…いや、無駄なことなんて決してなかった

ああ、だから感謝してやる。俺に足りないものを気づかせてくれたこと

その感謝の礼にお前が望んだ答えを出してやる。

よく聞きやがれ有川湊の数多ある人格共ッ!!

知っているはずだ、見てきたはずだ。ただ忘れているだけなんだ

だから―――それが何だったのかを取り戻す

家族とは?

友人とは?

恋人とは?

普通とは?

虚実とは?


――――真実とは?


「―――有川湊オレの全てを返しやがれェッ!ミナトォ!!」


既存キャラ達の過去編は日を改めて

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