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シゾフレニア  作者: 民音慧可
第二部 原点回帰の物語
67/74

その人生―1

ここで一気に主人公の過去と目的を掘り下げます。

※なお、数話掛かる模様


「お兄さんは、自分の記憶が分からないんだね」

「…ああ、そうだな。確かに自分の記憶に自信はない」

「なんでそうなっちゃたのかはわかる?」

「俺は色々な人格を持っていた。それが原因で入り混じっているのかもしれない」


金がないのに乗せてくれた霧の中突き進む電車

案内された車内は、いつもの光景だった。

いつも見ている奇々怪々な光景だった。

空いてる席に座ろうと歩いた矢先に横切る「ヒト」は、顔の半分が崩れているサラリーマンの男性が居た。。

席に座った後、横を見れば手と足、目と口が逆である姿でみかんを食べている髪の長い女性が居た。

そして目の前には、帽子を深く被り顔が見えず、ぬいぐるみを抱きしめる白いワンピースを着た小さな女の子が座っていた。

そんな世界。そんな光景。そんな、日常。

久しく忘れていたのかもしれない。いや、今にして思えば見ていたのに目を背け考えないようにしていたのかもしれない。

あれはそう…ソヴィをあの場所へおいてきたあの日から

ソヴィが戻ってきたあの日からずっと考えないようにいていた。


「ふぅん…難しいことはよくわかんないや。わたしが見ているお兄さんはお兄さんだし」

「…君は、どこもおかしくはないんだね」


そして先ほどから目の前の少女と話し込んでいる。

行先も、降りる駅も不明な状態だ。つまりは何も考えてない頭空っぽの状態

だから少女が声を掛けてきた時、付き合う気になった

少女は最初に何故この電車に乗ったのかを聞いてきた。

そんなのは分からないと答えたら、なら生い立ちを話してほしいとせがまれた。

こんな世界で隠す理由もない以上、つらつらと話すと、さっきのような回答が少女から出たのだ。


「…?…あっ、わたしの体の話?ううん、あるよ。隠してるだけ」

「そっか、見られたくないものが隠せるなら隠した方が楽だよな」


そうすれば、自分だけの問題になり、誰にも迷惑掛からないから


「でもこれは間違っているんだって最近思うようになってきたの」

「…え?」


どうして、そう聞こうとした瞬間、電車が急停止し始めた。

俺は何とか手すりにしがみついたが、少女はぬいぐるみを持っていたため、そのまま勢いよく床に倒れそうになるが、寸前でぬいぐるみを手放したことで何とか体制を保つことが出来た。


「……あ」


その結果、恐らく少女にとって見られたくないものが露わになってしまったのかもしれない。


「…気持ち悪いでしょ、これ。うん、見せたところで困っちゃうよこんなの」

「……」


白いワンピースを着た姿。その実ぬいぐるみを抱えてた裏には腹の部分が血で汚れていた。

いや、汚れているだけじゃない、一見して凹んでいるようみえる。

そこだけ、穴が空いているような…


「…痛くない、わけないか」

「ふふ、理由とか聞かないんだね。お兄さんは優しいなぁ」


顔は隠れていても素直に笑っているような気がした

そしてその優しさは、本当の意味で優しいわけじゃないことを俺は自覚している

落ちたぬいぐるみを拾い渡し、事実を伝える


「違う、優しいわけじゃないんだ。ただ関わりたくないだけで、巻き込まれたくないだけで…一人で居たいだけなんだよ」

「一人は、さびしいよ?」

「でも、一人のほうが気軽だ」

「…それじゃあ、何も進まないよ?」


進まない。

それはきっと、全てにおいて進まないのだろう。

成長しない、現状のまま、何も変わることはない。

この子はそういっている。

それも事実だ。そして俺はそれに満足していた。

でも、ああ―――

半年前の、それこそソヴィが戻ってきた時自覚したには、自覚した。

このことを俺はようやく自覚出来たのだ。

だから今ならハッキリ解る。


「ああ、そうだな。それは間違いだよな」


そう答えた時、電車の速度が落ち止まろうとしていることが振動で分かった


「…そろそろ降りるね。話に付き合ってくれてありがとう」

「それは…俺の台詞だ。」

「お兄さんはまだ降りない方がいいよ。きっと、ここじゃない。ここが終わりじゃないと思うから」


少女はそう言い残すとゆっくり立ち上がり、電車が止まったと同時に出入り口へ向かった。

俺はそれを眼で追う。足取りはトボトボとしていたが、それでも前へ前へと進んでいる。

そして、少女が外へと降りようとした時―――風とともに少女の顔を覆っていた帽子が車内まで吹き込んできた


「…あっ」


隠されていた素顔が露わになる。

少し距離があるが、横から見てもはっきりとわかる。銀髪で碧眼で―――そして表情は優しい表情。


「――――…ッ!」


知らず、俺は立ち上がっていた。

立ち上がり、少女を追いかけようと足に力を入れていた。

でも、確認しないといけない。このまま別れることは、きっと、あの時と、全く一緒だと刹那に感じた。

そう、この行動は反射のようなものに近い。

過去を繰り返すような、既知感に近い。

だからこそ止まる必要はない。そのまま進め、確かめろッ!

少女は―――、彼女は―――、


「―――おいッ!」


電車を降りはしない。だけど、扉越しで叫び少女の動きを静止させる

帽子を失った少女は振り向かない。それでも俺の次の言葉を待ってくれているように見えた。

だから、伝える。あの時伝えられなかった言葉を、アイツの言葉を。

…分かってる。これは自己満足だ。自己暗示だ。

もう彼女は存在していない。

それでも、だ。それでも今目の前にいる彼女に言わないと、俺は…有川湊は前へは進めない。

そう、これは選択だ。

前へ進むか、現状維持を続けるか。

変わるか、変わらないか

伝えるか、伝えないか


――――――…俺は…

――――――…僕は…


「―――…アイツを、愛してくれてありがとう。俺は、生きてるよ」

「………うん、元気でね」


―――・・・ああ、そうか。そういうことだったのか

多分、これがお前との最後の邂逅。これでもう、アイツの未練はない。

俺もお前も、結局どこまで行っても一人だったんだな。

だから惹かれあった。今にして思えば、寄り添って互いに傷を舐め合っていただけに過ぎないのかもしれないけど…

俺は今、彼女のおかげて生きている。その事実がどれだけ重いものか、今再確認できた。


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