感覚
更新が遅くなったうえに短いこの文章、申し訳ない
「・・・・・電気も点けずに何をしている」
「刹莉・・・」
大の男を引きずりながら急いで家に帰ってみると
光のない暗闇の中、そこには鏡に怒鳴り散らす湊がいた
それを見たとき、私は千里ちゃんについて焦っていた気持ちが何処かへ行ってしまったのだ
それほどまでに衝撃的だった。
恐らく恐怖さえ感じたのだろう。今でも少し身が震えている
それでも意を決して言葉を放つ
まずは第三者からみた客観的視点から
「それから、どうして鏡の自分に話してる?とうとうイカれちゃった?」
言葉はなるべく強気で、そして徐々に煽るように
「いや、これは―――」
そしてすぐにコイツのかき消すように間髪入れずに言葉を繋げる
「千里ちゃんが今どんな状態か知ってて自分のことに構掛けてるの?」
「知ってるよ、だから今から―――」
五月蠅い・・・
「天音が何を企んでるのか、麻薬の被害がどうなっているのか。どうして自分の考えを私に教えてくれないの?」
「それはお前をこれ以上巻き込む訳には―――」
黙れ・・・
「ううん、麻薬なんてこの際どうだっていい。極論、他人がどうなろうと私には知ったことではない。でも、千里ちゃんは他人じゃない!私は他人じゃない人間を見捨てるほど心が冷たい人間じゃないのよ!それは、貴方も一緒だと思っていた・・・。私を助けてくれたから」
「・・・だが出来る限り被害を抑えたいとは思うだろ?」
話すな・・・
「原因を見つけりゃこれ以上知り合いが被害に遭うこともなくな――――」
刹那、金色に侵され、人のものではなくなった二つの眼の瞳孔が開く
「―――黙れッ!!」
激情し、動揺し、それでも怒りをばらまき散らす
かつてないほど、いやソヴィトヴィーニアの人生の中で一度も起きたことのなかった現象
"誰かに向けて憤怒する"
自分に怒りを向けることはあっても、他人に怒りを向けることは決してなかった
それは、そもそも他人とはそういうものだと無意識において理解していたからだ。
他人には期待してはいけない
他人には信頼してはいけない
他人には感情を向けてはいけない
自分じゃない他の誰かに期待も、信頼も、感情も表現しないのであれば
そもそも悲しむことも怒ることも、嬉しくも悲しくも感じない
それこそソヴィトヴィーニアが歩んできた人生の教訓
如月美月といるときも、中津美樹といるときも、そして仁多見香乃といるときも
心の奥深くでは、信用していないのだ
だが今、それらの過去を淘汰して、唯一の理解者である有川湊に向けて怒りを放つ
いや、そもそも――――
「それで私に話しかけるなッ!!」
「・・・どうしたんだよ、"刹莉"」
ドクン、と心臓が跳ね上がる
・・・ああ、これか。これだったのか今までの違和感は
畜生・・・。勘が鈍ったにもほどがある。どうしてここまでこの男を認めてしまったのだろうか
・・・だが今ので確信出来た
「お前に用はない・・・。あるのは有川湊だ・・・ッ!!」
そいつは困惑している。それくらい見てわかる
だからこそ違和感を感じるのだ。あまりにも、私が知っている有川湊のイメージよりも
悉く人間らしい表現をするからだ
「お前じゃない!!お前は私の知っている有川湊じゃないッ!!お前は誰だ、有川湊の何だッ!!」
「・・・」
その顔は今までに見たことない表情をしている
一見驚いているようにもみれるが、奥底では何かをたくらんでいるような
けど、だから、どうした
今までの違和感と先ほどの出来事で既に今の有川湊が私の知っていた有川湊ではないことは明らかだ
自分の認識が間違っていると思ってしまうほどに、今の彼は得体の知れない存在になっている
それ自体珍しいことじゃない
だからこそ、今の今まで気づかなかった
分かりえなかった
・・・そして彼はこう言う
その言葉で、私は私が知りえなかった知りたくもない真実に近づいてしまっていた
もう断ち切れない関係。故に深くのめり込む
妹のことを放置して自分のことに構掛けてる彼に文句を言ってやろう
そしてどうするかこの後考えよう
だから、まずは目先の真実から認知してやるよ
面倒くさい。でもその面倒臭さは今の私ならほんの少しだけ分かる
私も、私個人の自我だけで存在していないのだから
「・・・気づけるぐらいには見抜けるようになったんだなァ、刹莉」
次回は二部の真相編に入ります




