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シゾフレニア  作者: 民音慧可
第二部 原点回帰の物語
62/74

優劣

気づけば一か月経っていたとは・・・。大人になると時間の経過が早いものです。

とはいえ、途中でやめることは致しませんので、拙い読み続けていただければ幸いです。

「―――――あ」


―――気づけば、そこは灰色に包まれていた

肌寒くて、湿っぽくて、そして白く黒い灰色の空間に

電気があるのかも分からない、見渡しても≪それ≫に覆われている自分ひとりの世界。

今が朝なのか、夜なのかさえ分からない。

光が遮断されているわけではない。だけど、少なくても自分の視力では先が全く見えない。

何故ならこの空間は、酷く曖昧で自分の目すら曇ってしまうほどの濃厚な『霧』によって支配されているからだ

まるで今の自分の心象風景のような親近感が湧いてくる


―――どこだっていい

―――誰だっていい


直感で理解してしまったのだ。今の自分ではこの霧から逃れられることはできない。

脱出することはできない。閉ざされたままだと。

だから敢えて滞在しよう。

この景色が何とどう関わりがあるのか、この眼で確かめるために。


僕は・・・この霧が何処まで続いているのか確かめたい


どうやら生憎飢え死にはしないらしい。

そもそも、肉体というものがあるのかどうかすらも曖昧だ。

ならばいっそのことこの霧の中、ずっと迷ってみよう。

何処まで続いているのか、実際に確かめてみよう。

肉体の有無が曖昧ということは、自分の生死も曖昧ということに繋がる。

故にそんなことを考えたところで、結局は有耶無耶になる。

ならばいっそのことこの霧の中を歩いてはどうだろうか。

歩いた結果、一つだけ分かることがある。


―――迷うこと


だがそれは今の状況とそう変わらない。

ここで佇んでいたところでこの状況が一変するとは到底思えない。

ならば、覚悟を決めて進んでみよう

迷ってみよう。

さぁ、迷うことを決めたのなら、いつまでもこの足を立たせたままにするわけにはいかない。

軽々しいかもしれないが、現状を打破することを考えるのならこの手しかない

ならば、やるしかないだろう


――――歩く


一歩一歩、前へと足を運ぶ。

勿論方向感覚などあるわけがない。

故に、自分が今向いている方向が前だ。

例え本当は後ろ向きで、歩んだ先に崖があろうと、それは決して間違いではないと確信できる。


前方だろうと後方だろうと、右方だろうと左方だろうと。

歩みを止めない限り、それは決して間違ってなんかいない。

この確信はどこからくるものなのか。

何を持って決断しているのか。

それすらも、この霧と同様に曖昧なものだ。


・・・だけど、今はそれでいい

何故ならこんな霧しかない空間で体育座りをしていたところで、何も変わりはしないのだから


「・・・よし」


自分が何者なのか、生きているのか死んでいるのか

それすらも曖昧だ。

曖昧で、不明瞭だ

でも、だからこそ、今自分が抱いているこの「意」を大切にできる。


では、その意とは―――






「何のために出てきやがった」


第一の質問を俺は鏡のアリカワミナトに向けて投げる


こいつはもう役目を終えたはずだ、と思っていたがこうして目の前に現れた以上まだその


役目は残っているらしい


・・・というか、コイツは湊の負の感情そのもので、俺のストレスが原因で表に出てくる


ことが今までの印象―――――


いや、ということはつまり・・・


『そっ、テメェが必要以上のストレスを感じたからオレが出てきたってわけだ』


「・・・ストレス?なんのことを言っている。いや、あるとするなら何が原因だ」


また根こそぎ刈り取ってやる


そう思ってしっまが故に、顔に出てしまったのか奴は不貞腐れた顔をする


『教えるわけねえだろ。いや、今度こそは自分で見つけやがれ。誰からもヒントももらわずに、テメェが掘り出さなくちゃ意味ねぇんだわ』


「・・・そうかよ」


鼻から教える気はないってことか


『なぁに、今更お前を乗っ取ろうとか勧誘しようとか思ったりしてねえよ。ただまあ、今の俺はお前のストッパーだからなァ。鍋から溢れる泡を塞き止めるための蓋ってわけよ』


「俺の何を止めるんだか・・・。どっちかっていうと蓋より火元じゃねぇかよ」


『昔の話だ昔の話。まっ、信じるも信じないもテメェ次第で、誰も信じねぇのがお前だもんなア。自分も信じない、自分に自信がないのが今のテメェだからな』


「さっきから何が言いたい。用がないなら引っ込めよ、傍観者であり続けてろ」


『・・・ハぁ、そこなんだよなあ問題は。いいぜ、場合も場合だから早々に引っ込んでやルよ。・・・ただこれだけは覚えとけよ』


奴は淡々と消えゆく自身に見向きもせず俺を注視し、こう告げる


『―――気づいてンなら、自覚しろ。他人に過度な期待を押し付けてんじゃねえよ』





・・・何分経っただろうか


何時間たったのだろうか


アリカワミナトと会話して、会話が終わって、気づけば今もこうして鏡越しの自分を凝視していた


「―――チッ」


露骨に舌打ちするほどに不愉快だ


だが思い出せ。今は自分のことを優先すべきときじゃない


今は千里を、そして面倒臭い茶番劇を終わらせる


そのために―――


「ようやく戻ったようね」


次の行動に移そうと洗面所から出るべく振り向いた先に


片眼が異様に輝く銀髪の女性が険しい顔をして俺を見ていた


「刹莉・・・」


お前、いつからそこに


いやそもそもどうして黙って俺の背後に居た?


声をかければいいものの・・・いや、わざと声を掛けなかったのか?


今の俺の様子を知るために


「・・・色々と聞きたいことはあるけど、今は千里ちゃんを優先する。今、彼女はどんな状態か知ってる?いえ、それだけじゃない。他にもあの麻薬関連で知ってることがあるでしょ。今ここで洗いざらい言ってくれないかな?」


いつもに増してこいつの雰囲気が不穏だ


「なにか、あったのか?」


「・・・襲われたわ、ついさっきね」


―――なるほど、だが見る限り五体満足な体をしているようだから撃退には成功しているようだ


情報でしかなかった存在に、今確信が持てた


(あの糞野郎の仕業か・・・)


「まっ、ちゃんと情報は確保しておいたから安心して。ほらこれ」


明かりのない夜だったため、気づかなかったが刹莉の右手には成人を過ぎただろう男性が・・・見るに堪えないくらい顔が原型をとどめていなかった


えげつねぇなおい。それで死んでないのかよ


つーかよく見りゃボタボタと血が廊下に垂れてるじゃねぇか。明日にでも掃除しとけよなお前


「殺さない程度に壊すのはお手の物だな」


「理性が働いたからだよ。まあそんことはどうでもいい、こいつは天音にでも渡しておくとして・・・湊、これからどうするつもり?」


・・・普段に比べて微妙に男っぽ口調になってるような雰囲気がある


眼帯を外したから?まあ深くは考えずにありのままを受け止めておく


「どうするって?」


「らしくなく恍けるの?・・・レツオが生きてて、今もこの町にゴキブリみたいに潜んでいることぐらい解るわ。そしてそれを貴方が知っていることも。・・・帰ってくる途中に千里ちゃんとすれ違ったわ。様子が変、なんてどころじゃなかった。そしてそれを知ってなお湊はどうするのかを教えてほしい」


どうする、か


選択肢は3つある。だがどれも最後は悲惨なものなりかねない


だが生憎と悲惨な結末は避けなければ、なんてことは考えてはいない


どんな選択をしようが、現状誰かが傷つき誰かが悲しむだろう



(・・・なんてな。そんなのは当たり前だ、綺麗ごとばかりで世の中動く訳がねぇ)


そう、だったら答えはひとつだ


自分に都合の良い結果を残すまで


誰かが死のうが誰かが泣こうが知ったことか


俺が望む結果を妨げる場合があるならば、全面的に答えるさ


ならばもう決まっているだろう


優先すべきことは―――――ただ一つだ

2部はそろそろ終盤です。物語内の時間ではですが

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