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シゾフレニア  作者: 民音慧可
第二部 原点回帰の物語
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鏡映

ここからようやく二部の本番であり終わりに近づきます


「・・・・?」


こういう感覚を違和感と呼ぶのだろうか


物静かな夜道を普通に歩いているのに、どこか騒がしいと感じ


前を向いているのに、意識的には後ろを向いている


・・・何かが違う?


いや、違うことなんかない


ただ・・・そう、懐かしい感覚だ


それもロシアに居たころの雰囲気に似ている


だが比較すれば少しばかり緩い


ロシアでの生活は緊張に慎重を重ね計算的に過ごしていたため、生きている実感がなかった


あのころ・・・具体的には日本で言いう中学2年になる前ぐらいの時期だ


季節は冬。といっても雪国だから季節は関係ないか


ただこうして夜道を歩ているだけで、どうしてこうも懐かしく思うのか


その感覚はどこからくるのか


しかし、夜道とはいえ町は町だ


家があり、ビルがあり、店がある


つまり眼に見えないだけで、人はいるのだ


ならば騒がしいと感じるのは至極当然だろう。


そう思うと、この違和感は恐らく既知感に近いものだろう


であれば気にすることじゃない。昔を懐かしく思うことが間違いではないのだから


とはいえ、過去に縋るのはどうかと思う。


・・・なんてね。私だって過去に縋っていたんだ。


だが、縋っているわけじゃないが縛られているのは事実だ


乗り切らなければいけないことはたくさんある。その中でもまず目標にするのがこの彼女の記憶だ。


他人の人生を背負うことが、いかに重みのあるものだと痛感した。


決して軽んじてはいなかった。だけど知りたくなかったし、興味もなかったというのが事実だ。


他人と接することが、知らずトラウマになっているのかもしれない


過去にいじめられていたからなのかな・・・


乗り切ったつもりで、実はただ逃げていただけで何も見ていないのかもしれない


(・・・はぁ、一人だと余計なことばかり考えちゃうな)


他人は信用しないが、他人と話はしたい


どこか矛盾しているこの心理は、我ながら不愉快極まりない


ここはひとつ楽しいことを考えよう


・・・・・・・えーと


・・・・・・・あー


・・・・・・・・・・・ん?


あ、あれ?楽しいことを考えようとしたのにあまり思いつかない


楽しい思い出も・・・なんだろう、事実は思い出せるんだけど詳細までは分からない


趣味という趣味も特にないしなぁ


本は読むほうだ。知識を蓄積していくのが楽しい


ただそれは蓄積していくこと、覚えていくことが楽しいってだけで、何かこう・・・違う気がする


「ーーーーーイラッシャッセー」


気づけばコンビニに辿り着いていた


店内は新装開店したのか、


どうでもいいことを考えていると時間が経つのが早くて助かる


でも、いつも同じようなことばかり考えている気がする


結果、いつも答えは出ず、なあなあに終わる


(・・・これじゃあ、ダメだよね)


しかし今は目的を果たそう


コンビニへ来た目的は飲料水。炭酸でも良いが、ここはあたたかいお茶を選ぶ。


理由は気分だ。特に意味はない


それからから揚げ棒を買おうと思いレジへ向かう


値段は些細なものだ。店員が品物を袋に詰め、私は小銭を財布から取り出した瞬間




――――――店内は暗闇に包まれる





19時ごろ


俺は野暮用を済ませようやく帰宅する


しかし、えらく時間がかかってしまった


往復で1,2時間以上か。だがその価値はあったんじゃないかと思う


というか思いたい。折角出向いたんだ。それほどの価値がなければくたびれ損だ


さて、問題はここからだ


玄関の扉に手を掛ける


すると、その扉はカギが掛かっておらず力を入れると自然に開かれる


家は明かり一つ無いのに、だ


刹莉が居れば刹莉の部屋か、居間に明かりが灯されているはずだ


しかし現状、家は暗いまま


となると刹莉はまだ帰宅していないことになる


最も、俺より早めに帰ってきて部屋で寝ているということもあり得るが


アイツはこんな時間から寝はしない。むしろ最近じゃ電気を消さずに寝ていることがある


光熱費は払わせているから別に構わないのだが


さて、色々と奇妙だがこれを見れば結論などすぐに出る


家の玄関には、日本人ならば必ず靴がある


そして、見る限りそこには刹莉の靴はない


その代りに、ここ数か月でようやく見慣れた靴があった


故に俺はその人物を探す。


と言っても二階は俺と刹莉の部屋しかない


どちらとも鍵はかかっていないが、両部屋にいる可能性は低いとみた


なので、まずは一階から


玄関のすぐ近くの部屋、誰もが居心地が良いと感じる居間へと足を運ぶ


・・・居間の扉に差し掛かった時、直感的に理解した


この扉一枚の先に誰かいる


誰かだって?決まっている


勢いはなく、ただそっと扉を開ける


そして、やはりそこには人がいた


「・・・・・電気も点けずに何をしている」


ここ数日行方が分からなかった不出来の妹


その妹は、あろうことか直立して天井のどこかを半分口を開けて無表情に見つめていた


俺の言葉を遅れて聞き取ったのか、首だけを俺のほうに向けてきた


「・・・でんき?ついてるよ」


「そうか、点いているのか。ところでお前、ここ最近何していた?」


「・・・とくに、なにも」


「少なくても昨日は帰ってきていなかったが、友達の家に遊びに行っていたのか?」


「・・・うん、そう」


「だったら一言連絡しておけ。刹莉の奴が心配していたぞ」


「・・・・いまなんじ?」


スルー、か


「19時回ったぐらいか」


「・・・ふうん」


俺の返答にそう呟くと、ゆっくりと俺の方へ近づいてきた


いや、正確には居間の出入り口に


千里はただただ俺を退けて玄関へ向かい、靴を履き始める


「どこへ行く」


「・・・」


今度は相槌すらしない。こちらを見向きもしない


そして何も言わずそのまま一人フラフラと家を出ていく。


「・・・・」


俺はそれを止めない。


見捨てるのではなく、見限るでもな、ただ見送った


アイツの決めた人生だ。そこに"他人"が必要以上に関わることはしない


とはいえ放置するわけではない。手は打ってある


そのうえで俺は自室に戻る。来るべき機会を見逃さないように


「後はアイツらの連絡次第、か・・・」


ふと、考えてしまう


これで本当によかったのだろうか


もっと良い案はなかったのか


絶対に犠牲は出る。その犠牲をどれだけ最小限に収めるかが問題だった


そして結果、一人の身内を犠牲に事は収拾しかけている


・・・正解なんて、ないんだろうな


あるのはただ、自己満足だけ


紗雪たちに意見は聞いたが、どれもしっくり来なかった


故に俺は、自己満足と自己犠牲によってこの麻薬事件という茶番劇に幕を下ろすとしよう


これから起こる事は、結果としてもう俺が有川家の人間として居られないことになる


しかし、"有川"に執着していたわけじゃない。だからこそ一番の被害者は俺の、そして千里の母親だろう


何せ、一人の息子に夫と娘を奪われ一人になるのだからな


それほど悲劇を味あわせてしまうことへの罪悪感を俺は・・・


(―――感じないな、これぽっちも。何せこれで被害は収まるんだから、それでいいじゃないか。・・・何を俺は今更――)




―――気づけば、俺は洗面所で鏡を通して自分自身を視ていた




その顔は、我ながらヒドイものだった


歪んでいて、不安定だ


情緒も、判断も、決断も、意志も


全てが不安定で、未確定で錯綜しているように視える


それは、俺自身の畸形が物語っている


・・・殴りたくなる。らしくないと、どうかしていると思う


これが俺?これが有川湊?あり得ない、かつてないほど俺は俺自身を否定する


何が俺を困惑している。何に俺は後悔している?


バカみたいに自問自答を繰り返したところで、結局自分を正当化するだけ


間違った結論すら、正しくなる


「・・・だったら、どうすりゃいいんだよ」


いや、そもそも―――


依頼なんか受けた俺が、そもそもの間違いじゃないのか?


どうして俺は依頼を受けた?どうして断らなかった?


受ける理由が、ないはずな――――の、に―――



――――瞬間、脳裏に二人の人影が残像として横切る



「・・・・・あ」


今のは、なんの―――



《―――・・・・あーあーあー!!メンドクセェ!!そんな無様な姿を晒す様じゃ前のほうが幾分かマシだったぜ!?》


間髪入れずに聞こえたのは自分の声。鏡に映る自分が一人でに俺に向かって暴言を吐いていた


「・・・いきなりしゃしゃり出てきてそれか。傍観するんじゃなかったのかよ」


《あまりにもうじうじとしているもんで視聴者やめちまったわボケ。らしくねぇことしやがって、今更ブレてんじゃねぇよ面倒くせェ。・・・もっとも、その原因はアイツなンだろうがな》


「悪いが、お前に構っている暇はない。裏側は裏側らしく影に潜んでいろ」


《悪ィな。これじゃあ今お前が死んだところで有川湊に合わせる顔がネェんだわ。だからまァ、ちったぁオレの言葉に耳貸しな》


気味悪く嗤う。その顔は俺であって俺じゃない


傍観を決め込んだはずの畸形が、今になって俺の目の前に現れる


有川湊の裏の人格であり負の感情―――――"アリカワミナト"が


アリカワミナト書いている時が一番楽しい

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