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シゾフレニア  作者: 民音慧可
第二部 原点回帰の物語
58/74

出会いの先に

既に最後までのプロットは完成しているけど、かなり長くなりそうです。


刹莉と鏡香が出会うその数分前――



有川湊は帰宅すべく来た道を戻る


ポケットに雑に仕舞い込んだ封筒を大切にし、見るべきタイミングを考えながら、帰路を辿る。


目前に迫ったのはエレベーターだ。それによってこの階まで来たのだから帰りも乗るのは当然


だがあえて湊はそうしない。その横に設置されている階段で降りることにした


単純に湊は乗り物が苦手だからである。自分で操作する分には構わないが、バスや電車や飛行機、エスカレーターにエレベーターなど。そういった誰だかわからない赤の他人がメンテナンスを行っている乗り物は比較的乗ろうとは思わない。


それは単純に、信じられないからだ。


故に階段や徒歩、自転車といった自分の力、自分がメンテしているものを優先的に考えている。


以前美月の家に行くとき電車を使ったが、アレは単純に待ち合わせが駅だったためそのほうが迷わず時間も取らず分かりやすい場所だからである。


自転車で行ける距離なのでそれでも構わなかったのだが、若干捻くれてそうな性格をしているため、待たせるとすぐにいなくなるんじゃないかという疑問があったのだ。


因みに帰りは徒歩で携帯のマップを頼りに駅まで向かった。


・・・まあそれら全て原因を探せば随分と昔に乗っていたエレベーターが止まって、数時間か閉じ込められた記憶があるからだ。


トラウマというほどのものではないが、退屈で苦しかったあの数時間は今でも記憶にあり、それが起因していることには間違いない。


そしてそれは今回も変わらずなので、エレベーターを使わず階段を使い降りていく

エレベーターがあるのだから誰も使うことはないだろう階段を


そんなことを思いながら下ると、下から足音が響いてきた

音からしてヒールのようにカツカツとしている。そのため女であることが予想できる。


人間というものはどうしても楽をしたがる。


短縮に、最短に行動するのが自然だ。


故に瞬時に考察し、行動する


こういう場合、鉢合わせをしてはいけない。なので相手が通るであろうルートを考えそれを避けるように湊は降りることにする。


楽をしたいのであれば必ず階段の内側を通るはずだ。


無意味に外側を、壁に沿って上がる人間がどこにいる



―――近づく


淡々と降りる足音と、堂々と昇る足音


そして、お互いがお互いの姿を現す


湊の考え通り、女で階段の内側を昇ってきていた


そして―――擦れ違う瞬間、発する



「―――――気持ち悪い男ね」

「―――――気持ち悪い女だ」








鏡香との挨拶が済んだ後、すぐに香乃の部屋から出ていった


どいやら用事があるらしい。なので着替えを取りに来ただけだとか


「・・・ごめんね、変な姉で」


「いや、在学中も思ってたけど素晴らしいお姉さんだと思うよ」


「磯波君、デレデレしてたもんねー・・・」


「ちょっ!ちがっ――――」


慌ててる慌ててる、実際綺麗なのは確かだけどそれは香乃も負けてないと思うけど


威厳、というか風格が違うのかな。生まれ持った才覚とかそんな感じな存在感がある


勉強ができる、スポーツができる。しかしながらそれだけではあのような人間にはなれないだろう


そして、そんな存在が近くに寄ってきたのだ。そりゃ当然キョドるだろう


「いいの!分かってたことだから・・・」


「・・・・・」


やっぱい思い詰めてたんだね。


身近にいる人間だから分かるのだろう、そして幾度となく味わったのだろう


だから会わせたくなかった。特に彼氏には


それと同時に会わせてみたかったのだろう。彼がどちらを取るのかを


その葛藤の末、どんな結末になるのかを


・・・でも、不安になる気持ちも分からなくはないけど、少しは自信を持ったほうがいいんじゃないかな?


他人を信じない私が言うのもなんだけど、端から見ていても分かる。


「・・・香乃、まさか僕が乗り換えると思ったの?」


「・・・・・うん」


少なからず、思っていたからこその返事


1割の不安があるだけで、それを払拭したいと思うのは当然だ


特に、男女の恋愛関係は


「・・・香乃、正直に言うよ」


「う、うん・・・」


・・・ヤバイ、こっちまで緊張してきた


さて、どうやって口説くのか見ものだな~


他人の修羅場(?)は第三者の視点から見ると本当に面白い


いや、まあ大体が第三者も含む三角関係で展開されるものだが


さあこのイケメンは香乃の不安をどう解決するのか・・・




「君のお姉さんが在学中、僕たち男子じゃいつも話題で持ち切りだった。付き合うとしたら、結婚するとしたら、一生を添い遂げたいとしたら、誰になるかという議題というのはどこにでもある。結果真っ先に挙げられる名前は君のお姉さんである鏡香先輩だ。外見、性格、知識、人間性。全てにおいて男なら必ず惹かれるだろう。実際僕もその一人だった。でもね、香乃・・・」


互いの目と目を合わし、彼は告げる


「僕の心はもう香乃に惹かれているんだ。一緒に勉強して、一緒に笑って、一緒に助け合えるそんな君に。それは香乃がお姉さんより劣っているわけじゃない。理論も科学もそこにはない。あるのはただ、僕がこうして恋し愛するのは「仁多見香乃」という女性ただ一人だけという感情論だけなんだ。その感情論だけは、決してブレることはないよ。香乃が望むまで、望んでくれるまで僕はそばに居続けたい。・・・ダメ、かな?」


「・・・・伸也」


・・・・はぁ~


(帰ろうかな~・・・)


流石の私も空気は読めるのでこの部屋から離れることにしよう


といより、私が居たくなかったのだ。


いや・・・誰だって居たくないだろう


こんなベッタベタで甘酸っぱくて見ていて痒くなるようなピンク色の空気の中なんて





あの空気に耐えられなくなったため、こっそり部屋のドアを開け隣の居間へと逃げ込むことにする


すると、ソファに深く座り、お茶を啜りながらファイルを眺めている香乃の母親、仁多見伊奈の姿が見受けられた


「ーーー・・・ん?あら、刹莉ちゃん・・・だっけ?どうしたの?」


私に気づき、優しく声をかけてくれた


「いえ、ちょっと二人にラブラブな空気に耐えられなくて・・・」


「あははは、それは仕方ないでしょ~。でも、刹莉ちゃんも恋人作れば分かると思うよ、色々」


「そう、ですか・・・」


正直、その手の感情や価値観はよくわからない


今は自分に体と日常で手一杯だ


「・・・何を見ているんですか?」


苦手なため、すぐさま話題を切り替える


それを察してくれたのか、伊奈さんは快く答えてくれた


「ちょっと昔の思い出を振り返ろうと思ってね。本当は持ち出しちゃダメだけど、パクってきちゃった♪あっ、丁度いいから刹莉ちゃんも見る?」


そうお茶目に言いながら私にそのファイルの内容を見せてきた


そこには・・・


「―――・・・湊の、カルテ?」


それも随分と昔のもののようだ


となると恐らく、姉が死んだ時に入院していた時のものだろう


そこには様々な項目が記載されている。しかしながらその用紙は少しだけ古びているように見えた


氏名、生年月日、住所、職業、被保険者証・・・。そして傷病名


その傷病名には何項目か気になることが記載されていた


「・・・・自閉症?」


「これは過去のカルテよ。最新のものは別にあるけど、この頃はこう考えていたなぁ」


懐かしむようにそう口にする


「この診断書は本当に最初の、それこそ湊クンと初対面時のカルテなんだよ。外傷は殆どなかったのに全てを拒絶していたからそう判断したの。」


で、これが・・・といいながら一ページ捲り見せてきた


「次に診断したときの診断書ね」


「・・・統合失調症」


馴染み深いその単語に、知らず惹かれてしまう


「よくよく考えてみれば、自閉症は先天性なものが一般的だと考えられてるの。そして事故の前の湊クンは比較的活発な少年だと調書にはあった。そもそも自閉症は読んで字のごとく自分を閉ざすのよ。鬱病やひきこもりなんかはまさしくその一種。であれば、後天性の自閉症はどういったモノに部類されることが多いのか」


「それが統合失調症ということですか?」


「正確には統合失調症の陽性症状ね。さらにここだけの話、湊クンは私と先生の前で自分の症状を明かしてくれたの。それで確定されたってわけ。でも湊クンからはこの症状を家族には黙っていてほしいと頼まれたの。どうしてだと思うかな?」


無駄な心配を掛けたくないから、普通ならそう思う


だけど、私には・・・


「それを知る人は最小限に抑えたいから、かもしれませんね」


知られて余計な人には話さない。知る必要はない


きっと彼ならそう考えるんじゃないかと思う


「・・・なるほどねぇ。そしてまあ、医者としてはそんなことできるわけがなかったけど、まあ自閉症と疑っていた人間が突然口を開き頼み事をしてきたのだから、よっぽどのことなんじゃないかと思っちゃってね。つい承諾しちゃった」


えー・・・病院側、というより医師としてはそんな判断でいいのだろうか


「勿論条件は出したわ。演技でもいいから家族の前では普通にしなさいって。この時点で感情が欠落しているわけじゃないってことが分かったのと、何故か歳不相応の思考をしてたことから素直に従ってくれるだろうと判断したわ。私も、先生もね」


「・・・・あの、一ついいですか?」


「ん?何か質問?いいよ~答えれるだけ答えるよ~」


最大の疑問が一つある


ここまで話してくれて、そこが一番気になったのだ


湊の過去、湊の病院生活とその診断


「どうして私にそれを教えるんですか?」


何故それを私に話すのか。事細かに、丁寧に


こんなこと、湊に知られたらタダじゃ済まないだろうに


「刹莉ちゃんは知っておかないといけないと思ってね。―――・・・はいこれ、持っていきなさい」


手に持つファイルを閉じ、私に差し出してくる


私は徐にそれを手にしてしまう


表紙には「診察履歴:12月~3月」とマジックで書かれている


その行動に自分で疑問に思ったが、今はおいておこう


「私が持っていても仕方ないからね、かといって赤の他人に渡すものでもないけど、まぁ刹莉ちゃんなら大丈夫でしょう」


「・・・意味が、解りません。私に何をさせたいのですか?」


意図が分からない以上奇妙だ


明確な目的を教えてほしい


「私の願いはただ彼を支えてほしい、それだけだよ。勿論刹莉ちゃんの負担にならない程度でいいから」


いち看護婦がここまで一人の患者に固執するだろうか


しかもその看護婦も既に辞職し、今はただの一人の母親に過ぎないのに、だ


何かある。いや、彼の場合色々ありすぎて既に把握しきれないほどだ


だからこそ、正直な話少しだけ気になってしまった


このファイルを全て信じるわけではないが、それでも彼がどうやって生きてきたのか、その原点が記されているのだから


大層なことは書かれていないかもしれない、だけど彼がどこで道を間違えたぐらいは分かるはずだ


後は、私がそれを見極め・・・


見極めて・・・どうする気だ?


でも、もしそれを知ってしまったら忘れることはできないだろう


だったら、やることは一つなんじゃなかろうか




「・・・十分気を付けてね。湊クンにも自分自身にも。―――回りの人間にもね」


「――――はい」

2週間に一回、今はそれが限界かもしれませんが宜しくお願い致します

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